約束の土曜日になったものの、朝七時。俺は鏡の前で頭を悩ませていた。
服って、何を着たらいいんだ……。
いつも高瀬とは、学校の制服かバイトの制服で会っていたから意識したことは無かったが、私服ってどんな服が良いんだろう。流石に家の中で着ているようなダボダボの服だと駄目だしあんまり張り切りすぎた格好をしても逆にダサいし、わ、分からない。何が最適解なんだ。塩谷とも休日遊ぶことなんて全然無かったし、どうしたらいいんだ。
棚から僅かな服を取り出して、あれでもないこれでもないと悩み続けた結果、結局無難な無地のTシャツの上に濃紺のダウンジャケットを羽織った。
そして、約束していた遊園地の前へ向かうと、既に高瀬が立っていた。待つのが好きだと言うだけあって、やはり必ず約束の時間前に着いている。寂れた遊園地ではすらりとした長身が一際目立ち、周囲の人々の視線を集中している。
この注目の中に近寄るなんて嫌すぎる。ていうか当の本人はよく素知らぬ顔でスマホ弄れるよな。
行くタイミングを見計らっていると、胸元に入れていた俺のスマホが震えた。スマホを取り出そうとした瞬間、背後から俺の両肩に重みがのしかかる。
「タロ、何隠れてるの」
心臓が大きく跳ねた。その代わりとでも言うように、スマホの振動も止まった。画面には着信先に「高瀬」と名前が表示されている。
「わっ、お、遅れてごめん」
高瀬は首を横に振ると、何故か俺をじーっと見つめた。な、何かあったのか?おそるおそる首を傾げて問いかけた。
「な、何?」
「ん?私服のタロ珍しくて。かわいいね」
「かわっ!?」
高瀬が予想外のセリフを言ってきたせいで思わず大きな声が飛び出してしまう。高瀬は俺を見てニコニコと笑っている。
無難な服を着たはずなのに、可愛いだなんて、幼稚ってこと?揶揄ってるのか。
いちいち動揺して恥ずかしい。俺は足早に遊園地の中へ入った。
入口の大きな門を抜けると、相変わらず変わらない寂れた遊園地が目の前に広がる。こじんまりとしたアトラクションが幾つかあるが、塗装が剥がれていたり、かなり昔に作られた物ばかり。
傍観する俺に比べて、高瀬はまるで子どものように目を輝かせて俺に話しかけてきた。
「何から乗る?コーヒーカップ?」
どうしてこんな嬉しそうなんだ。もしかして、遊園地マニア?不思議に思いながらも俺は素直に提案に乗った。
円を描くように並ぶカラフルなコーヒーカップ。とりあえず手前のものに乗り、高瀬と向かいあわせになったが、これ、どんな絵面なんだ。男子高校生二人が可愛らしいアトラクションに乗るところなんて見たことないし、しかもイケメンと地味男なんてな。
ちらちらと周囲に人がいないか確認していると、高瀬が口を開く。
「奥にいる子ども、犬のカチューシャ着けてる」
「え?ほんとだ」
「タロも着ける?」
「嫌だよ」
あんなファンシーなカチューシャを着けるなんて、地獄絵図だ。「絶対かわいいのに」なんて呟いてるが、コイツいつまで俺を揶揄う気だ。まだコイツの方が作画的に似合いそうだ。
高瀬の犬耳姿を想像していると、突然体がガタンと揺れた。ポップなメロディーに合わせて踊るようにコーヒーカップが動き始める。
ゆったり回り始めたかと思いきや、突然高速で回転し始めた。体が激しく揺れ、慌ててコーヒーカップの縁にしがみつく。
な、何が起きた!?
