対戦型のイベント配信。相手と同時にLIVE配信を行い、アイテムをポイント化して合計値で競うというもの。推しを勝たせたいため、必然的にいつもより多くのアイテムが飛び交う。接戦になればなるほどアイテムの量も金額増えていく。
対戦型のイベント配信をするという告知を受けた瞬間、気が付くと眉根を寄せていた。些細な違和感。それでも、その日はすぐに訪れた。対戦相手は一応歌枠ではあるものの、トーク主体でアイドル顔負けの容姿をした人気ライバーだった。ほとんどタロウ以外の動画やLIVEを見なくても知っているレベルの配信サイトの有名人だ。フォロワーは10万人を超えている。
対決の内容は、5分間の対戦を3本先取した方の勝ち。配信の内容は無制限。ひたすらトークで盛り上げるでも良いし、歌でアピールしても良い。何でもありだ。
最初に基本的な勝負内容やシステムの説明があり、ついに1回戦が開始された。お互いにトークで勝負するようだ。ギターは持っているものの、まったく弾く様子はない。歌が上手いかどうかの勝負ではないため、そういう対戦になることもある。
1回戦は圧倒的なフォロワー数の差から、開始早々2:8くらいの割り合いで圧し込まれた。
「みんな、お願い!!負けたくないからアイテム投げて欲しい!!」
タロウの懇願に、参加者たちが一斉にアイテムを投げる。自分もできる限り精一杯の高額アイテムを投げた。一気に盛り返し、4:6まで回復する。
「ありがとう!!みんな、大好きだよっ」
タロウが満面の笑みを浮かべ、カメラに向かってキスを投げる。その瞬間、チャットにハートマークの嵐が吹き荒れた。そしてまた、アイテムが飛び交う。
―――――これでいいのか?
浮き上が疑問を沈めるように、またアイテムを購入し無心で投げる。
そもそも、フォロワー数が10分の1なのだ。もちろん、フォロワー全員が参加している訳ではないが、それはお互い様だ。いくら勢いがあったとしても、絶対的なフォロワーの数が違う。当然、配信暦も違う。培ってきた地盤が違うのだから、簡単に勝てるはずがない。
個人的には、この対戦イベントは好きではない。フォロワー参加型という建前ではあるが、実際には参加者を無視し、ライバーの自己満足と収入アップのためだけに開催されているからだ。ライバーにしかメリットが無い。
分かりきっていたものの、最終的に1回戦は2:8で完敗することになった。
各陣営のミーティングタイム。タロウのライブチャットでは、新参者が鼻息強く仕切り、もっとアイテムを投げろと命令する。確かに、彼は誰よりも多くのアイテムを投げていた。言いたいことは尤もであるが、タロウに対するアピールのために息巻いていることが透けて見えた。当然、そんな態度が受け入れられるはずもなく、チャットは止まったまま動かない。
最悪の雰囲気の中、2回戦が始まった。普通に開始早々から2:8まで差が開き、そこからも反撃することもできずジリジリと削られていく。ふと、2分割されている画面の対戦相手側に視線を移す。
―――――歌っていた。
相手のライバーは歌枠でありながら、配信内容の大部分がトークだと知っている。そして、同時に歌が上手いことも知っていた。相手側の状況は分からないが、画面上から明らかに盛り上がっていることが分かった。本当は、負けてもいいから、タロウにはコレをやって欲しかった。それが、タロウという駆け出しのシンガーソングライターだと思う。
虚無感とともに画面を眺めていると、突然、タロウが巻き返し始めた。
一気ポイントを稼ぎ、6:4と逆転する。
でも、それに意味なんか無い。
それは違うだろ。
歌えよ。
歌姫になってくれよ。
その歌唱力があれば負けるはずがないんだ。
だから、歌え!!
