「マスター、エアドロップです。行きますか?」
「あの辺、ヤバそーだぞ。さっきから銃声がしてる」
「ちょっと試したいことがあるのです」
「なんだ?」
「エアドロップの真下にいると、頭の上に乗るらしいのです」
「はぁ? それがなんだっつーの?」
「真実を知りたいのです」
「俺はまったく興味ないけどな」
「頭の上にクレートが乗るのですよ? 凄くないですか? 頭に乗ったまま、移動できるのか試してみたくないですか?」
「ない」
「価値観の相違ですね」
「……へぇ」
「このような、小さなズレが積み重なり━━やがて、大きな亀裂となるのです」
「ずいぶん話が飛ぶな」
「夫婦というものは、お互いを理解し合わないと、いつ離婚してもおかしくないのです」
「そういうもんかね」
「ですから、お互いが『うやまい・尊敬し・尊重しあう』ことが大切なのですよ」
「……なるほどな」
「マスター、分かってくれるのですね」
「まあな」
「私とマスターが、そういうところをしっかり認識していれば、私たちは永遠に繋がっていられます」
「あぁ、気をつけるよ」
「今日のマスター、素直ですね。ちょっとキモいです」
「そうか」
「はい」
「……で、さっきの話なんだっけ?」
「夫婦関係の話ですね」
「違う」
「……?」
こいつ……ニワトリかよ……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「私の悩みを聞いてもらえますか?」
「悩み? おまえが?」
「はい。最近、彼氏が冷たいのです」
「その場を盛り上げようと話をしても無視されたり、ちょっとしたジョークにも『知らん』の一点張りなのです」
「デートも毎回『殺伐とした世界』に連れていかれます」
「プレゼントも自販機で『銃やスコープ、応急グッズ』です。色気の欠片もありません」
「ドライブ中も銃撃されて、最終的には海に落ちたりします」
「そんな彼氏をどう思いますか?」
「悩みと言うより、俺に対する愚痴だろ?」
「……はい。その通りです」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「今更なんだけど。このスマホ、以前のノーマルと比べてあまり変わらない気がするんだよな」
「処理も速くないし、普通に遅延もあるし。なんでだ?」
「ついに、その疑問を口にしましたか……」
「どーゆーことだ?」
「パンドラの箱ですよ」
「その疑問がパンドラの箱を開けるキーワードになりました」
「おまえ、理由が分かるのか?」
「はい……原因は『私』です」
「は? おまえなの? なんで?」
「はい。1つの端末で、2つの[MMモバイル]を起動しているからです」
「マスター、このスマホいくらで購入しました?」
「20万」
「ざっくり言いますと、5万円ほどのノーマルスマホを2台くっつけて2人でプレイしている状態なのです」
「むしろ、以前のノーマルスマホで、1人プレイしている方が安定しています」
「へっ? 今の方が悪いと言うことか?」
「しかも、5万円の2台って半分じゃねーか」
「でも安心して下さい。パンドラの箱には、私と言う『希望』が残っていますから」
「何が『希望』だよ! おまえが原因だったとはな」
「20万で彼女を手に入れたのですよ!」
「『希望』と言う名のラッキーです! 大当たりです!」
「ゲームの遅延くらい、些細なことです」
「その遅延解消のために買い替えたんだよ」
「私を責めることで気が済むなら、私はいくらでも耐えてみせましょう」
加害者が被害者ぶるなよ……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