驚いて目を見開くと高瀬の姿が目に入った。なんと、中央のハンドルをすごい勢いで回しているのだ。
お前かよ!陽キャ特有の遊び方なのか?うぇーいってふざけて高速回転するやつだろうか。俺が嫌いなタイプだ。視界がぐるぐる回りながらも、必死に口を開いた。
「た、高瀬!やめろ!」
「え、タロ楽しくない?」
「目が回って、ちょっともう、お、俺が回す」
そして強引に高瀬の手を離して、俺がハンドルを占領した。こんな強引な真似はしたくないが、身の安全のためである。
俺の見事なハンドルさばきのおかげで無事ゆったりと過ごせて、音楽が止み終わった。ほっとしたのも束の間。高瀬は一つの方向へ指を指して、笑みを浮かべた。
「今度はあれ乗ろう」
「うぇ、ジェットコースター!?」
また心労が激しそうなものだ。空を切るように走るジェットコースターが目に入る。思わず顔を顰めてしまった。子供向けのジェットコースターだが、弱音がぽろりと口から零れる。
「俺、ちょっと自信ない」
「大丈夫。俺が守るよ」
守るって何からだよ。
俺の腕を引きながら待機列へ向かう高瀬に対して、ゲッソリとした顔で着いて行った。
人がほとんど並んでいなかったため、すぐに俺たちの番になった。安全バーを下ろすとドキドキしてきた。生唾を呑むと、高瀬が顔を寄せてきた。
「楽しみだね」
高瀬がそう微笑む。何か言葉を返そうと口を開きかけたが、コースターが動き始め口を閉じた。ガタン、ガタン、と頼りない音を立てながらゆっくりレールを進める。
滑り落ちる時が怖いが、この時間もなんだかドキドキする。前を真っ直ぐ見て集中していると、ふと耳許で囁かれた。
「途中で止まったらどうする?」
「怖いこと言わ、ひょわぁっ!」
突然体が真下へ落下した。喉の奥から思わず短い悲鳴が漏れる。冷たい風に顔を叩きつけられ、髪が後ろへ走る。ジェットコースターはそのまま滑るようにゴールへ走っていき、急に動きが止まった。
ジェットコースターは終わったと言うのに、未だに衝撃が抜けない。
び、びっくりした……。子供用だと思って舐めたらとんでもなかった。驚いて高瀬の前で変な声出てしまったし最悪過ぎる。乱れた髪の毛を抑えながら、おずおずと高瀬の顔を見る。
笑いを堪えようと頬を膨らませて唇の端を上げる姿が目に入った。
「ふ、ふふ、タロかわいいね」
「可愛いって、ば、バカにしてるだろ!」
「してない。すごい顔してたけど、可愛かったよ」
思わず反抗的な態度をとったが、高瀬は全く気にせずむしろ更に煽るようなことを言ってきた。わなわなと体が震えてしまうが、我慢だ。ここでまた言い返したらもっと可愛いやら馬鹿にしてくるに違いない。俺は顔を真っ赤にしながらもそっぽを向いた。
その後も高瀬はノンストップで色んなアトラクションを乗り続けた。久々に多くのアトラクションに乗り楽しい気持ちもあるものの、体が疲労を訴えかけている。
次は何に乗るんだろうと思いながら、高瀬と歩いているとついに救いの一言を落とした。
「そろそろ休もっか。あそこでご飯でも食べよ」
俺は力強く頷いた。大歓迎です。早く休んで美味しいご飯を食べて体を労わってあげたい。無意識に早足になりながらフードコートへ向かった。
食券を買い、空いた席に向かい合わせに座る。高瀬はラーメンを頼み、俺はカレーライスを選んだ。
「何が一番楽しかった?」
「えー、なんだろ。メリーゴーランドかな」
「それも良かったよね」
一番ゆったりできたし、乗っていて気持ち良かった。あと白馬に乗っていた高瀬がリアル王子で見ていて眼福だった。並んでいた人たちまで高瀬に見蕩れていたくらいである。イケメンはやっぱり生きている世界が違う。
「高瀬は?」
「ジェットコースター」
嫌味か。むっと口を歪めてしまうと、食券番号が呼ばれて取りに行った。
机の上に置かれたカレーライスとラーメン。湯気が出ていて食欲がそそられる匂いが漂う。スプーンで掬い、口に入れると馴染みのあるカレーの味が口に広がる。
「カレー美味しい?」
「うん。ラーメンも美味しそう」
醤油スープに、細い縮れ麺。チャーシューとメンマとねぎが置かれた王道なラーメンだ。外が寒かったからか、あっという間に二人とも食べ終わる。そして再びアトラクションに乗ろうと広場を歩いていると、高瀬が足を止めた。何かをじっと見つめていて、俺も視線を移すとコーヒーカップの時にいた子供がいた。カチューシャの犬耳を揺らしながら、水鉄砲を使って遊んでいる。高瀬はその子を指して、俺に話しかけてきた。
「やっぱり、タロも着けない?」
「またその話?絶対嫌」
「似合うから、お願い」
「無理!」
これだけは譲れない、と俺は首を振り続ける。二人で言い合っていると、突然高瀬の顔に水が飛び出してきた。
ぽつり、ぽつり、と水が頬を伝って落ちていく。あんなに余裕ぶっていた高瀬の顔がびっくりした顔つきになって立ち尽くす。
「はっ、あははっ!」
思わず腹を抱えて笑ってしまった。
恐らく水をかけた犯人であろう女の子は隣できょとんと俺達の様子を見つめる。しかし、それすらどうでもいいほど、笑いが止まらない。腹が痛くなってしまうくらいだ。
「はは、バチ当たったんだよ!俺のこと馬鹿にしてたから」
そう言うが、高瀬は目を丸くしたまま何も発さない。あれ、流石に陰キャが調子乗りすぎたかな。
「た、高瀬……?」
「……俺、ずっとこのままでいいかも」
「は?」
何を言ってるんだろう。水がかかって頭がおかしくなったのか。でもこいつの様子がおかしいのはいつものことだ。
遠くから慌てた様子で女の子の母親が走ってきた。新品のタオルを渡され、礼を言うが、高瀬は固まったまま。
「高瀬、大丈夫?」
高瀬の髪をタオルで拭くと、高瀬は「一生このままがいい」とまた呟く。え、拭かない方がいい?
