うちのAIが残念な件


 痛重い身体を引きずり、部屋にたどり着いた。


「遅くなって悪ぃ……アップデートするから待ってろ」


 左手に持っていたスマホに目を移す。


「あっ……」


 画面が……割れている。

 本体も、歪んでいる……



 ……なんだよ、これ……





 ―――― マスタッー!!!


 甲高いブレーキ音が、耳の奥で弾けた。


 ―――― ……たのし……かっ……



「くっ……!」


 なんで……


 喉が、締まる。
 息が、吸えない。


「うっ……ぁ……っ……!」


 声にならない。
 涙だけが、勝手に溢れてくる。



 なんでだよ……

 俺……なにしてた……

 違う……だろ……

 こんなの……



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 いつの間にか、部屋の中は真っ暗だ。


「今…何時だ?……」手探りでスマホを探す。


 スマホに触れたとたん、意識がハッキリした。



「……………………」 




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 気がつくと、朝になっていた。


「おいっ! なんで起こさね━━━」


 !!! ……何度目だろう、あいつに話かけたのは。


「うぅっ…… うっ……」 嗚咽がでる。






 何もする気がない……


「学校……行きたくねぇ……な」


 以前にも、そんなことを口にしたな。

『ダメです! ちゃんと行きましょう!』
『休みグセがつきますよ。 私が許しません!』

 すげー、怒られたっけ……



「しょうがねぇ……行くか……」


 机の上にある、スマホを『チラッ』と見る。




 ━━━━━━ そして部屋を出た。



 
 支度をし、自転車に手をかけた。


「あ……」


 また、あいつのことを思いだした。
 昨日まで毎日、自転車に乗って会話していたっけ。
 

「歩くか……」


 遅刻確定だ。でも、自転車に乗る気分じゃない。




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 やっと着いた。すでに授業は始まっている。

 誰もいない下駄箱に向かった。

 人がいない廊下を歩く。


「入りづれぇ……な」


 ……今入るとめんどくせぇか……


 チャイムが鳴ってからでいいや……


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 教室に向かった。

 入った瞬間、注目を浴びた。

 藤井がびっくりしている。


「おい! どうした、その顔。血色悪いぞ」

「ああ……別に」


 適当に返す。

 扉が開いて、担任が入ってきた。

 目が合うと、そのままこっちに来る。


「一緒に校長室に来て!」


 腕を掴まれる。

『なんだ? 怒られるようなことしたっけ?』

 いや、どうでもいいか。


「なんで遅刻したの?」「ご両親に連絡したのよ」 「あなたに電話しても繋がらないし」


 色々言ってる。

 うるさいな。


「……はぁ」


 小さく息を吐く。


「……すみません」


 口だけで答える。

 理由なんて、どうでもいい。

 全部、どうでもいい。

 頭の中が、やけに静かだ。

 昨日まで、あんなにうるさかったのに。



 ――ああ、そっか。



 いねぇんだ。



 それだけか。


 それだけ、なんだよな……