翌日の昼過ぎ、学校に集合した。
夏休み中の校舎は静かで、運動部の掛け声だけが遠くから聞こえていた。プールは今年も使われていない。フェンス越しに見える水面だけが青く光っていて、冬馬は視線を逸らした。
部室で機材を確認した。「やっと使える機会だ」と、いつもは携帯で撮影を行っている陽翔が嬉しそうにカメラを二台並べ、湊がライトの充電を確認し、旭は三脚を組み立てながら「重すぎ邪魔すぎ」と文句を言った。蓮司はスマホで旧校舎の場所を確認していた。朔夜は壁に寄りかかって腕を組み、準備が終わるのを待っていた。
全員で歩き出す。旧校舎までは自転車で二十分ほどだった。商店街を抜け、住宅地を通り、坂道を上がっていく。真昼の坂道は容赦がなかった。ペダルを踏むたびにふくらはぎが焼け、シャツの背中は汗で肌に貼りついている。陽翔は片手でカメラを持ったまま漕いでいて、旭が「ガチ死ぬ」と呻いた。道が細くなり、両脇に木が増え、やがて舗装が途切れた。砂利道に入ると自転車を降りて押すことになった。木々の影が濃くなり、蝉の声がより一層厚くなる。木陰に入り、日差しが遮られると空気がじわりと湿り始めた。
「なんか急に涼しくなってきたな」
旭が言った。実際、山に入ると気温が少し下がる。けれど冬馬には、それが普通の涼しさには感じられなかった。
途中、冬馬は鞄からペットボトルの水を出した。一口飲んでから、隣を歩く湊に差し出した。
「飲む? 脱水とか気をつけて」
「あ、ありがとうございます」
湊は嬉しそうに受け取って、二口ほど飲んだ。冬馬は前を向いたまま、何の表情も変えなかった。
ペットボトルを戻す時、これから向かう先を想像したのか、冬馬の指先がわずかに硬くなっていた。
その二人の様子を、後ろから朔夜が見ていた。朔夜もまた、何の表情も変えなかった。