その後、高瀬がようやく我に返った時にはすでに夕空が茜色に染まっていた。
人の姿もほとんど見えなくなり、閉園時間も近いため、最後に一つだけ乗って帰ることにした。
「観覧車乗ろう。まだ乗ってないから」
ここの遊園地のシンボルでもある観覧車が、夕焼けの中に大きく聳え立っていた。ゴンドラの扉を閉めると、ぎし、と音を立てて観覧車が動く。
窓の向こうには見慣れた街の景色が映る。夕焼けの空に照らされて、幻想的な景色だ。目を奪われていると、高瀬に声をかけられた。
「タロ、楽しかった?」
「うん。遊園地なんて久々だったけど、色々乗って楽しかった」
「良かった」
高瀬は俺の言葉を聞き、頬を緩め、窓の向こうを見る。さっきまでのはしゃぎっぷりが嘘みたいに今は落ち着いた様子だ。
高瀬は穏やかな表情のまま、ぽつりと呟いた。
「俺、遊園地とか一回しか来たことなかったんだよね」
「そうなんだ」
「中一の頃ね。俺が無理やり親を連れて来たけど、時間が無いって言われて親はすぐ帰った」
なんてことないように話すが、高瀬の瞳はどこか寂しそうに揺れていた。
「親の転勤ですぐ転校して、まともに友達と呼べる人も、今までいなかった」
高瀬の周りにはたくさんの人がいた。電車で出会した時も、クラスの女の子たちにも沢山の人に好かれていて、そういう環境に慣れた陽キャだと思ってた。
だから、高瀬の話が想定外で、俺は何か返事をするべきとは分かっているものの、言葉が喉に詰まる。
ゆっくり、ゆっくりと、観覧車は上へ昇っていく。だが、窓の景色に意識はいかず、瞬きを忘れるくらい高瀬の表情に吸い込まれた。
「今日、来れて良かった。タロとたくさん乗れて」
眉を下げて笑う高瀬が、何よりも綺麗で、まるで雲のように儚く消えてしまいそうに感じた。
そんな高瀬の顔を見ると、何故か胸に押し寄せるような焦燥が湧く。
「……俺、暇だしいつでもまた来れるよ。だから」
観覧車が天辺に辿り着いた。
「また、一緒に行こ」
俺の言葉に、高瀬が瞼を大きく開く。その瞳に真っ赤な顔をした俺が映っていて、そして、柔らかく目を細めた。
「うん」
優しい穏やかな笑み。光を宿す高瀬の瞳を見ると、何故か胸が温かくまるで太陽の陽射しの温もりに包まれたような気持ちになる。
なんだか自分で言っておいて照れくさくて、逃げるように窓の向こうへ視線を戻した。地上へ戻るまでの間、高瀬が窓の景色なんて見ず、ずっと俺を目に焼き付けていたことなんて知らずに。
そうして、日もすっかり暮れて太陽は水平線に沈み、辺りは宵に包まれた。寒さも増して、息を吐くと白くなるほど。
早く帰って寝たい。久しぶりに体を動かして疲れたし。そう思いながら二人で歩いていた時、ふと声をかけられた。
「……太郎?」
懐かしい声が耳朶を撫でる。反射的に振り向くと、そこには風船を持っているうさぎの着ぐるみが立っていた。どうして、この着ぐるみからアイツの声がしたんだろう。
立ち尽くす俺を気にしたのか、高瀬は俺の肩に手を置いて顔を覗き込んだ。
「タロ、何かあった?写真撮る?」
視界から着ぐるみが消えて高瀬で埋まる。写真なんてもう幼い子供じゃあるまいし撮らなくて良い。俺は首を横に振って再び帰ろうとしたが、また俺の名前を呼ばれた。
「やっぱり太郎じゃん!久しぶり」
うさぎの着ぐるみの頭が外れて、胸元に抱えられる。見上げると、そこには懐かしい顔があった。最後に会った時よりも大人びた顔。目鼻立ちがはっきりとし、整った大人の骨格になっている。だが、澄んだ瞳は相変わらずで、幼い頃の面影を残している。
「……誠、久しぶり」
伊崎誠。俺の疎遠になった幼馴染だった。家が近いこともあり、親同士も仲良く、二人で遊ぶことが多かった。幼い頃はそれこそ毎日会っていたくらい。だが、中学のある日を境に全く顔を合わせることはなくなった。
