旧校舎を出た。外の熱気が体を包む。一体を支配するようにどこからでも聞こえる蝉の声が、僕たちを責め立てるように一際大きく鳴き始めた。
フェンスの外に出て、全員が黙った。旭が自転車のハンドルを両手で握ったまま、しばらく動かなかった。目が赤い。今度は泣いていた。声は出さなかった。ただ、唇を噛んで、ハンドルを握る指が白くなるまで力を込めていた。
蓮司が「今日中に警察に行く」と言った。旭は何度も何度も頷いた。昨日のように反論しなかった。「明日になったら連絡くる」は、もう信じられなかった。
帰り道、五人がばらけて歩いた。蓮司と湊が前、旭が少し離れて一人、冬馬と朔夜が後ろ。
旭の背中が小さかった。いつもは陽翔と並んで大きい声で常に話し続けている人間が、今は自分の自転車のカラカラというチェーンの音だけを聞いて歩いている。時々スマホを見ていた。陽翔のチャットを開いているのだろう。既読はまだつかない。永遠につかないかもしれない。
前を歩く蓮司と湊の間には、昨日よりさらに近い距離があった。湊が蓮司の半歩後ろを歩いている。蓮司は時々、首だけ振り返って湊を確認している。二人とも無言だったが、その無言に緊張はなかった。信頼の形をした沈黙だった。
冬馬の腕が、朔夜の腕とぶつかった。避けなかった。朔夜も避けなかった。
「明日も行くのか、大丈夫か」
朔夜が聞いた。前を見たまま。
「当然行く」
冬馬が答えた。
「……そうだよな」
それだけだった。並んで歩く二人の影が、アスファルトの上で重なっていた。
