ガチ恋勢がもらい泣きするような恋だった。

 ―――――何でも良かったのだと思う。

 マンガを読んでも良かったし、チェック済みの映画を観るという選択肢もあった。
 でも、オンラインゲームをするのは面倒だった。
 マンガを読むにしても、何となく気分が乗らなかった。
 映画は2時間近く画面に集中しなければならならいからやめた。
 何も考えず、手間がかからず、飽きたら即座に中断できること。それでいて、気分転換と時間の消費ができること。そんな我がままな欲求を満たしたのは、寝転んだまま、配信サイトのライバーを適当に流し見ることだった。

 配信サイトにアクセスし、半眼で画面を眺める。
 ヒマなときには、たまに配信サイトは利用している。そのため、オススメとして流れてくる動画は、AIの学習成果が発揮されていた。つまり、スクロールしても表示されるのは、誰かが歌っている動画ばかりになる。

 所謂(イワユル)「弾き語り」。
 顔を出して歌っているのは、どこかの事務所に所属している自称シンガーソングライターか、自分の外見に自信がある一部の人だけだ。大半の人は顔を隠して演奏している。その気持ちは分からないでもない。
 インディーズであろうとデビューしているシンガーソングライターは、やはり上手い。アニメの主題歌を歌っている人も稀に見掛けるが、やはり一般人とはレベルがまったく違う。とはいえ、アプリなどで小賢しく編集している動画を見ると、一気に萎える。それは加工技術が優れているだけであって、自分が求めているものとは違う。

 そこには、何もない。
 ただ、夢が叶ったと勘違いした後に残った金銭欲と、ファンを当然の存在として捉える上からの視線。
 そうじゃない。
 そうじゃないんだよ。
 そこは行き止まりだ。
 そこに辿り着いてしまった人に興味なんてない。

 完成形を見付けて手を振りたい訳ではない。
 スタートした瞬間から、ずっと見ていたいんだ。
 一緒に走りたいんだよ。
 だから、駆け出しの歌い手を探す。
 フォロワーが50人未満のライバー。
 一生懸命ギターを鳴らして、歌に心を込める。
 ずっと聴いていれば分かる。
 これから伸びるのか、早々に諦めて消えてしまうのか。

 まだ埋もれたままの宝物。
 磨けば光り輝く原石。
 拙くても心を揺さぶる歌声。
 めったに見付からないけれど、確実に存在する。


 寝落ち寸前のまどろみの中で、その声を聴いた。
 涼やかな声だった。
 独特のテンポでゆったりと歌詞を紡ぐ。
 ギターは拙くても音は外さない。
 天性のリズム感。
 少し低い、まだ若い女性の声が鼓膜を叩く。

 ―――――これは、いいな。

 そう思いながら、夢の中に落ちていった。


 これが、彼女とのファーストコンタクトだった。