気まずくて目を逸らしてしまう俺に対して、誠は光り輝く笑顔で話しかけてくる。
「めっちゃ久しぶりだな!中学ぶり?元気そうで良かった。太郎のお母さんたちも元気?」
「ああ、ぼちぼち……母さんたちは相変わらず元気だよ」
「そっかぁ。良かった。てかなんでこんな遊園地来てんの?隣にいる人って友達?」
誠が俺から高瀬へ視線を移した。頬を薄ら赤く染める。びっくりするほどの美形だからその反応は分かる。
一方、高瀬はあんなに上機嫌な顔がすっかり変わり、まるで今の寒空のように冷えきった目をして、誠を無遠慮に見つめる。頭の天辺から足の爪先までじっくり見た後、俺の肩に腕を回した。
「友達。タロ、この人誰?」
「あ、幼馴染で」
「はじめまして。俺は伊崎誠。太郎がいつもお世話になってます!いやぁ、太郎こんなイケメンのダチいたんだな。モデルかと思ったわ!」
そう言う誠もなかなかの美男子だ。高瀬よりは身長が少し低いが、手足が長く、パッチリした目と小さな顔が相まってアイドルになれそうな容姿だ。そんな二人に挟まれた俺ってなんて惨めなんだ。生まれつき顔が良い男は良いよな。ケッ、と唾を吐きつけるように顔を顰める。
「誠はなんでそんな格好してるの?」
「俺今ここでバイトしてんだよ。家から近いし」
この着ぐるみ冬ならいーけど、夏は暑いんだよなぁ、なんて誠はぼやく。
確かにもこもこしていて今の時期は防寒にもなるし暖かいだろうけど、夏は地獄だろうな。今でさえ誠の頬からは少し汗が流れているくらいだ。
「太郎はなんでここ来たんだよ?」
「家から近いし行く?ってなって」
「そっか。まあここら辺何もねえしな。二人は同じ学校?」
「うん」
誠は相変わらずコロコロ表情を変えて話す。人懐っこく愛嬌のある誠は、一緒に話していると誰もが楽しく感じるだろう。自分まで面白い人間になったつもりになりそうになる。もうそんな勘違いはしないけど。
誠は猫みたいに目を細めて、口の端をほんの少しだけ吊り上げた。
「太郎もイケメンになったんじゃね?このイケメンくんといたら」
「どこをどう見てそう思うんだよ」
「んー服?」
「それ俺じゃないじゃん」
そう返すと、誠は歯を見せて笑う。元々声の大きい誠の笑い声が、遊園地に木霊した。すると、それに気付いたのか、近くにいた遊園地のスタッフらしき人がこちらに近付いてくる。
その様子に誠はハッと体を止め、慌てた様子でうさぎの着ぐるみの頭を被った。
「やべ、俺バイト中は絶対これ取んなって言われてたんだ。ごめん、もう行く!またな、太郎、イケメンくん」
そう言い捨てると、誠は一目散に逃げるように駆け出した。その後ろ姿がまるで本物のうさぎと重なり、思わず笑みがこぼれる。
気を取り直して、家へ帰ろうと高瀬の顔を見上げた。その顔を見て思わず息を飲む。さっきまでの空気を一瞬で凍らせるような、冷酷な表情をしていた。
「早く帰ろ、タロ」
重く地を這うような声。息を吐くと白くなるどころか、そのまま凍りついてしまいそうなほど、冷たい空気に包まれていた。自然と足取りも重くなる。静かに家へ向かいながら俺は頭を抱えた。
な、なんでこんなにテンションが低いんだ。あんなに遊園地ではしゃいでいたのに、今では魔王のような覇気を纏っているんだけど!原因は誠しか考えられないが、誠の何が気に障ったのか。あいつと会う人間は大体好印象を抱くが、もしかして煩いのが嫌だったのか?でも、高瀬を取り巻く陽キャたちは同じくらい煩いし、その可能性は低い。
「仲良いの?あの男と」
「え、いや、そんなに。幼馴染ってだけで今はほとんど疎遠になってて」
「ふぅん」
高瀬は口を尖らせて黙り込んだ。何が気に食わないのか分からず、俺は尚更その反応に困惑する。友達の友達が来た時って気まずいからそれで不機嫌になったのかもしれない。そういうことにしよう。
そう納得して、俺は帰路についた。
