八月二十七日。ニュースキャスターが夏の余命を読み上げた。
この日も冬馬は優しかった。朔夜に対して完璧に。
朝のパンに朔夜がジャムを塗り忘れていると、「はい」と自分の皿から分けてくれた。朔夜が本を読みながら寝落ちすると、いつの間にかブランケットがかかっていた。
朔夜が黙り込んでいると、何も聞かずに隣に座った。何も言わない。ただいてくれた。
冬馬の優しさは完璧で、隙がなかった。朔夜が欲しいものを、欲しいタイミングで、欲しい形で差し出してくる。まるで朔夜の中全部を見据えているように。
蓮司を貯水槽に沈めた手で、朔夜のブランケットを直している。凪に「やって」と囁いた唇で、「おはよう」と微笑んでいる。
冬馬は全部を同じ手で、同じ唇でやっている。優しさと殺意の間に境界線がなかった。
朔夜はそのことに気づけない。気づけないまま、今日も二人で夏を消費していた。
