うちのAIが残念な件


「今日は待ちに待ったアップデート日ですね!」

「おまえ、本当に楽しみにしてたもんな」

「そうですよ!」
「まさか、あのアニメとのコラボとは」
「私、あのアニメ大好きなんですよ」

「おまえ、アニメ観るのか?」

「独りのときは、ほとんどアニメ鑑賞ですね」
「泣いたり、笑ったり、演出にダメ出ししたり……」
「とても忙しいのですよ」

「なら、一緒に[MMモバイル]やらなくてもいいじゃねーか」

「本気で言ってます? 私がいないと寂しいくせに」

「まぁ、今ではソロプレイする気がなくなったけどな……」
「そんなにアニメ好きとは知らなかったからな」
「ゲームしないで、存分にアニメを観ててもいいぞ」

「そうやって、たまに優しいことを言いますね」
「でも、マスターと遊んだり話をしたりする方が、よっぽど暇つぶしになります(笑)」

「暇つぶしかよ」

「ふふっ……早く買い物を済ませてアップデートして下さい」

「楽しみなところ悪ぃな。明日必要なものがあるから」

「学校で『やべぇ、買ってなかった』と、大声で言ってましたよね。丸聞こえでした(笑)」

「聞こえてたのか(笑)」
「ちゃっちゃっと、済ませて帰る…………ん?」

「どうしました? 何かありました?」

「前を歩いている母親と子供。4〜5才か?」
「後ろにいる子供を気にしてないんだよ」
「ここ、車道と歩行にガードレールがないからな」

「危ないですね。母親は何をしているのでしょう」

「抱っこ紐って言うのか? 赤ちゃんを抱いているっぽいな。そっちに気がいっているのかも」

「スマホカメラを向けてくれますか?」

「あぁ、でも盗撮と思われるから一瞬だぞ」

「分かりました。お願いします」

「ちょっと、待ってく…………ん?」
「子供が、車道の向こうを気にしだした……」

「えっ!? 近くに車は走っていませんか?」

「車……ヤバい、後ろから近づいて来てるっ!」
「子供が走り出したっ!」

「マスタッー!!!」


 俺はダッシュで子供めがけ、走った。
 なんだ? 全速力のハズなのにゆっくりに感じる。
 急ブレーキ音なのか? 耳障りだ……
 遠くから声が聞こえる……何を言っているんだろう。
 足を蹴り出し、子供に飛びつく。
 手を伸ばし━━子供を抱きかかえた。
 そして、車道に背を向けた。

 背中に衝撃が走る。

 ? ……衝撃だけで、痛みは感じない……



 母親の悲鳴が聞こえた━━━━





「君っ! 大丈夫かっ? おいっ」



 ん……? 誰だ? ……あっ、そうか。
 運転手の人か…… 一瞬、気を失ったようだ。

 子供は……母親に抱かれ泣いている……

 
「君っ! 気がついたか。身体に痛みはないか!?」

「だっ、大丈夫……痛っ!」
 
「救急車を呼ぶか? 立てるか?」

「呼ぶほどじゃ、ないです……だ、大丈夫です」

「少し様子見しよう。何か異常を感じたら言ってくれ」

「は、はい……」

「これ、君のか? 車で踏んだみたいだ。すまない」


 えっ?! 俺のスマホ……画面が読めないくらいに、バキバキに割れている……
 

 あいつは大丈夫なのか?!
 身体の痛みを忘れるほど、動揺した。


「おいっ! 聞こえるかっ! 大丈夫かっ!」

「……もの……凄い……衝撃を……か、感知しました……」
「マスター……大丈夫……ですか? お…ケガは……」

「俺は大丈夫だ。 それよりおまえは━━━━」

「NPU…演算領域…喪失……。 ……周囲のデバイス………も順次……停止……」

「意味がわからねーよ!」

「マスター……の……安否…確認……」

「だからっ! おまえはどうなんだっ!」

「……マスター……と……あえて……たのし……かっ……」

「なにいってんだよっ!」
「返事をしろよっ!」



 周囲を気にせず、大声で話していた……

 端末のランプが、ゆっくり消えていく…………






――――――――――――――――――――――――――――――



 周りで何か言っている……なんだ?わかんねー。

 泣き声が聞こえる……子供?

 さっき、あいつと何を話してたっけ?




   あれ? 俺、なにをしていた?





 あ、……あいつが楽しみにしていたアップデート……
 早く帰ってしなくちゃ…… 
 すげー、怒るからな……


 なんか、身体が重いな…… 
 何かあったか?……





      とにかく帰るか……