朔夜の家に着いた。白いワイシャツが体に張りついて、白い肢体が薄く透けて見えた。
「ただいま」
言ってから気づいた。自分の家ではない。でも口から自然に出ていた。
「冬馬、って、びしょ濡れじゃん」
朔夜が急いで引っ込んだかと思うと、バスタオルを持ってきて、冬馬の頭にかぶせた。そのまま朔夜がタオルで冬馬の髪の水を拭き取っていく。丁寧に。
母親がいない家で育った朔夜が、冬馬の世話を焼いていた。
「どこ行ってたの」
「……観光」
「雨の中?」
「降ってなかった時に出たの知ってるでしょ、朔夜のばか」
嘘ではなかった。朔夜はタオルの手を止めた。少しだけ間があった。それからまた拭き始めた。
「そっか」それ以上聞かなかった。