今からでもいいから歌って欲しいんだよ。
画面上には、いつものジャージを脱ぎ捨て、白いタンクトップ姿になったタロウが映っている。カメラに向かって前屈みになりながら、アイテムをねだる。その度に、大量のアイテムが乱舞していた。
思わず天を仰いで両手で顔を覆った。
対戦イベントは1対2で、当然の帰結としてタロウが負けた。普通であれば、金星を上げたことに喜ぶべきだろう。だけど、とても笑みを浮かべるような状況になかった。頭の中を同じ言葉がグルグルと回っている。
気持ちは分かる。
状況も理解できる。
人間なんだから欲もある。
だけど、目指している場所はソコではないよね。
1億再生を達成するって、ドームを満員にさせるって言ったよね。
そんなことをされると、一気に冷めてしまう。
いや、たぶん、フォロワーの中心になっている人に対しての嫉妬もあるだろう。「後から出てきて、今さら仕切り始めるなよ!」という不満もあると思う。数十人のときからずっと応援している自分が切り捨てられたことに対して、裏切り行為だと逆恨みをしている自覚もある。
人気者になる前から応援していたのに。
いろんな相談にも乗ってきたのに。
これからもずっと夢を叶えるまで支えたいと思っていたのに。
そこに自分の居場所は無くて。
応援していた人の姿は無くて。
1人の人間がそこにいた。
自分勝手な理想を押し付けていた。
ガチで恋していた人は幻想だった。
気付くはずがない。
そう知りつつも、フォローを解除した。
対戦型のイベント配信をするという告知を受けた瞬間、気が付くと眉根を寄せていた。些細な違和感。それでも、その日はすぐに訪れた。対戦相手は一応歌枠ではあるものの、トーク主体でアイドル顔負けの容姿をした人気ライバーだった。ほとんどタロウ以外の動画やLIVEを見なくても知っているレベルの配信サイトの有名人だ。フォロワーは10万人を超えている。
対決の内容は、5分間の対戦を3本先取した方の勝ち。配信の内容は無制限。ひたすらトークで盛り上げるでも良いし、歌でアピールしても良い。何でもありだ。
最初に基本的な勝負内容やシステムの説明があり、ついに1回戦が開始された。お互いにトークで勝負するようだ。ギターは持っているものの、まったく弾く様子はない。歌が上手いかどうかの勝負ではないため、そういう対戦になることもある。
1回戦は圧倒的なフォロワー数の差から、開始早々2:8くらいの割り合いで圧し込まれた。
「みんな、お願い!!負けたくないからアイテム投げて欲しい!!」
タロウの懇願に、参加者たちが一斉にアイテムを投げる。自分もできる限り精一杯の高額アイテムを投げた。一気に盛り返し、4:6まで回復する。
「ありがとう!!みんな、大好きだよっ」
タロウが満面の笑みを浮かべ、カメラに向かってキスを投げる。その瞬間、チャットにハートマークの嵐が吹き荒れた。そしてまた、アイテムが飛び交う。
―――――これでいいのか?
浮き上が疑問を沈めるように、またアイテムを購入し無心で投げる。
そもそも、フォロワー数が10分の1なのだ。もちろん、フォロワー全員が参加している訳ではないが、それはお互い様だ。いくら勢いがあったとしても、絶対的なフォロワーの数が違う。当然、配信暦も違う。培ってきた地盤が違うのだから、簡単に勝てるはずがない。
個人的には、この対戦イベントは好きではない。フォロワー参加型という建前ではあるが、実際には参加者を無視し、ライバーの自己満足と収入アップのためだけに開催されているからだ。ライバーにしかメリットが無い。
分かりきっていたものの、最終的に1回戦は2:8で完敗することになった。
各陣営のミーティングタイム。タロウのライブチャットでは、新参者が鼻息強く仕切り、もっとアイテムを投げろと命令する。確かに、彼は誰よりも多くのアイテムを投げていた。言いたいことは尤もであるが、タロウに対するアピールのために息巻いていることが透けて見えた。当然、そんな態度が受け入れられるはずもなく、チャットは止まったまま動かない。
最悪の雰囲気の中、2回戦が始まった。普通に開始早々から2:8まで差が開き、そこからも反撃することもできずジリジリと削られていく。ふと、2分割されている画面の対戦相手側に視線を移す。
―――――歌っていた。
相手のライバーは歌枠でありながら、配信内容の大部分がトークだと知っている。そして、同時に歌が上手いことも知っていた。相手側の状況は分からないが、画面上から明らかに盛り上がっていることが分かった。本当は、負けてもいいから、タロウにはコレをやって欲しかった。それが、タロウという駆け出しのシンガーソングライターだと思う。
虚無感とともに画面を眺めていると、突然、タロウが巻き返し始めた。
一気ポイントを稼ぎ、6:4と逆転する。
でも、それに意味なんか無い。
それは違うだろ。
歌えよ。
歌姫になってくれよ。
その歌唱力があれば負けるはずがないんだ。
だから、歌え!!
今からでもいいから歌って欲しいんだよ。
画面上には、いつものジャージを脱ぎ捨て、白いタンクトップ姿になったタロウが映っている。カメラに向かって前屈みになりながら、アイテムをねだる。その度に、大量のアイテムが乱舞していた。
思わず天を仰いで両手で顔を覆った。
対戦イベントは1対2で、当然の帰結としてタロウが負けた。普通であれば、金星を上げたことに喜ぶべきだろう。だけど、とても笑みを浮かべるような状況になかった。頭の中を同じ言葉がグルグルと回っている。
気持ちは分かる。
状況も理解できる。
人間なんだから欲もある。
だけど、目指している場所はソコではないよね。
1億再生を達成するって、ドームを満員にさせるって言ったよね。
そんなことをされると、一気に冷めてしまう。
いや、たぶん、フォロワーの中心になっている人に対しての嫉妬もあるだろう。「後から出てきて、今さら仕切り始めるなよ!」という不満もあると思う。数十人のときからずっと応援している自分が切り捨てられたことに対して、裏切り行為だと逆恨みをしている自覚もある。
人気者になる前から応援していたのに。
いろんな相談にも乗ってきたのに。
これからもずっと夢を叶えるまで支えたいと思っていたのに。
そこに自分の居場所は無くて。
応援していた人の姿は無くて。
1人の人間がそこにいた。
自分勝手な理想を押し付けていた。
ガチで恋していた人は幻想だった。
気付くはずがない。
そう知りつつも、フォローを解除した。