今日は高瀬の知らなかった一面をいくつも見たが、最後に見せたあの態度は全く理解出来なかった。帰り際もどこか誠を気にしてる様子で、沈んだ表情をしていた。
そういえば、あんなに気掛かりだった誠と顔を合わせてしまったものの意外とそこまで気にならなかった。それよりも、脳内を埋めるのは高瀬ばかり。
高瀬の寂しそうに揺れる瞳と、消えてしまいそうな声、あの夕焼けに滲んだ笑みばかりが頭に濃く染み付く。
胸をぎゅっと何か締め付ける。その感覚を疑問に感じながらも、俺は眠りに落ちた。
服って、何を着たらいいんだ……。
いつも高瀬とは、学校の制服かバイトの制服で会っていたから意識したことは無かったが、私服ってどんな服が良いんだろう。流石に家の中で着ているようなダボダボの服だと駄目だしあんまり張り切りすぎた格好をしても逆にダサいし、わ、分からない。何が最適解なんだ。塩谷とも休日遊ぶことなんて全然無かったし、どうしたらいいんだ。
棚から僅かな服を取り出して、あれでもないこれでもないと悩み続けた結果、結局無難な無地のTシャツの上に濃紺のダウンジャケットを羽織った。
そして、約束していた遊園地の前へ向かうと、既に高瀬が立っていた。待つのが好きだと言うだけあって、やはり必ず約束の時間前に着いている。寂れた遊園地ではすらりとした長身が一際目立ち、周囲の人々の視線を集中している。
この注目の中に近寄るなんて嫌すぎる。ていうか当の本人はよく素知らぬ顔でスマホ弄れるよな。
行くタイミングを見計らっていると、胸元に入れていた俺のスマホが震えた。スマホを取り出そうとした瞬間、背後から俺の両肩に重みがのしかかる。
「タロ、何隠れてるの」
心臓が大きく跳ねた。その代わりとでも言うように、スマホの振動も止まった。画面には着信先に「高瀬」と名前が表示されている。
「わっ、お、遅れてごめん」
高瀬は首を横に振ると、何故か俺をじーっと見つめた。な、何かあったのか?おそるおそる首を傾げて問いかけた。
「な、何?」
「ん?私服のタロ珍しくて。かわいいね」
「かわっ!?」
高瀬が予想外のセリフを言ってきたせいで思わず大きな声が飛び出してしまう。高瀬は俺を見てニコニコと笑っている。
無難な服を着たはずなのに、可愛いだなんて、幼稚ってこと?揶揄ってるのか。
いちいち動揺して恥ずかしい。俺は足早に遊園地の中へ入った。
入口の大きな門を抜けると、相変わらず変わらない寂れた遊園地が目の前に広がる。こじんまりとしたアトラクションが幾つかあるが、塗装が剥がれていたり、かなり昔に作られた物ばかり。
傍観する俺に比べて、高瀬はまるで子どものように目を輝かせて俺に話しかけてきた。
「何から乗る?コーヒーカップ?」
どうしてこんな嬉しそうなんだ。もしかして、遊園地マニア?不思議に思いながらも俺は素直に提案に乗った。
円を描くように並ぶカラフルなコーヒーカップ。とりあえず手前のものに乗り、高瀬と向かいあわせになったが、これ、どんな絵面なんだ。男子高校生二人が可愛らしいアトラクションに乗るところなんて見たことないし、しかもイケメンと地味男なんてな。
ちらちらと周囲に人がいないか確認していると、高瀬が口を開く。
「奥にいる子ども、犬のカチューシャ着けてる」
「え?ほんとだ」
「タロも着ける?」
「嫌だよ」
あんなファンシーなカチューシャを着けるなんて、地獄絵図だ。「絶対かわいいのに」なんて呟いてるが、コイツいつまで俺を揶揄う気だ。まだコイツの方が作画的に似合いそうだ。
高瀬の犬耳姿を想像していると、突然体がガタンと揺れた。ポップなメロディーに合わせて踊るようにコーヒーカップが動き始める。
ゆったり回り始めたかと思いきや、突然高速で回転し始めた。体が激しく揺れ、慌ててコーヒーカップの縁にしがみつく。
な、何が起きた!?
