帰り道になった。来た廊下を戻る。
陽翔が急に足を止めた。
「あ、やっぱちょっと待って。さっきの映ってた教室、もう一回撮ってくる」
蓮司が振り返った。
「一人で行くな」
「すぐ追いつきますって。三秒で戻るっす」
「だから一人で行くなって言ってる」
「大丈夫っすよ大丈夫。人影が映った教室、もう一回だけ撮りたいんすよ。一人の方がカメラ安定するし」
陽翔は蓮司の腕をすり抜けるように横を通った。
「この俺のいち行動でバズるかもしれないんす。ホントに真面目な話、三分だけ」
旭が「俺も行こうか?」と聞いた。陽翔は振り返らずに手を振った。
「いい。一人の方が撮りやすい。余計な音入ると映えないから」
蓮司が口を開きかけたが、陽翔はもう走り出していた。靴が濡れた床を叩く音が遠ざかっていく。廊下の角を曲がって、姿が消えた。
冬馬は何も言わなかった。陽翔が消えた廊下の角を、一瞬だけ見つめて、それから視線を落とした。
朔夜は冬馬の横にいた。冬馬のその一瞬を、見ていたのか見ていなかったのか、わからなかった。
「二分だけだ」
蓮司がそう言って、残りの五人は廊下で待った。
