スクープ!《学校に棲みつく動物2匹と、姿を消した生徒の行方》

 何かきっかけが欲しいと思っていた時に『陰キャくんがミヤマの新聞記事を破った』と田沼から言われた。田沼の後ろにいる縁をみれば散り散りになった紙を掻き集めてくれていたようで丁寧に両手の中に収まっている。

 運悪く田沼に決めつけられ犯人にされてしまったのだろう。

 不服そうな顔しながらも田沼に催促され俺に謝る姿はあまり見たくないものだった。満足しているのは田沼だけだ。

 縁は違う、と否定しても良かったが田沼がまた面倒なことになりそうだったのでそのまま受け止めた。

 2人きりの時に尋ねてみれば「僕は破っていない」と言う。

 ……初めて、しっかり目が合った。「やってない」と俺に必死に訴えかけている。大丈夫だよ、縁がするわけないとわかっているから。

 しかし田沼を野放しにしてしまったことで縁が犯人だとクラス中には広まってしまっただろう。

 少し狡いだろうけど、ごめん。

 他の人に手出しはさせないからさ。

 夏休みまでの間、俺の隣にいて欲しい。

 縁が窮地に立たされているのに。この状況を有利に持っていこうと機転を効かせる俺は姑息な人間かもしれない。

 形だけの『パシリ要員』になった縁は俺の顔色を窺いながら隣にいるようになった。しかしパンを買いに行かせるとかはさせない。ただ隣にいてもらうだけ。

 そのためにいつも連んでいる連中と関わることもやめた。休憩中も、弁当を食べる時間も、トイレも同じ。

 おどおどしていた縁は、俺が何も要求することはないと気付くと段々と体の力が抜け自然体でいるようになった。

 移動教室のため廊下を歩いている時、窓際でシャッターを俺の前で切るようになった。

 俺が敵意がない奴だとわかってくれたら良いんだけど。

「縁、肝試し来てくれる?」

 一学期の最終日。
 校門前で別れる時に縁に最後に尋ねる。

 やはりそれなりにノリがいい生徒たちの中に交わるのは嫌なようで首を縦に振ることはない。渋い顔をする縁に俺は「お願い!」と手を合わせて頭を下げる。

「ど、どうして僕を誘うの……?」
「縁と仲良くなりたいんだ。……本当だよ」

 真意を確かめるようにこちらをじっと見つめる縁の丸い瞳は、体育館裏の狸を連想させた。

 人と関わりを持たない縁が、俺を信じようとしてくれているのなら。
 俺も当日、縁が来てくれるのを信じて待つのみだ。

 俺の勢いに気圧されてか「わかったよ」と頷く縁に俺は天に舞い上がるようで。両手でブンブン握手して「絶対だぞ!」と別れた。





 *





 当日、グラウンドに集まる前に2匹が気になり体育館裏に向かう。

「……あれ」

 しかしいつもいるはずの場所に2匹は眠っていなかった。スマホで撮影しても姿が見えないことから、本当にこの場にはいないのだろう。

 ……というよりは、靴の足跡があることから荒らされた?

 誰に? 縁は絶対違う。

「お前、またこんなところにいるのかよ」

 声をかけられて振り向く。背後には田沼がいた。

「なに?」
「陽キャグループのミヤマがサッカー部抜けて新聞部に入ったと思ったら、()()()()()と仲良くしてることが謎で」
「……何が言いたい?」
「ミヤマが最近来る場所探ってたら、見つけたんだよ。狐と狸を」
「……」
「だけど触ろうとしたら逃げられちゃってさあ。逃げ遅れた狸の尻尾掴んだから、狐に噛まれたんだよ。痛え〜」

 田沼の手には確かに噛み跡があった。

「……どうして2匹の居場所を荒らした」
「ミヤマ。いつまで陰キャと連むつもり? お前には似合わねえって。また俺たちと遊ぼうぜ」

 俺が縁と親しくすることが気に食わず、距離が縮まるきっかけになった動物2匹の居場所を荒らしたということか。

「俺は動物を傷つける人とは仲良くなれないな」
「……フン。つーかそもそも陰キャはこんな場所に来ると思う? 絶対アイツも嘘をついてるって」
「……うるさいな」
「あ、もう集合時間だからグラウンドに向かわないと。……あ、狐は逃しちゃったんだけど、鈍臭い狸は捕まえることが出来てさ……あそこにいるんだよね」

 田沼が指差すのはいつも2匹が眠っている場所にある木。そこには尻尾が紐に括り付けられて、宙吊りの状態で放置されている狸がいた。

「……! 何してるんだよ!」
「狸って人を化かす悪い奴なんだろ? 成敗だよ」

 田沼はそのままグラウンドへ行ってしまう。
 縁に遅れる、と一言伝えても良かったがそもそも俺たちは連絡を交換してないと今更ながら気付く。

 木に括り付けられた紐を緩めて狸を地面に下ろし、キツく縛られている尻尾も解いていく。

 ぐったりと動かない狸の体を撫で続けていれば元の場所に戻ってきた狐が心配そうに鼻を寄せる。

「……俺のせい、か」

 縁に他の人には知られない方が良いと忠告されていた。縁は気になっていても、敢えてここには来なかったのかもしれない。俺は気になる度にここに来て……田沼に目をつけられてしまった。

「ごめんな……」

 しかし狸はパチッと目を覚ますとのそのそと動き出す。気絶でもしていたのか……狸寝入りでもしていたのか。周りを見渡して、俺がいることに今更ながら気付いて驚いたように数歩下がる。

「よかった、のか……? 俺も急がないと!」

 じゃあな! と2匹に手を振りグラウンドに向かう。

 狐と狸はじっと俺のことを見つめていた。