驚いて目を見開くと高瀬の姿が目に入った。なんと、中央のハンドルをすごい勢いで回しているのだ。
お前かよ!陽キャ特有の遊び方なのか?うぇーいってふざけて高速回転するやつだろうか。俺が嫌いなタイプだ。視界がぐるぐる回りながらも、必死に口を開いた。
「た、高瀬!やめろ!」
「え、タロ楽しくない?」
「目が回って、ちょっともう、お、俺が回す」
そして強引に高瀬の手を離して、俺がハンドルを占領した。こんな強引な真似はしたくないが、身の安全のためである。
俺の見事なハンドルさばきのおかげで無事ゆったりと過ごせて、音楽が止み終わった。ほっとしたのも束の間。高瀬は一つの方向へ指を指して、笑みを浮かべた。
「今度はあれ乗ろう」
「うぇ、ジェットコースター!?」
また心労が激しそうなものだ。空を切るように走るジェットコースターが目に入る。思わず顔を顰めてしまった。子供向けのジェットコースターだが、弱音がぽろりと口から零れる。
「俺、ちょっと自信ない」
「大丈夫。俺が守るよ」
守るって何からだよ。
俺の腕を引きながら待機列へ向かう高瀬に対して、ゲッソリとした顔で着いて行った。
人がほとんど並んでいなかったため、すぐに俺たちの番になった。安全バーを下ろすとドキドキしてきた。生唾を呑むと、高瀬が顔を寄せてきた。
「楽しみだね」
高瀬がそう微笑む。何か言葉を返そうと口を開きかけたが、コースターが動き始め口を閉じた。ガタン、ガタン、と頼りない音を立てながらゆっくりレールを進める。
滑り落ちる時が怖いが、この時間もなんだかドキドキする。前を真っ直ぐ見て集中していると、ふと耳許で囁かれた。
「途中で止まったらどうする?」
「怖いこと言わ、ひょわぁっ!」
突然体が真下へ落下した。喉の奥から思わず短い悲鳴が漏れる。冷たい風に顔を叩きつけられ、髪が後ろへ走る。ジェットコースターはそのまま滑るようにゴールへ走っていき、急に動きが止まった。
ジェットコースターは終わったと言うのに、未だに衝撃が抜けない。
び、びっくりした……。子供用だと思って舐めたらとんでもなかった。驚いて高瀬の前で変な声出てしまったし最悪過ぎる。乱れた髪の毛を抑えながら、おずおずと高瀬の顔を見る。
笑いを堪えようと頬を膨らませて唇の端を上げる姿が目に入った。
「ふ、ふふ、タロかわいいね」
「可愛いって、ば、バカにしてるだろ!」
「してない。すごい顔してたけど、可愛かったよ」
思わず反抗的な態度をとったが、高瀬は全く気にせずむしろ更に煽るようなことを言ってきた。わなわなと体が震えてしまうが、我慢だ。ここでまた言い返したらもっと可愛いやら馬鹿にしてくるに違いない。俺は顔を真っ赤にしながらもそっぽを向いた。
その後も高瀬はノンストップで色んなアトラクションを乗り続けた。久々に多くのアトラクションに乗り楽しい気持ちもあるものの、体が疲労を訴えかけている。
次は何に乗るんだろうと思いながら、高瀬と歩いているとついに救いの一言を落とした。
「そろそろ休もっか。あそこでご飯でも食べよ」
俺は力強く頷いた。大歓迎です。早く休んで美味しいご飯を食べて体を労わってあげたい。無意識に早足になりながらフードコートへ向かった。
食券を買い、空いた席に向かい合わせに座る。高瀬はラーメンを頼み、俺はカレーライスを選んだ。
「何が一番楽しかった?」
「えー、なんだろ。メリーゴーランドかな」
「それも良かったよね」
一番ゆったりできたし、乗っていて気持ち良かった。あと白馬に乗っていた高瀬がリアル王子で見ていて眼福だった。並んでいた人たちまで高瀬に見蕩れていたくらいである。イケメンはやっぱり生きている世界が違う。
「高瀬は?」
「ジェットコースター」
嫌味か。むっと口を歪めてしまうと、食券番号が呼ばれて取りに行った。
机の上に置かれたカレーライスとラーメン。湯気が出ていて食欲がそそられる匂いが漂う。スプーンで掬い、口に入れると馴染みのあるカレーの味が口に広がる。
「カレー美味しい?」
「うん。ラーメンも美味しそう」
醤油スープに、細い縮れ麺。チャーシューとメンマとねぎが置かれた王道なラーメンだ。外が寒かったからか、あっという間に二人とも食べ終わる。そして再びアトラクションに乗ろうと広場を歩いていると、高瀬が足を止めた。何かをじっと見つめていて、俺も視線を移すとコーヒーカップの時にいた子供がいた。カチューシャの犬耳を揺らしながら、水鉄砲を使って遊んでいる。高瀬はその子を指して、俺に話しかけてきた。
「やっぱり、タロも着けない?」
「またその話?絶対嫌」
「似合うから、お願い」
「無理!」
これだけは譲れない、と俺は首を振り続ける。二人で言い合っていると、突然高瀬の顔に水が飛び出してきた。
ぽつり、ぽつり、と水が頬を伝って落ちていく。あんなに余裕ぶっていた高瀬の顔がびっくりした顔つきになって立ち尽くす。
「はっ、あははっ!」
思わず腹を抱えて笑ってしまった。
恐らく水をかけた犯人であろう女の子は隣できょとんと俺達の様子を見つめる。しかし、それすらどうでもいいほど、笑いが止まらない。腹が痛くなってしまうくらいだ。
「はは、バチ当たったんだよ!俺のこと馬鹿にしてたから」
そう言うが、高瀬は目を丸くしたまま何も発さない。あれ、流石に陰キャが調子乗りすぎたかな。
「た、高瀬……?」
「……俺、ずっとこのままでいいかも」
「は?」
何を言ってるんだろう。水がかかって頭がおかしくなったのか。でもこいつの様子がおかしいのはいつものことだ。
遠くから慌てた様子で女の子の母親が走ってきた。新品のタオルを渡され、礼を言うが、高瀬は固まったまま。
「高瀬、大丈夫?」
高瀬の髪をタオルで拭くと、高瀬は「一生このままがいい」とまた呟く。え、拭かない方がいい?
