スクープ!《学校に棲みつく動物2匹と、姿を消した生徒の行方》

 下手に歩き回るよりは、教室に隠れてじっとしている方が無難。ナニカも教室の中までは入って来ない。

 扉の近くで足音がしないか確認してる慧護と、カメラを常に構えている僕。

「……なんだか少し、張り込みしてる記者みたい」

 静かな空間で、ぽつりと呟く。

「確かに、記者って辛抱強さが大事だったりするよな」

 慧護も声のトーンを落として言葉を返して来る。

 自身の心臓の音がこんなに伝わるのは初めて。だけど、これは恐怖心とかではなく。生きている、という証拠だった。

 と、遠くでバキッ! と何かが折れる音と鼓膜が破れそうな程の高い悲鳴が聞こえた。それから、ドタドタと走って来る音。

 走る速さからナニカではない。逃げている生徒なはずだ。
 慧護はタイミングを図って扉を開け真横を通り過ぎる人物を教室に引き込む。

「うわあ!」
「やっぱり田沼だ。よかった、合流出来た」
「……あれ。ミヤマと……陰キャくんじゃん」

 逃げていた最中だったからか床に倒れ込んで荒い呼吸をしている。僕を見て残念そうにはしていたが……それでもナニカ以外と遭遇したことで「助かった……」と呟いていた。

「休憩しながら教えて欲しい。田沼、一緒にいた人たちは?」
「……食われたよ」
「それは、あのよくわからないナニカ……だよな」
「ああ。さっきの悲鳴聞こえたか? あれは……さっきまで一緒に逃げていた青木だったよ」

 クラスメイトが。(むご)い死に方をしている。僕が身震いしてる間、慧護は淡々と田沼に聞いていく。

「……あのナニカの移動速度は?」
「基本ゆっくり。でも……一度見つかってしまうと逃げるのでやっとだ。隣にいる人を助ける余裕なんてない。アイツに見つかったら最後だと思え」
「……ゆっくり動いているように見えても、見つかってしまえば一目散に走って来るのか……恐ろしいな」
「ミヤマ、何か策はあるのか?」

 慧護が首を振れば田沼も「だよなあ」と天を仰ぐ。

 それでも、人が増えたのはいいことだと思いたい。

 僕は今まで撮ってきた写真を田沼にも見せた。

 夜の校舎が、血みどろになっていること。

 何もない廊下が、写真を撮ると腸の中みたいになっているもの。

 得体の知れないナニカは、写真を撮ると肝試しに参加した生徒たちがぎゅうぎゅう詰めで気を失っていること。

 僕と慧護にそう見えたものは、田沼にはどう見えるか。

 数枚見た後僕を一瞥し「何が言いたいのかわかんねえよ」と言う。

「写真みて、何か変だと思わない? 例えば、この廊下の写真とか──」
「こんな状況でも写真撮ってる余裕はあるんだな。それにこの()()()()()()()()まで撮るなんて。悪趣味にも程があるだろ」

 僕の予想していた答えではなかった。
 だからこそわかることがある。

 写真であべこべになっているものは、僕と慧護しか見破れない。

 生徒を飲み込んで腕や足、目が剥き出しになっている恐ろしい見た目のナニカが、写真を通すと姿そのままの生徒たちが小さな場所に閉じ込められているだけで。

 ただ命を落としてしまうのではなく囚われているようで。

 何とかして助け出せないかと、モブキャラの僕が思ってしまう程だった。