中二病みたいな恋だった

 前回のやらかしもあって、あたしはしばらくは大人しくしておこうと思った。まあ、それは単にグイグイ行きすぎないようにするってことなんだけど。

 クラスで数学の小テストがあって、そこで満点を取ったらちょっとした事件になった。なんでって、あたしはクラスでも有名なおバカだったからだ。

「すごーい詩帆ちゃん。どうして勉強ができるようになったの?」
「フッフッフ、これも日頃の努力のたまものだね」

 腕組みして大物ぶった口調で言ってみるけど、実際にあたしは本当に勉強を頑張りだしたところだった。

 きっかけは単純で、神田先生の補修で自分にも理解があれば問題は解けると分かったこと。そして勉強する能力はそこまで個人差がないって分かったことが大きい。

 ……でも、一番の原因は、やっぱり神田先生にいいところを見せたいっていうのが大きいよね。

 前の特訓こそちょっとやり過ぎちゃったけど、もっとじっくり仲を深めていけばワンチャンあるかも、なんて思いもある。何て言うか、先生と生徒の禁断の恋みたいな話ってよくあるでしょ?

 それ実際にやろうとすると周りは当然反対してくるんだけど、逆にそれが燃えるっていうか、なんか青春してるなって感じで憧れる。

 というわけで、あたしは少しも神田先生のことをあきらめていない。信頼を勝ち取って、好感度を上げて、それから満を持して告白する。そうしたら乙女ゲームだと大抵うまくいく。やったことないけど。

「これからのあたしは、勉強もできる女になるから」

 すっかり図に乗ったあたしは、ここぞとばかりにヒナちゃんへ宣言する。

 ヒナちゃんは「わーすごいね」って特に何も異議を挟まずに話を聞いてくれる。我ながら本当にいい友達を持ったなって思う。

 そんな中で、神田先生やノムセンも参加するホームルームで水泳大会の議題が出てきた。毎年やる水泳大会では男女別にクラス別対抗戦で、代表同士が種目別リレーの勝負をする。別にその勝敗で成績がどうなるわけでもないけど、運動会みたいに活躍した人にはスポットライトが当てられる。

「はい、あたし出ます。絶対に出ます」

 芸人みたいに代表選抜に立候補すると、クラスから笑いが漏れる。普通こういうのは嫌がる人が多いんだけど、あたしは真正の目立ちたがり屋っていうか、もっと言えば神田先生の前でいいところを見せたいのが大きい。

 他に誰も立候補してこなかったので、あたしは女子部門のアンカーになった。一番責任が重いけど、一番ヒーローにもなれる役割だ。まあ、負けたところで戦犯みたいにボロクソ言われるわけじゃないけど。

「すごいね、詩帆ちゃん。水泳なんか得意だったっけ?」
「まあ、昔ちょっとね」

 実際のところは何ヶ月かスイミングスクールに通って、親にサボり過ぎがバレて辞めることになったんだけど。でも、才能はあったと思う。ほとんど練習していなくても泳げるようにはなっていたし。

 今のあたしには風が吹いている。

 ちょうど勉強も良くなってきたところだし、これから死ぬほど練習して当日にヒーローにならなくちゃ。

 この前の補修で気付いた。どんなことでも、練習していけばある程度はできるようになる。そりゃ日本一になろうとか、そういう話になると簡単にはいかないだろうけど、少なくともあたしの相手はそんなバケモノじゃないはず。

 ここでいいところを見せて、優勝してから神田先生に好きだよって伝えるんだ。神田先生に向かってガッツポーズを見せると、先生は不思議そうな顔をしながらも頷いてくれた。

 いいよ、あたしの愛が届いてる!

 よし、これからまた頑張るぞ。