ガチ恋勢がもらい泣きするような恋だった。



 フォロワー数が1万5千人を超えたあたりで伸びなくなった。
 動画も3日に1本くらいのペースで上げているけど、再生回数が4桁に届かなくなった。
 LIVE配信もそれなりに人は集っていると思うけど、同時接続の参加者が200人を超えなくなった。
 ライブチャットが一部の人に占拠されるようになって、新規の人が入り難くなった。
 アイテムの金額が伸びなくなった。
 バトルイベントに人が集らなくなった。
 変な内容のダイレクトメールばかりになった。

 ああ、何か疲れた。
 こんな時、以前はどうしていたのだろうか?


 気分転換に配信サイトにUPされている動画を眺める。
 流行の曲に合わせて、お決まりの振り付けで踊っている人もいれば、弾き語りをしている人もいる。異性の視線を意識した動画もある。テレビに出演しているような有名人を除くと、一番再生数が伸びているのはセクシー系だ。これは、意味で仕方が無いと思う。次に多いのは、少し難しい流行りのダンスを踊っている動画。上手い人の動きをトレースしようとして、何度も再生されているのだろう。ゲーム配信。
 そして、ようやく顔出しの少しあざとい雰囲気の弾き語りや歌唱動画になる。たぶん、ここが私のカテゴリーだ。現実的に、上手いだけでは人が集らない。人気がないと何の意味もない。だから、配信サイトで流行っている曲を選んで歌い、アイテムを投げられる度にポーズを取って笑顔を振り撒く。高額アイテムの時には、その人の名前を呼んで少しコメントする。

 最後に、底辺で埋もれているジャンルが、首から下だけの弾き語り動画。1年余りずっと配信をしていれば別だが、基本的にフォロワーは多くて1000人強。大抵の場合は2桁から3桁半ば程度。
 いったい、それが何になるというのだろうか。
 それを続けて、いったいどこに辿り着くというのだろうか。
 一生懸命、歌っていれば良いと思っていた時期もあった。そうしていれば、きっと誰かが見付けてくれると信じていた。少しずつフォロワーが増えていき、1年、いや半年後には1000人を超えて、その実績でLIVEハウスやイベントで歌わせてもらい、単独LIVEを―――――なんて、勝手に自分のスケジュールを考えていた。

 確かに、少しはルックスに自信はあった。
 閉塞感と停滞感に息が苦しくて仕方がない時に、何かを変えようと思って、意を決して顔出しでLIVE配信をした。
 その結果に驚いた。
 圧倒的多数の参加者とアイテムの合計金額。フォロワー数も数倍に膨れ上がった。3ヶ月や半年ではない。一夜にして、だ。自分がこれまで積み上げてきたものは何だったのかと、理想だけを追い掛けて現実が見えなくなっていたのではないかと思った。そして、これが正解だったのだと確信した。

 LIVEではリクエストによって曲を決めることが増えた。最近の流行の曲が多いため、空いた時間に練習するようになった。自分の好きな楽曲を歌うことがなくなった。ファンマークを決めて、アイテムごとのポーズも考えた。3回に1度くらいのペースで、少し際どい服を着ることにした。その方が参加者とアイテムの伸びが良いからだ。笑顔を振り撒き、アップテンポで話しをするように気を付けている。
 その努力もあって順調にフォロワーは増えたし、動画の再生数も増えた。それと比例するように、変な内容のダイレクトメールが増えた。だから、相互にフォローしていない人からのダイレクトメールは受け取らない設定にした。


 ―――――この方法で、途中までは順調だったんだ。


 それなりに上手いと思った弾き語り動画で手を止め、どんなコメントがあるのか覗いてみる。
>七氏:思わずコメントしてしまいました。
 すごく良い声ですし、選曲も最高です!!眼福ならぬ、耳福です。ありがとうございます!!また動画UPして下さい。必ず聴きにきます。

 どこか懐かしい雰囲気だった。
 自分にも、こういう時期があった。
 真摯にコメントしてくれる人がいて、嬉しくて返事を書き込んだ。コメント数なんて10件もなかったし、すべてのコメントに返信をしていた。最近はコメントが多過ぎて、例え読んだとしても返事のコメントを書き込んだことはない。仕方ないことだと思う。だって、一部の人だけに返事をする訳にはいかないし、全員に返信していたら寝る時間がなくなってしまうから。

 その動画から離れると、LIVE配信に通りすがりの人として参加する。
 首から下の弾き語り配信。同時参加者の人数は自分を含めて5人前後。当然のように、アイテムなど投げられている形跡はない。それでもライバーの言葉を拾い、必死に鼓舞している人がいた。卑下するライバーの心が折れないように、一生懸命に繋ぎ止めようとしている。自分には劣るけれど、かなり歌唱力が高い。もしかすると、何かのきっかけで大化けする可能性はある。

 自分のように―――――自分のように?

 そういえば、あの頃、一生懸命応援してくれるフォロワーがいた気がする。
 いつも動画にコメントを書いてくれて、LIVE配信にも必ず来てくれた。ああ、思い出した。最初の、まだ不安だった頃、反省会と称してダイレクトメールのやりとりをしていた。今となっては、考えられない。相手は・・・・・誰?


>七氏:声がカッコイイし、やっぱり歌がすごく上手いです!!思わず聞き惚れちゃいましたよ!!








        ~ Fin ~