中二病みたいな恋だった

 色んな意味で爪痕を残して帰宅したあたしは、勉強もせずに遊びまくったせいでいまだに終わっていない夏休みの宿題を片付けようとしていた。部活をやってなくて本当に良かったなと思う。

 勉強机に向かって大嫌いな数学の問題集を解く。合っていようがバツだらけだろうが、とりあえず最後までやって提出することが必要になる。いつもだったら回答を書き写して、問題が難しくてズルがバレそうなところは空欄にしておくという方法で乗り切っていたけど、神田先生に「東大へ行ける」と言われたあたしは珍しくやる気を出していた。

 そうだ、あたしだってやればできるんだ。きっと、東大にだって……。

 と思って気合こそ入れたものの、最初の連立方程式でいきなりつまづく。何この呪文みたいな式。錬金術でもやるつもりなの?

 瞬く間にやる気は消え失せ、気付けばスマホをいじっていた。いや、さっきまでやる気はあったんだよ? でも、気付いたらスマホでニュースとか見てたの。しょうがないじゃん。

「そう言えば、教生ってどれぐらい学校にいるんだろう?」

 神田先生が教師の見習いってことは、しばらくしたらノムセンに担当が戻るはず。問題はその期間だ。神田先生と離れ離れになる前に、あたしは彼のハートを射止めないといけない。

 スマホで教生について調べてみると、中学校に赴任した教生の実習期間は3週間ほどらしい。……えっ。ってことは、神田先生とは3週間しか会えないってこと?

 うわ、なんか切なくなる。

 これは運命の出会いだって思ったのに、残り時間ってそんなに少ないの? いくらマンガやゲームみたいな恋だって言っても、別に制限時間なんていらないんですけど……。

 なんだかすごい無理ゲーをやらされている感があるけど、あたしが神田先生と付き合うためには3週間以内に高感度を上げて、それから告白を成功させないといけないみたい。神様ってそういうゲームが好きだよね。

 しかしマジか。これは相当な……でも、超絶かわいいあたしならできそうな気がする。あきらめたらそこで試合終了って言うし。

 それに、あたしが付き合っている人がいるか訊いたらほんのり赤くなっていた気もするし、完全に脈無しじゃない……はず。

 ようし、クラスの男子はドキッとさせるのに成功していることだし、ここであたしの魔性っぷりを発揮してやる。

 それに宿題も終わってない。本当なら怒られるところだけど、「分からないから教えてください」って言って職員室に突撃できるじゃん。うん、それがいい。あたし天才。勉強はバカだけど。

 こうして瞬く間に宿題の放棄と職員室への突撃が決まった。

 残り時間は3週間しかない。全力で、神田先生の心をつかみにいかなくちゃ。