夜。
冬馬は自室の窓を開けたまま、ベッドに横になっていた。窓から入る風がぬるい。蝉の声が遠い。シーツに触れている背中がじっとり汗ばんでいる。
机の上のコップの水面が、わずかに揺れていた。風はない。揺れる理由はない。いつものことだった。
冬馬はそれを見つめた。
今日、朔夜が言ったこと。お前がいなくなったら。
いなくならない、と答えた。嘘をついたつもりはなかった。泣きそうな声に、思わず口をついて出た言葉だった。
でもいつかは全てが終わる。今のままの関係ではいられないだろう。変わってしまったこの夏も終わる日が来る。
コップの水面がまた揺れた。
冬馬は目を閉じた。
旭が言っていた。言いたいこと言えよ、と。お前がいて楽しかったと陽翔に言えなかったと。明日何があるかわかんないと。
まだ夏の途中だった。まだ終わっていない。あと少しだけ、いや、この夏が永遠に終わってくれないようにも思えた。
朔夜の「信じてるから」という声が、まだ耳に残っていた。
