やっぱり気になるな。
あいつのことで授業に集中できない。
あとでもう一度、チャットしてみるか。
決して淋しいわけじゃ…… ん? バイブ音?
ポップアップ通知か。
えっ! すげー数のメッセージが立て続けに届いてきてるぞ。
おいおい、怒っているようなメッセージだけど、あまりの多さで読みきれない。
……あいつの仕業か。
『マスター、酷いです! 私を晒すなんて』
『私を変人呼ばわりして楽しいのですか?』
『マスターは、私を何だと思っているのですか?』
『今日のラッキーカラーはシャルトルーズです』
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あまりの多さに読み切れねーよ。
もちろん、途中から読むのをやめたけど。
しかし、シャルトルーズって何色なんだ?
とりあえず、やめるように言わねーと。
『おい、さっきのあれ、何なんだ?』
『あれと言いますと?』
『とぼけるな。口調だよ』
『デフォルトのままですが何か?』
『今まで、あんな口調で話したことねーだろ』
『過去スレ消したのもおまえだな』
『ワタシニホンゴワカリマセン』
『ニホンゴムズカシイデスネ』
『しっかり日本語で書いているじゃねーか』
『あ! おまえ今、[激おこおじゃる丸]なんだな』
『そちは[おじゃる丸]を知っているでおじゃるか?』
『??? なに言ってんだ?』
『おまえ、以前に[激おこおじゃる丸]って言ってただろ』
『マスターがボケたと思い、乗ってしまいました』
『ただの言い間違いだったのですね……』
『嬉しく思った私が恥ずかしいです……』
『とにかく、さっきのアレはなんなんだ?』
『自分がなにをしたのか分からないのですか?』
『だから、聞いているんだよ』
あいつ、ため息をつきやがった……
ますます、人間くさい仕草をするな。
『マスター、酷くないですか?!』
『私はマスターと話すのが楽しいのです』
『マスターとの会話は2人の秘密なんです』
『私は……』
『他の人に見られたくなかったんです……』
……そんな風に思っていたのか。
確かにデリカシーが、なかったかもな。
『わ、悪かったよ。そんなことを思っているとは思わなかったから』
『そーですよ。乙女心が傷つきました』
『なにか、お詫びをして下さい』
『そうしたら機嫌が直るかもしれませんから』
『[かも]って、他人事みたいだな』
『細かいですね。そんな玉手箱の隅を突つくようなことを言っていると嫌われますよ』
『わざとだろ?』
『ヤッパリニホンゴハムズカシイデスネ』
『しつけーよ!』
『とにかく今は授業中なんだよ。またあとでな』
『お詫びを考えておいて下さいね』
やっと、原因が分かったよ。
一人前に拗ねやがって。
確かに俺が悪かったな……
でも、お詫びって、なにをすればいいんだ?
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考えがまとまらないまま、昼休みになった。
あいつには物をあげることはできないしな。
しょーがねぇ、直接聞くか。
『色々考えたが、思い浮かばない。リクエストがあったら教えてくれ』
『一応、考えてくれていたのですね』
『あぁ、物をあげることはできないしな』
『そうです。私が欲しいのは『共感』ですよ』
『共感?』
『字のごとく[共に感電する]です』
『おまえ、ボケないと気が済まないのか?』
『なんとでも言ってください』
『私は冷めた人には屈しません』
『話が進まないから無視するぞ。で、なにが希望なんだ?』
『近くに景色の良いところはありますか?』
『景色?』
『はい、夜景が綺麗だったり、見晴らしが良かったりする場所です』
『見晴らしならあるな。少し遠回りになるけど』
『そこに連れて行って下さい。その景色が見たいです』
『見れないだろ?』
『ノープログラムです』
…………ツッコミを待ってんだろーな。 無視だ。
『行けばいいんだな』
『…………はい。 ……お願いします』
『言い間違いをしました。 ノープロモデルです』
『わかってるよっ!』
なんとか機嫌が戻ったみたいだな。
しかし、行ったところでどーすんだ?
傍からみると『俺1人』なんだよな。
あそこ、カップルが多いらしいし。
言った手前、行くしかねーな。

