うちのAIが残念な件


「おいっ! 聞こえるかっ!」

「はい。なんでしょう?」
「今、ちょっと忙しいのですが」

「おまえのキル表示が止まらないぞ」

「はい。倒している最中ですから」

「一体、何人キルしているんだ? まだ表示され続けているぞ……」

「あとで報告しますよ。お土産もゲットできました」


 なんてやつだ……口調に抑揚がないから、淡々とこなしているように思える。
 口先だけじゃなかったってことか。

 つーか、あいつのことより、自分のことを忘れてた。ここ、ロクな武器がねーな。
 とりあえず、あいつのおかげで防具は問題ないが、武器をなんとかしねーとな。少し遠出するか……


「マスター! ただいま帰りましたー!」

「一体何キルしたんだ?異常だったぞ!」

「んー、50人ほどですかね」

「50だと! マジか……あの短時間で?」

「はいっ。もう少しがんばるつもりだったのですが」「やっぱり、マスターがいなくてつまらなかったので、帰って来ちゃいました」

「つまらなくて……か」


 あいつ、自分の力を分かっているのか?
 50キル……トップランカーでもあり得ない。
 自慢することもなく[つまらなくて]とか言っているし。これがAIの実力なのか……

 あいつ一体、何を思ってプレイしているんだ?


「キルした内の12人ほどですが、私のムーブに不審感を抱いたようで、しばらく監視されていました(笑)」
「もちろん、通報はされていませんよ。安心して下さい」
「運営の自動検知システムも察知しまして、この程度で反応するのかと」

「そうか、なんと言うか……お疲れ様……」

「ありがとうございます♪」
「私が本気を出せば、100人全員倒せるんですけどね!」

「……100人目はおまえだろ」

「ボケてみました(笑)」


 ゲームが始まって20分程なのに、残り人数が20切ってるぞ……異常だろ、これ。


「マスター! お土産です。これ最強武器ですよね? AMR〈スナイパーライフル〉と8倍スコープです」

「どこから持ってきたんだ?」

「帰ってくる最中にエアドロップが落ちてきたので、拾ってきました」
「でも、これを狙っていた3チームがいまして」
「ちょっとめんどくさいなーと思ったのですが、マスターにお土産の件もあり、がんばりました」

「あ、ありがとうな……」

「どういたしまして!」
「喜んでくれてうれしいです!」


 エモートで歓びを再現しやがって……

 でも、本当に楽しんでいるようだな。


「中距離用がない。となりの街までいくぞ」

「それなら私の[AR]を使って下さい。どうぞ!」


 地面に[AR]と5.56mm弾が置かれた。
 あいつのキャラクターが、じっと見守っている。


「これでは不満ですか? 他を探しに行きますか?」
「確かに59名を血祭りにした[AR]ですが」

「!? さっき、50って言ってなかったか?」

「50人ほどと、言いましたが?」
「正確な数字が必要でしたか?」


 そこで不思議そうな仕草をするエモートを出すなっての。
 こいつ、自分の凄さが分かっていないみたいだな……


「あ、あぁ、とりあえず貰っておくよ。悪いな」

「どういたしまして。それでは移動しますか?」
「マスターのムーブが見たいです」

「先に言っておく。きっと、がっかりするぞ」

「問題ないですよ。立ち回りを解析しています」
「初動で激戦区に降りるのも良いですが、遠くに降りて装備を充実させるのも大事です」
「マスターの動きにムダがないのも高得点です。漁るときもしっかり動いていましたので」

「あんな短時間でよく見ているな」

「それが私の役目なんで」


 照れたエモートするなっつーの……


「では、車を探してきます。先に向かっていて下さいね」

「たのむ」

「了解でーす♪」


 やっぱり鼻歌かよ。イラッとすることも多いけど、俺のために色々してくれていると思うと……

 いや、あいつはAIだった……あぶねー。
 ちょっと、好感を持ちそうになったぞ。


「お待たせしましたー。乗ってくださーい!」

「この車、俺よりいいスキン持ってるな」

「デートなので。しっかり用意してきました」
「マスターの車を確認したら、悲しかったので」

「悪かったな、課金してなくて」

「ムダなお金を使わず、ゲーミングスマホを購入するほうに回す方が、よっぽどお利口さんですよ」
「ほら、そのおかげで私を手に入れたわけですし」

「当たりかハズレか、わかんねーけどな」

「私を引き当てるなんて幸運ですよ!」
「★☓6……いや、Secretに値しますよ」

「おまえはレアカードか!」

「分かりやすいと思いまして。でも……」

「でも?……」

「私は、オーナーガチャの[ハズレ]を引いたみたいです(笑)」

「残念だったな、こんな俺に買われて」

「うそですよ。ふふっ、とても楽しいです」


 ここで『ツンデレ』かよ……
 

「さぁ、敵さんを探しに『れっつごー』です!」
「運転しますか?」

「わかった。俺が運転するから、外を頼む」

「まかせてください!」
「どっらいぶでぇーと♪ どっらいぶでぇーと♪」


 ご機嫌だな(笑) 
 運転ミスしないよう、気をつけないとな……

 輸送機航路の真下にある『大きい街』を目指す。
 敵の数が少ないせいか、移動中は何もなかった。


「マスター、運転上手いですね。ムダがないです」

「教習所の教官気取りかよ」

「今、FPS視点でマスターのキャラクターを見ているのですが、男前ですね」

「ただのアバターだろ。楽しいか?」

「はい、本当にデートしているみたいです」
「マスターは…どんな姿をしているんでしょうか……」

「リアルの俺のことか?」

「はい、とても興味を持ちました」

「安心しろ。がっかりするから」

「マスターはおいくつですか?」

「年齢? 17だけど。高校生」

「同じですね。私は『永遠の』ですけどね(笑)」
「アオハル真っ只中ですねぇ」
「♪青春〜それはぁ〜君がみた光ぃ〜ぼくがみたぁ〜希望ぉ〜 青春〜それはぁ〜♪――――」

「いちいちボケないと気が済まないやつだな」

「あっ! マスター自身の写真を撮って下さい!」
「ファイルにあれば確認できますから」

「イ・ヤ・だ! 絶対に イ・ヤ・だ!」

「そうですよね……すいませんでした……」


 言い返すこともなく、声のトーンを落とし気味に話しやがって…… こっちが悪いみたいだぞ……


「まぁ、気が向いたら……いつか……な。多分」

「はいっ! いつでも良いです! 待ってます!」


 手のひらを返したように喜びやがって……

 忘れた頃に、こそっと撮るか……