高校二年生の春。
旧校舎の解体が決まった。夏休みが終われば工事が始まる。封鎖区画が開かれる。地下貯水槽が壊されてしまう。
冬馬は奇しくも凪が死んだ年齢と同じ年齢になっていた。
冬馬は確信した。
今年こそが絶好の機会だと。今年こそが最後の夏だと。
凪が高校二年生の夏を取り戻せるように、春から綿密に計画した。
捨てアカウントを作った。旧校舎の噂を書いた。陽翔にDMを送った。陽翔の性格を知っている。絶対に飛びつく。動画の企画になって、みんなを旧校舎に連れていく。
最後の夏に、最後の友達を凪に送る。
冬馬は水を持っていった。ペットボトルの水。凪の水が数滴混ざった水。旧校舎の中で、旭が「喉カラカラだ」と言った。冬馬が水を出した。陽翔が「ずるい、俺にもくれ」と横取りした。二人が飲んだ。湊には旧校舎に行く道の途中で先に渡していた。
甘い目論見がハズレ、蓮司は自分のボトルを持っていた。朔夜は自分の麦茶を持っていた。
蓮司と朔夜だけが、冬馬の水を飲まなかった。
蓮司は——冬馬が自分の手で処理した。貯水槽に突き落とした。凪が届かないはずの相手を、冬馬が直接、凪の元へ送った。
朔夜は——
