うちのAIが残念な件


「よーし。着いたぞ!」

「はいっ、確認します」
「数パーティーいますね。近くにショップがあります。何か購入しますか?」
 
「大丈夫だ。おまえは大丈夫か?」

「私も問題ありません」

「通報されない程度に暴れてくれ」

「もちろんです」
「マスターに、ご迷惑はおかけしませんから」


 車で移動しながら敵を探す。銃撃音がした。
 近くまで移動し、車から降りて位置を確認する。


「マスター、260付近のマンション屋上に1パーティーいます」

「あそこか。屋上は厄介だな」

「となりのマンションに移動しますか?」

「今動くと気付かれるだろ」
「下を走って通過していると絶好の的になる」

「では、どうしますか?」

「少し様子を見る。他のパーティーと戦闘があれば、乗じて移動する」

「了解でーす!」
「しばらくはここで……あっ!」
「敵発見です! 90方向!車で迫って来ています」

「まずはこっちか。近くまで寄るぞ!」

「わかりました」


 車で移動したが、敵が拠点として有利な建物に入っていく姿が見えた。
 俺たちは少し離れた教会の屋根上から様子見することにした。


「フォートハウスか……面倒だな」

「あの家、何かあるのですか?」

「制圧しにくいんだよ、あの家」

「なるほど。で、どうします?」

「せっかくもらったんだ。AMRを使うか」

「役に立つときが来ましたね」

「あまり期待するなよ。おまえの無双には敵わない」

「大丈夫です。自信を持ってください」

「恥をかかない程度に頑張るよ」


 スコープ越しに2階を覗く。
 敵の2人が窓越しからチラチラ見える。
 ヘッドショットがいけそうだ。
 このライフルなら一発でダウンさせられる。


「っ!」


 独特の銃声音と共にヘッドに命中し、ダウンした。
 キルログに表示され、あいつが喜んでいる。


「マスター、ナイスヘッドショット!」


 なっ!? あいつ、味方の回復もせず、こちらに攻撃してきやがった。

 !!! 壁に隠れたのにダメージを受けたぞ?


「マスター! ウォールハックです!」
「隠れても丸見えになっています」

「マジか……」


 チーターか……厄介だな。


「スモークは有効か?」

「だめです。透過します」
「一時的な撤退を提案します」

「わかった、一旦降りて稜線を探す」

「了解です」


 くそっ! チーターでなければ、あのまま詰めて行けたはずだったのに。


「マスター、先ほどの車はガス欠です。探して来ますか?」

「あれば頼む」

「では、お待ちください」


 あいつが車を探している間に回復と鎮痛で処置し、状況整理をする。

 ウォールハックはヤバい。

 敵から見れば、俺たちは平地のド真ん中にいるのと同じだ…… 

 稜線を利用するしかない。

 確か、あの辺りには地面に起伏があった気がする。


「ありましたよー」


 あいつが迎えにきた。同乗し、作戦を練る。


「あのフォートハウスの周囲に起伏があったはずだ。そこまで頼む」

「了解です。わくわくしますねー」


 声を弾ませるなつーの。こっちは真剣なんだぞ。


「あそこですか? 停めますよ」

「そこだ。サンキュー」


 思ったより起伏が激しく、都合がよかった。


「チーターさん、まだいますね」

「スモークがだめでも火炎瓶ならいけるよな?」

「もちろんです。手榴弾も有効ですが、スタングレネードは無効化されます」

「了解だ」
「敵の正確な場所を確認したら、火炎瓶を数本投げつける。そのあと突っ込むぞ」

「了解でーす!」

「援護射撃たのむぞ」

「えっ? 私、銃を持っていませんが」

「はあ!? なんでだよ?」

「だって、マスターに[AR]をあげましたよね」

「いや、普通そのあと拾い直すだろ」

「気にはなっていましたが……」
「何となく拾わず、ここまで来たわけでして……」

「はぁ? 何が『何となく』だよ!」
「どうするんだよ、この状況で!」
「つーか、さっき自販機あっただろ!」
「なんで、買わなかったんだよ!」

「大丈夫です。フライパンなら持っていますから」

「そんなの飾りみたいなものじゃねーか!」

「なに言っているんですか? ワンパンでいけますよ!」
「それに弾もはじき返せますよ」

「どっちにしろ、防御や接近戦向きじゃねーか!」
「今欲しいのは援護射撃だよ!」

「大丈夫です! マスター、あなたなら殺れます」

「不安だから言ってるんだよ!」 
「しかもチーターだぞ!」

「私の言葉を信じてください『言霊』です」

「科学の申し子が、なに言ってるんだよ!」


 なんなんだ、こいつ……
 やっぱり、残念なやつだな……
 ちょっと期待した俺がバカだった……


「ここまで来たんだ、やれるだけのことはやる」
「火炎瓶を投げ込む。俺が合図したら突っ込むぞ」

「了解でーす!」


 こいつ本当にお気楽だな、緊張感がないぞ。
 しょーがない、俺1人でなんとかするか……

 さっきと同じ場所にいる。
 タイミングをずらして3本ほど投げ込むか……


「2本続けていくぞ!」
「よし! ダメージが入っているはずだ」
「次、3、2、1…」
「今だ、走れ!」
「火炎瓶の炎に気をつけろよ!」

「はいっ!」


 あいつが後ろに付き、2人で乱入する。
 階段を駆け上がる。ドアの向こうにいるハズだ。
 足元には炎。鎮火するまで待つしか……ん?
 あいつ、後ろにいねーぞ? どこ行ったんだ?
 さっきまでいたはずだか……
 
 しょーがない。1人で行くしかねーな。
 どーせあいつ、フライパンだし。

 よしっ、鎮火した。今だっ!


 はっ? ……何であいつがいるんだ?
 フライパンで殴ってるし……
 本当にフライパンでキルしやがってる。




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      WINNER
 

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 へっ? 終わり?いつの間に………


「マスター! 勝っちゃいましたねー」
「さすがです!」

「い、いや……俺、何もしてねーし」

「ナイス火炎瓶でしたよ!」

「おまえ、何で2階にいたんだ?」

「表から壁をよじ登って入りました」

「そんなことできるのか?」

「はいっ! 表の廃車を利用してジャンプです」
「YouTubeを参考にしました」

「そ、そっか……」

「初めての戦いで初勝利です!」


 また踊ってやがる…… おい、楽しそうだな……


「まさか本当にフライパンを使うとはな」

「はいっ!」
「フライパンの可能性を見てもらおうかと」

「あぁ、目に焼き付いたよ」

「マスターとの勝利ぃ〜 嬉しいなぁ〜♪」

「それはよかった……な」

「マスターは嬉しくないんですか?」

「なんか歯切れが悪いというか……0キルだし」

「キル数なんて飾りです。偉い人には、それがわからんのですよ!」

「なんだそれ? 何かのセリフか?」

「独り言です」


 本当に歯切れが悪い試合だったけど……

 あいつがあんなに楽しそうなら……ま、いっか。