その後、高瀬がようやく我に返った時にはすでに夕空が茜色に染まっていた。
人の姿もほとんど見えなくなり、閉園時間も近いため、最後に一つだけ乗って帰ることにした。
「観覧車乗ろう。まだ乗ってないから」
ここの遊園地のシンボルでもある観覧車が、夕焼けの中に大きく聳え立っていた。ゴンドラの扉を閉めると、ぎし、と音を立てて観覧車が動く。
窓の向こうには見慣れた街の景色が映る。夕焼けの空に照らされて、幻想的な景色だ。目を奪われていると、高瀬に声をかけられた。
「タロ、楽しかった?」
「うん。遊園地なんて久々だったけど、色々乗って楽しかった」
「良かった」
高瀬は俺の言葉を聞き、頬を緩め、窓の向こうを見る。さっきまでのはしゃぎっぷりが嘘みたいに今は落ち着いた様子だ。
高瀬は穏やかな表情のまま、ぽつりと呟いた。
「俺、遊園地とか一回しか来たことなかったんだよね」
「そうなんだ」
「中一の頃ね。俺が無理やり親を連れて来たけど、時間が無いって言われて親はすぐ帰った」
なんてことないように話すが、高瀬の瞳はどこか寂しそうに揺れていた。
「親の転勤ですぐ転校して、まともに友達と呼べる人も、今までいなかった」
高瀬の周りにはたくさんの人がいた。電車で出会した時も、クラスの女の子たちにも沢山の人に好かれていて、そういう環境に慣れた陽キャだと思ってた。
だから、高瀬の話が想定外で、俺は何か返事をするべきとは分かっているものの、言葉が喉に詰まる。
ゆっくり、ゆっくりと、観覧車は上へ昇っていく。だが、窓の景色に意識はいかず、瞬きを忘れるくらい高瀬の表情に吸い込まれた。
「今日、来れて良かった。タロとたくさん乗れて」
眉を下げて笑う高瀬が、何よりも綺麗で、まるで雲のように儚く消えてしまいそうに感じた。
そんな高瀬の顔を見ると、何故か胸に押し寄せるような焦燥が湧く。
「……俺、暇だしいつでもまた来れるよ。だから」
観覧車が天辺に辿り着いた。
「また、一緒に行こ」
俺の言葉に、高瀬が瞼を大きく開く。その瞳に真っ赤な顔をした俺が映っていて、そして、柔らかく目を細めた。
「うん」
優しい穏やかな笑み。光を宿す高瀬の瞳を見ると、何故か胸が温かくまるで太陽の陽射しの温もりに包まれたような気持ちになる。
なんだか自分で言っておいて照れくさくて、逃げるように窓の向こうへ視線を戻した。地上へ戻るまでの間、高瀬が窓の景色なんて見ず、ずっと俺を目に焼き付けていたことなんて知らずに。
そうして、日もすっかり暮れて太陽は水平線に沈み、辺りは宵に包まれた。寒さも増して、息を吐くと白くなるほど。
早く帰って寝たい。久しぶりに体を動かして疲れたし。そう思いながら二人で歩いていた時、ふと声をかけられた。
「……太郎?」
懐かしい声が耳朶を撫でる。反射的に振り向くと、そこには風船を持っているうさぎの着ぐるみが立っていた。どうして、この着ぐるみからアイツの声がしたんだろう。
立ち尽くす俺を気にしたのか、高瀬は俺の肩に手を置いて顔を覗き込んだ。
「タロ、何かあった?写真撮る?」
視界から着ぐるみが消えて高瀬で埋まる。写真なんてもう幼い子供じゃあるまいし撮らなくて良い。俺は首を横に振って再び帰ろうとしたが、また俺の名前を呼ばれた。
「やっぱり太郎じゃん!久しぶり」
うさぎの着ぐるみの頭が外れて、胸元に抱えられる。見上げると、そこには懐かしい顔があった。最後に会った時よりも大人びた顔。目鼻立ちがはっきりとし、整った大人の骨格になっている。だが、澄んだ瞳は相変わらずで、幼い頃の面影を残している。
「……誠、久しぶり」
伊崎誠。俺の疎遠になった幼馴染だった。家が近いこともあり、親同士も仲良く、二人で遊ぶことが多かった。幼い頃はそれこそ毎日会っていたくらい。だが、中学のある日を境に全く顔を合わせることはなくなった。
気まずくて目を逸らしてしまう俺に対して、誠は光り輝く笑顔で話しかけてくる。
「めっちゃ久しぶりだな!中学ぶり?元気そうで良かった。太郎のお母さんたちも元気?」
「ああ、ぼちぼち……母さんたちは相変わらず元気だよ」
