はっきり、死のうと思った。ほとほと人という生き物が怖くなり、どれだけ憎んでも足りず、そうして、逃げようと決心した。僕は車を運転し、県の端まで移動して手頃な場所を探し求め、ホームセンターで買い求めた縄と自宅から持ってきた脚立を使って自殺を試みた。車の中、そして車を降りてからしばらくの間恐怖はなかった。むしろこれからやっと死ねるのかという安心感が心に沁みてきたほどだ。怖くなったのは、死ぬ直前だった。
僕は登山客の訪れる、あまり標高の高くない山の中腹を死場所に選定した。山の入り口の駐車場に車を停めて、一人きり縄と脚立とを抱えて茂みの奥を目指した。登山道として整備されているため道はそこまで歩くのに難しくなく、スマートフォンのライトを頼りにすれば転ぶ心配もなかった。右手には光を持った。左手には、脚立を掴んでいた。縄は左側の肩に輪っかにしてかけていた。所持品はこれだけだ。
山の中を懸命に、息を切らしながら移動し続け、もう体力の限界と感じたところで道を逸れてまた少し歩いた。なるべく目立たないように死にたい、しかし、せっかく死ぬのなら人の目に触れて、何かしらの衝撃も与えてやりたい。せめぎ合う気持ちのせいで僕は、登山道からあまり離れていない中途半端な地点で足を止めるのだった。真夜中で暗かったが、おそらく登山客の視界に入る間合いだろう。体力のない頭の指令は、「ここでいい、ここにしよう」ということだった。
足元が随分悪く、脚立を立てるのは容易でない。それもそのはずで、傾斜になっている上に植物が遠慮なく繁茂しているのだ。自分の足元を確保するだけでも精一杯だった。でも僕は頑張った。死ぬために頑張って、足元の雑草をある程度排除した。硬い地面を発見し、そこにようやくと言った体で脚立を自立させた。もちろん隣には、頑丈そうな樹木が一本立っている。
汗で全身がずぶ濡れになっていて、不快感にいよいよ我慢ができなくなっても僕は縄を頭上に投げた。枝に縄をかけ、きつく結んだ。結ぶためには身長が足りなかったので、脚立を使った。脚立から降りて、さあ首を括るための輪を作ろうという段になってようやく、僕の心に大きな黒い塊が誕生した。塊は動かず、あくまでそこにいるつもりらしい。僕の心の中心という、目を逸らしようもない箇所に生まれてしまった。僕はこの塊と正面から対峙しなくてはいけなかった。
僕は登山客の訪れる、あまり標高の高くない山の中腹を死場所に選定した。山の入り口の駐車場に車を停めて、一人きり縄と脚立とを抱えて茂みの奥を目指した。登山道として整備されているため道はそこまで歩くのに難しくなく、スマートフォンのライトを頼りにすれば転ぶ心配もなかった。右手には光を持った。左手には、脚立を掴んでいた。縄は左側の肩に輪っかにしてかけていた。所持品はこれだけだ。
山の中を懸命に、息を切らしながら移動し続け、もう体力の限界と感じたところで道を逸れてまた少し歩いた。なるべく目立たないように死にたい、しかし、せっかく死ぬのなら人の目に触れて、何かしらの衝撃も与えてやりたい。せめぎ合う気持ちのせいで僕は、登山道からあまり離れていない中途半端な地点で足を止めるのだった。真夜中で暗かったが、おそらく登山客の視界に入る間合いだろう。体力のない頭の指令は、「ここでいい、ここにしよう」ということだった。
足元が随分悪く、脚立を立てるのは容易でない。それもそのはずで、傾斜になっている上に植物が遠慮なく繁茂しているのだ。自分の足元を確保するだけでも精一杯だった。でも僕は頑張った。死ぬために頑張って、足元の雑草をある程度排除した。硬い地面を発見し、そこにようやくと言った体で脚立を自立させた。もちろん隣には、頑丈そうな樹木が一本立っている。
汗で全身がずぶ濡れになっていて、不快感にいよいよ我慢ができなくなっても僕は縄を頭上に投げた。枝に縄をかけ、きつく結んだ。結ぶためには身長が足りなかったので、脚立を使った。脚立から降りて、さあ首を括るための輪を作ろうという段になってようやく、僕の心に大きな黒い塊が誕生した。塊は動かず、あくまでそこにいるつもりらしい。僕の心の中心という、目を逸らしようもない箇所に生まれてしまった。僕はこの塊と正面から対峙しなくてはいけなかった。

