2人でぼんやり月を眺めていれば狐が僕の制服のズボンを摘んで引っ張った。長居してしまったらしい。思わず「ごめん」と謝って隣を見ると慧護も足を後ろから狸が頭で押して歩かせようとしていた。
催促にも動物によって味が出るよなあ……と思いながら。再び狐たちの後を追うと。
見慣れた図書室の前で狐は座る。狸も遅れて座る。
「鍵はない……けど、開いてる」
「入れってことなのかな」
扉を開けて中に入る。当然中は真っ暗だ。狐と狸は壁を通り抜けて室内を歩いていく。怪異に見つかりたくはないので念のため扉を閉めてから2匹に着いていく。
図書室の奥へ進めば進むほど、本棚が増えることもあって月の光は届かなくなり暗闇になっていく。怪異がいる怖さはないが、だんだんと視界が悪くなる感覚に慧護にピタッとくっついてしまえば今は揶揄われることはなく「離れんなよ」とただ言われる。
「慧護くんは、平気なの? 暗闇とか」
「異空間に閉じ込められた初めにも言ったかもしれないけど、俺よりもビビってる人がいると案外平気なんだよな」
「……それって僕のこと?」
「さあ?」
笑われるけど、嫌な笑みじゃない。慧護は楽しんでくれている。その笑い声が心地良くて、僕も少し気が抜けて口元が緩んだ。
どんどん暗くなる室内。
不思議なのは、暗くなればなるほど動物2匹の体から青白い光が放たれて視界が見えるようになることだった。
「……さっきまで写真で見えてた姿だ」
「じゃあ、この姿を撮ってみると?」
慧護に提案され、光を放つ2匹を撮ってみる。しかし真っ暗だったのでフラッシュを焚いて2枚目を撮るも、確認した写真は真っ暗なままだった。
「見えないものが見えたり、見えたものが見えなくなったり……」
「あべこべだと思っていたけど、これはまた心霊系とは別の力を感じてるようで……」
「俺たち、もしかしてスピっちゃってる系?」
狐と狸は幽霊というよりは守護神のようなものだろう。それを見る──視ることが出来る僕たちにはそれなりに特別な力があるのかもしれないけど。
「……そのスピ系って言葉、随分残念に聞こえるから禁止」
「ええ? じゃあなんて言うの?」
「う……うーん」
スピ系は嫌だけど、僕も良い案があるわけではない。こういう時の言葉って何と言うのが正しいのだろう。
「光ってるから……光の……何か……みたいな」
「そこを詳しく」
うんうん唸ってしまえば狐がキャンと一鳴きした。僕たちは案外脱線しやすいのかもしれない。狸はしょんぼり座っていて、狐はこちらを睨んでいる。
「あ、着いていきます」
「すいません」
狐が座っていたのは図書室の1番奥にある本棚の前だった。僕たちを一瞥すると、狐は……本棚の中に入っていった。
「え」
「……ど、どうやって着いていけと……」
流石に僕たちは通り抜けられる体ではない。壁に手を当てても壁をすり抜けることはない。狐の後を追えないことに戸惑っていると、狸はそのままつぶらな瞳で僕たちを見上げている。
「……僕たちが通れるまで見守ってくれてるのかな」
「……狸くん。なんかヒントくれない?」
慧護が屈み込んで狸に尋ねる。
狸は狐が通り抜けた棚を見つめ……鼻をコツン、と当てる。
しかし意味が分からず首を傾げてしまえば、狸はもうだめです……というように顔を下げてしまった。
「……このままじゃ狸くんが悲しんだままだ」
「待って! 答え見つけ出すから! 少し待ってて!」
2人でどうにかして本棚を抜けられないかと考えている間、狸はずっと待ってくれていた。
催促にも動物によって味が出るよなあ……と思いながら。再び狐たちの後を追うと。
見慣れた図書室の前で狐は座る。狸も遅れて座る。
「鍵はない……けど、開いてる」
「入れってことなのかな」
扉を開けて中に入る。当然中は真っ暗だ。狐と狸は壁を通り抜けて室内を歩いていく。怪異に見つかりたくはないので念のため扉を閉めてから2匹に着いていく。
図書室の奥へ進めば進むほど、本棚が増えることもあって月の光は届かなくなり暗闇になっていく。怪異がいる怖さはないが、だんだんと視界が悪くなる感覚に慧護にピタッとくっついてしまえば今は揶揄われることはなく「離れんなよ」とただ言われる。
「慧護くんは、平気なの? 暗闇とか」
「異空間に閉じ込められた初めにも言ったかもしれないけど、俺よりもビビってる人がいると案外平気なんだよな」
「……それって僕のこと?」
「さあ?」
笑われるけど、嫌な笑みじゃない。慧護は楽しんでくれている。その笑い声が心地良くて、僕も少し気が抜けて口元が緩んだ。
どんどん暗くなる室内。
不思議なのは、暗くなればなるほど動物2匹の体から青白い光が放たれて視界が見えるようになることだった。
「……さっきまで写真で見えてた姿だ」
「じゃあ、この姿を撮ってみると?」
慧護に提案され、光を放つ2匹を撮ってみる。しかし真っ暗だったのでフラッシュを焚いて2枚目を撮るも、確認した写真は真っ暗なままだった。
「見えないものが見えたり、見えたものが見えなくなったり……」
「あべこべだと思っていたけど、これはまた心霊系とは別の力を感じてるようで……」
「俺たち、もしかしてスピっちゃってる系?」
狐と狸は幽霊というよりは守護神のようなものだろう。それを見る──視ることが出来る僕たちにはそれなりに特別な力があるのかもしれないけど。
「……そのスピ系って言葉、随分残念に聞こえるから禁止」
「ええ? じゃあなんて言うの?」
「う……うーん」
スピ系は嫌だけど、僕も良い案があるわけではない。こういう時の言葉って何と言うのが正しいのだろう。
「光ってるから……光の……何か……みたいな」
「そこを詳しく」
うんうん唸ってしまえば狐がキャンと一鳴きした。僕たちは案外脱線しやすいのかもしれない。狸はしょんぼり座っていて、狐はこちらを睨んでいる。
「あ、着いていきます」
「すいません」
狐が座っていたのは図書室の1番奥にある本棚の前だった。僕たちを一瞥すると、狐は……本棚の中に入っていった。
「え」
「……ど、どうやって着いていけと……」
流石に僕たちは通り抜けられる体ではない。壁に手を当てても壁をすり抜けることはない。狐の後を追えないことに戸惑っていると、狸はそのままつぶらな瞳で僕たちを見上げている。
「……僕たちが通れるまで見守ってくれてるのかな」
「……狸くん。なんかヒントくれない?」
慧護が屈み込んで狸に尋ねる。
狸は狐が通り抜けた棚を見つめ……鼻をコツン、と当てる。
しかし意味が分からず首を傾げてしまえば、狸はもうだめです……というように顔を下げてしまった。
「……このままじゃ狸くんが悲しんだままだ」
「待って! 答え見つけ出すから! 少し待ってて!」
2人でどうにかして本棚を抜けられないかと考えている間、狸はずっと待ってくれていた。
