やっぱり入るのはやめようか。
教師に伝えて家に帰ろうか。
もだもだしているうちに「えーん!」とこちらに手を振りながら走ってきてしまった慧護。
「マジごめん! 体育館裏に行ってたら遅れちゃった!」
「……体育館裏? どうして?」
膝に手を当ててゼェハァしてる慧護に疑問をぶつければ「狐と狸をもう一度確認したくて」と返ってくる。
「今日は、いなかったんだ」
「……もう夜遅いからそれぞれの巣に帰ったのかも」
「うん。そうかもね」
「そんなに動物が気になったの?」
「だってこの事実を知ってるのは俺と縁だけだし」
肉眼では狐と狸に見えたものは、フィルター越しだと姿が映らなかった。
霊的なものだろう。
「生徒はもう俺らだけ? じゃあ早く行こう」
「ま、待って! これ、見て欲しくて」
先ほど撮った真っ暗な校舎を慧護に見せる。覗き込んだ慧護は「うわ」と小さな声を出すと肉眼で校舎を見上げる。
「……カメラの故障とかじゃないもんな」
「……やっぱり入るのやめない? 僕、怖いんだけど……」
「俺たちが向かうのはいつも昼間に通っている校舎だぜ?」
「そ、それはそうなんだけど」
慧護はずんずん教師の元まで歩いていってしまう。慌てて追いかけていけば「せんせー。神谷が、奇妙な写真撮ってて」と伝えている。
慧護にアイコンタクトされ、教師に写真を見せれば「奇妙? 普通の校舎じゃないか」と言われてしまう。
(僕たちにしか見えない? だったら、動物たちも他の人には見えないのかな)
見えないものが見えたり。
見えるものが他の人には見えなかったり。
(どうして、僕と慧護くんが同じものを共有出来るんだろう……)
不思議に思っていれば「ほら、提灯。楽しんで来いよ」と僕たちは背中を押されて校舎に入ってしまう。
「だ、大丈夫かな。僕たち……というか、何も知らないみんなとか」
「うーん。霊的なものがあるにしても、今までも学校で普通に暮らしていたから大丈夫じゃね?」
先を歩く慧護の背中を、もう一度パシャリと撮り確認する。
「……ゔ」
慧護は普通に映っている。
しかしその廊下は、赤黒く肉壁のような形になっていた。例えるなら腸の中と言うべきだろうか。
口を覆って蹲ってしまえば「縁?」と慧護が戻って来てくれる。「どうしたんだよ」と尋ねる彼に黙ってカメラを差し出す。
「……これ、」
「やっぱり……なにか、変じゃない? この校舎」
慧護も薄気味悪く思ったのか「戻ろう」と言ってくれ来た道を戻る。昇降口まで来た時、扉が閉まっていることに気付いた。肝試し開催中の間は基本開いたままのはずなのに。
ドアノブを掴む慧護は手を押した。しかし開かずに次は引く。ビクともしないようだった。両手で開こうとしている扉が動く気配は全くない。
目の前で待機しているはずの教師の姿は、黒いモヤでグラウンドが覆われてしまい確認出来ない。
……この場所が、異空間のように感じる。
「僕たち、閉じ込められちゃったのかな」
「……誰に?」
「だれ、とかじゃなくて。……怪異、みたいなものに」
慧護は窓まで行き開けようとする。しかし全く動かない。外には出られないようだった。
「まいったな」
「ど、どうしよう。慧護くん」
彼の元まで行き制服に縋り付く。
一刻も元の場所に帰りたい。
半泣きになってしまえば、慧護は少し驚いたように僕を見たあと「大丈夫だって」と僕の手を掴んで制服から離す。
「俺から離れんなよ?」
じっと目を見て言われ、僕はコクリと頷いて彼の隣を歩いていく。
少し前まで早く慧護から離れて元の生活に戻りたいと思っていたのに。
今は慧護のそばにいないと不安で仕方なくて。
状況で気持ちは一気に変わるのだなと、頭の片隅で感じる僕がいた。
