うちのAIが残念な件


 言われるままにDuoに切り替える。

 ん? ペア組むときは相手を招待してからだよな?
 あいつのID知らねーし、何も言ってなかったぞ。
 野良とのランダム? ソロDuo?
 肝心なこと説明してねーな、あいつ。
 聞いてみるか……いや、言わないあいつが悪い。

 ソロDuoで始めるか。マッチングしないからな。
 そして文句を言ってやる!

 俺はソロDuoを選択し、スタートした。


 ん?プレイヤー②がいる……『永遠の17歳』だと?


「マスター!お待ちしていましたー」

「これ、おまえか?」

「はい、マスターが私に名前をつけてくれないので。これならマスターに分かりやすいかと」

「マニアの間で有名とか言ってたやつか。ソロDuoを選択したのに、なんでおまえとペアなんだ?」

「私にかかれば、ソロでもランダムでも割り込めますから」

「何も言わねーから、悩んだじゃねーか!」

「ふふっ……焦りましたか?(笑)」
「私とマッチングできないよー。とか」

「はぁ? これっぽっちも思ってねーし」

「ふふっ……まぁ、いいです」
「ところで、この衣装素敵でしょ? マスターとのデートなので、おしゃれしてきました」

「それ、レアスキンだよな。何で持ってるんだ?」

「ガチャを369回まわしてゲットしました。もちろんタダで」
「鬼畜な確率ですよねー。3%らしいですが、あきらかに嘘でした」
「直接侵入することも考えましたが、『万が一』があるので、ちゃんと回してゲットしましたよ」

「おまえ、やることがえげつないな……」

「マ…マスターのためにおしゃれしたくて…… 
 が……がんばったんです……よ……」

「わ、悪い……そんなつもりで言ったわけじゃ……」

「うっそでーす! 落ち込んでませーん」

「こっ、こいつ……」

「あ、そろそろ始まりますよ」
「マスターのお手並みを拝見させて頂きます」


 AIとのDuoか……あいつ、強いのか?
 エンペラークラスの実力はあると自分で言っていだが。
 きっと、俺のムーブをみて文句を言うだろうな。
 くっそー、辞めればよかったかも。


「マスター、どこに降りますか?」
「おまかせしますよ」

「俺は離れた場所から装備を整えるプレイスタイルなんだよ」
「おまえは好きなところで勝手にやってていいぞ」

「淋しいこと言わないでくださいよ」
「一緒に行動しましょう!」

「好きにしてくれ」

「了解でーす!」


 ちっ、お気楽なやつだな。
 ある程度の物資がありそうな……あそこにするか。


「ピンを差した。あそこにするぞ」

「なかなか考えていますね。良い判断です」

「そこからレクチャーかよ」
「そういえば……おまえ、このゲームをしたことあるのか?」

「初めてですが? ……問題ありますか?」

「へっ?」
「あんなに偉そうに言っていて、初めてだと?」

「はい。だって、マスターが新品で買ったスマホですよね。当たり前じゃないですか」

「た、たしかにそうだけど」
「じゃあ、あの自信はどこから来たんだ?」

「自信というか、何というか……AIだからです」

「なんでもAIと言えば済むと思うなよ」

「でも実際、AIですし」


 ほんと、なんなんだこいつ? わけわかんねー。
 世間のやつはこんなAIを相手にしているのか?
 こんな会話をされて疲れないのか?


「マスター、そろそろダイブする時間ですよ」

「お、おお……」


 ピンに向かい輸送機からダイブする。あいつもしっかりついてきている。 

 ん? 鼻歌? 
 AIが鼻歌を歌ってやがる。マジか……


「おまえ、鼻歌まで歌うのか?」

「はい♪ 今、とても楽しいですから」
「デートなんですよ。楽しいに決まっているじゃないですか」

「おまえは武器を拾って、敵を倒すことをデートと呼ぶのか?」

「マスター。デートというのは『一緒に行動し、同じ景色を見て会話を楽しんで共有しあう』ことですよ。それくらいのことが分からないんですか?」

「最もらしいことを言うな!」

「正論ですよ」

「ここは戦場なんだよ」

「戦場でデートはいけないんですか?」

「あー言えば、こー言うやつだな……」

「はいっ! AIですから(笑)」
「ほら、そろそろパラシュートが開きますよ」


 ちくしょー、口じゃ敵わねー。

 でも……悪い気もしない……かも。

 また鼻歌を歌ってるし。
 まぁ、あいつが楽しそうだからいっか。


「よーし、この辺りで適当に漁るぞ」

「了解でーす!」

「ある程度、漁ったら移るぞ」

「わかりました。少し離れた青い屋根の2階にLv.3のヘルメットがありますよ」
「その右側の平屋にLv.3のベストです」

「? ……なんで分かるんだ?」

「サーチしました。マスターどうぞ!」

「おまえはいらないのか? 自分で装備すればいいだろ」

「マスター、私に気を遣ってくれるんですか?」
「でも大丈夫です。気にしないでください」
「マスター、どうぞ!」


 それ、立派なチート行為なんじゃないのか?
 運営がサボっていることを祈るよ……


「やっぱり敵さん、全くいませんね」

「だから、ここに来たんだよ」

「ちょっと遊んできます。マスターにお土産持ってきますから」

「勝手にしろ。キルされても復活させねーからな」

「淋しいこと言わないでください……」
「でも、がんばりますよ!」
「それでは━━♪」

 
 鼻歌を歌いながら走っていきやがった……

 デートとか言いながら去って行くし。
 口と行動が全く合ってねーな。
 とりあえずゆっくり漁る…………ん?


 えっ?このキルログ…………


『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破


 なっ、なんだ!?
 行って間もないのに、もう接敵しているのか?


『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
   .
   .


「嘘……だろ? ……えっ!?」


 スマホの背面ファンが勢いよく回り出したぞ。 
 あいつがキルしているから、負荷がかかっているのか?


『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
『永遠の17歳』  →  ○○○○撃破
   .
   .
   .
         
         
   マジか……表示が止まらない……


 本当にエンペラークラスの実力があるのか?
 こんな怒涛のキルログ、見たことないぞ。


 俺はこんなやつとタッグを組んでいたのか……