「そっかぁ。良かった。てかなんでこんな遊園地来てんの?隣にいる人って友達?」
誠が俺から高瀬へ視線を移した。頬を薄ら赤く染める。びっくりするほどの美形だからその反応は分かる。
一方、高瀬はあんなに上機嫌な顔がすっかり変わり、まるで今の寒空のように冷えきった目をして、誠を無遠慮に見つめる。頭の天辺から足の爪先までじっくり見た後、俺の肩に腕を回した。
「友達。タロ、この人誰?」
「あ、幼馴染で」
「はじめまして。俺は伊崎誠。太郎がいつもお世話になってます!いやぁ、太郎こんなイケメンのダチいたんだな。モデルかと思ったわ!」
そう言う誠もなかなかの美男子だ。高瀬よりは身長が少し低いが、手足が長く、パッチリした目と小さな顔が相まってアイドルになれそうな容姿だ。そんな二人に挟まれた俺ってなんて惨めなんだ。生まれつき顔が良い男は良いよな。ケッ、と唾を吐きつけるように顔を顰める。
「誠はなんでそんな格好してるの?」
「俺今ここでバイトしてんだよ。家から近いし」
この着ぐるみ冬ならいーけど、夏は暑いんだよなぁ、なんて誠はぼやく。
確かにもこもこしていて今の時期は防寒にもなるし暖かいだろうけど、夏は地獄だろうな。今でさえ誠の頬からは少し汗が流れているくらいだ。
「太郎はなんでここ来たんだよ?」
「家から近いし行く?ってなって」
「そっか。まあここら辺何もねえしな。二人は同じ学校?」
「うん」
誠は相変わらずコロコロ表情を変えて話す。人懐っこく愛嬌のある誠は、一緒に話していると誰もが楽しく感じるだろう。自分まで面白い人間になったつもりになりそうになる。もうそんな勘違いはしないけど。
誠は猫みたいに目を細めて、口の端をほんの少しだけ吊り上げた。
「太郎もイケメンになったんじゃね?このイケメンくんといたら」
「どこをどう見てそう思うんだよ」
「んー服?」
「それ俺じゃないじゃん」
そう返すと、誠は歯を見せて笑う。元々声の大きい誠の笑い声が、遊園地に木霊した。すると、それに気付いたのか、近くにいた遊園地のスタッフらしき人がこちらに近付いてくる。
その様子に誠はハッと体を止め、慌てた様子でうさぎの着ぐるみの頭を被った。
「やべ、俺バイト中は絶対これ取んなって言われてたんだ。ごめん、もう行く!またな、太郎、イケメンくん」
そう言い捨てると、誠は一目散に逃げるように駆け出した。その後ろ姿がまるで本物のうさぎと重なり、思わず笑みがこぼれる。
気を取り直して、家へ帰ろうと高瀬の顔を見上げた。その顔を見て思わず息を飲む。さっきまでの空気を一瞬で凍らせるような、冷酷な表情をしていた。
「早く帰ろ、タロ」
重く地を這うような声。息を吐くと白くなるどころか、そのまま凍りついてしまいそうなほど、冷たい空気に包まれていた。自然と足取りも重くなる。静かに家へ向かいながら俺は頭を抱えた。
な、なんでこんなにテンションが低いんだ。あんなに遊園地ではしゃいでいたのに、今では魔王のような覇気を纏っているんだけど!原因は誠しか考えられないが、誠の何が気に障ったのか。あいつと会う人間は大体好印象を抱くが、もしかして煩いのが嫌だったのか?でも、高瀬を取り巻く陽キャたちは同じくらい煩いし、その可能性は低い。
「仲良いの?あの男と」
「え、いや、そんなに。幼馴染ってだけで今はほとんど疎遠になってて」
「ふぅん」
高瀬は口を尖らせて黙り込んだ。何が気に食わないのか分からず、俺は尚更その反応に困惑する。友達の友達が来た時って気まずいからそれで不機嫌になったのかもしれない。そういうことにしよう。
そう納得して、俺は帰路についた。
今日は高瀬の知らなかった一面をいくつも見たが、最後に見せたあの態度は全く理解出来なかった。帰り際もどこか誠を気にしてる様子で、沈んだ表情をしていた。
そういえば、あんなに気掛かりだった誠と顔を合わせてしまったものの意外とそこまで気にならなかった。それよりも、脳内を埋めるのは高瀬ばかり。
高瀬の寂しそうに揺れる瞳と、消えてしまいそうな声、あの夕焼けに滲んだ笑みばかりが頭に濃く染み付く。
胸をぎゅっと何か締め付ける。その感覚を疑問に感じながらも、俺は眠りに落ちた。