教師に伝えて家に帰ろうか。
もだもだしているうちに「えーん!」とこちらに手を振りながら走ってきてしまった慧護。
「マジごめん! 体育館裏に行ってたら遅れちゃった!」
「……体育館裏? どうして?」
膝に手を当ててゼェハァしてる慧護に疑問をぶつければ「狐と狸をもう一度確認したくて」と返ってくる。
「今日は、いなかったんだ」
「……もう夜遅いからそれぞれの巣に帰ったのかも」
「うん。そうかもね」
「そんなに動物が気になったの?」
「だってこの事実を知ってるのは俺と縁だけだし」
肉眼では狐と狸に見えたものは、フィルター越しだと姿が映らなかった。
霊的なものだろう。
「生徒はもう俺らだけ? じゃあ早く行こう」
「ま、待って! これ、見て欲しくて」
先ほど撮った真っ暗な校舎を慧護に見せる。覗き込んだ慧護は「うわ」と小さな声を出すと肉眼で校舎を見上げる。
「……カメラの故障とかじゃないもんな」
「……やっぱり入るのやめない? 僕、怖いんだけど……」
「俺たちが向かうのはいつも昼間に通っている校舎だぜ?」
「そ、それはそうなんだけど」
慧護はずんずん教師の元まで歩いていってしまう。慌てて追いかけていけば「せんせー。神谷が、奇妙な写真撮ってて」と伝えている。
慧護にアイコンタクトされ、教師に写真を見せれば「奇妙? 普通の校舎じゃないか」と言われてしまう。
(僕たちにしか見えない? だったら、動物たちも他の人には見えないのかな)
見えないものが見えたり。
見えるものが他の人には見えなかったり。
(どうして、僕と慧護くんが同じものを共有出来るんだろう……)
不思議に思っていれば「ほら、提灯。楽しんで来いよ」と僕たちは背中を押されて校舎に入ってしまう。
「だ、大丈夫かな。僕たち……というか、何も知らないみんなとか」
「うーん。霊的なものがあるにしても、今までも学校で普通に暮らしていたから大丈夫じゃね?」
先を歩く慧護の背中を、もう一度パシャリと撮り確認する。
「……ゔ」
慧護は普通に映っている。
しかしその廊下は、赤黒く肉壁のような形になっていた。例えるなら腸の中と言うべきだろうか。
口を覆って蹲ってしまえば「縁?」と慧護が戻って来てくれる。「どうしたんだよ」と尋ねる彼に黙ってカメラを差し出す。
「……これ、」
「やっぱり……なにか、変じゃない? この校舎」
慧護も薄気味悪く思ったのか「戻ろう」と言ってくれ来た道を戻る。昇降口まで来た時、扉が閉まっていることに気付いた。肝試し開催中の間は基本開いたままのはずなのに。
ドアノブを掴む慧護は手を押した。しかし開かずに次は引く。ビクともしないようだった。両手で開こうとしている扉が動く気配は全くない。
目の前で待機しているはずの教師の姿は、黒いモヤでグラウンドが覆われてしまい確認出来ない。
……この場所が、異空間のように感じる。
「僕たち、閉じ込められちゃったのかな」
「……誰に?」
「だれ、とかじゃなくて。……怪異、みたいなものに」
慧護は窓まで行き開けようとする。しかし全く動かない。外には出られないようだった。
「まいったな」
「ど、どうしよう。慧護くん」
彼の元まで行き制服に縋り付く。
一刻も元の場所に帰りたい。
半泣きになってしまえば、慧護は少し驚いたように僕を見たあと「大丈夫だって」と僕の手を掴んで制服から離す。
「俺から離れんなよ?」
じっと目を見て言われ、僕はコクリと頷いて彼の隣を歩いていく。
少し前まで早く慧護から離れて元の生活に戻りたいと思っていたのに。
今は慧護のそばにいないと不安で仕方なくて。
状況で気持ちは一気に変わるのだなと、頭の片隅で感じる僕がいた。
