おっさんバックパッカーは異世界へ行っても自由気ままに旅をする。

「俺たちもそれで報酬をもらって生活しているわけだから、ガクトさんが気にする必要はないぜ」

「ああ。こうやってお酒を奢ってくれて、こっちが感謝しないと」

 俺たちを襲ってきたブラウンウルフの群れを討伐してくれたこともあって俺が全部ご馳走しようとしたのだが、それは断られてしまった。ただ今回は俺から誘ったということもあり、ひとり一杯ずつ奢るという話で落ち着いた。

 俺としてはこういった縁は大事にしたいので、彼らにならご馳走してもよかったんだけれどな。

「亡くなった人はいなかったみたいだけれど、討伐依頼の方はどんな感じだったんだ?」

「Dランク冒険者がほとんどだったけれど、結構な数が参加していたわ。やっぱり森の中でオオカミの群れを探すのは結構大変だったわね」

「こっちも多かったけれど、あっちも多かったからな。それに途中でゴブリンの巣も発見できたのはラッキーだったぜ」

「あいつらは弱いくせに繁殖力だけはすごいからな……」

 無事に討伐が完了したらしいけれど、いろいろと大変だったようだ。

 ちなみにこの世界でゴブリンは完全に害獣として扱われている。俺も何度か遭遇しているが、それほど知能は高くなく、足も速くないので、おっさんである俺でも走れば逃げることができる。

 ただ繁殖力が非常に強く、数が増えると面倒だ。作物や家畜を荒すので、農村の人たちはゴブリン対策も大変なのである。

「この街付近の森は前にいたところよりも魔物が多い印象ね」

「ああ。冒険者の数が少し少なめだから、どうしても魔物が増えていくみたいだな。そのぶん依頼の数は多いから、ある程度の力があれば食うには困らなそうだ」

「魔物が多いから、今まで以上に気を付けることが多そうだ。しばらくは少し軽めの依頼を受けて、この街付近の地形や魔物の生態を覚えてから本格的に活動するつもりだぜ」

「なるほど、さすがだな。それにそういった話はすごく勉強になるよ」

 実はいい冒険者ほど危険な冒険はしないものなのだ。自分の実力を見誤って、能力以上の依頼を受けてしまえば、他の仕事と違ってその先にあるのは死だからな。

 つくづく俺には無理な仕事だと思う。女神にもらったスキルが戦闘系のスキルでなくて本当によかった。

「報酬はそこまで高くなかったけれど、こっちの冒険者ギルドの職員さんや他の冒険者の人と交流もできたから、ちょうどいい依頼だったわね」

「冒険者の横のつながりも大事だものな」

 この世界の冒険者は立派なひとつの組織なので、冒険者同士のつながりも非常に重要だ。

 しばらくは慎重に活動するようだし、ヴァルドたちはさすがに分かっているみたいだな。

「ガクトさんの方はどうだったんだ? 目的のものは見られたのか?」

「ああ。ミロネス塩湖の景色は本当にすばらしかったぞ。みんなも依頼とかで近くまで行ったら、少しだけでも覗いてくるのをおすすめするよ」

「へえ~。実はこの街にいる知り合いの冒険者にもそう言われたんだ。落ち着いたら行ってみてもいいな」

 ヴァルドたちは元々この街にいる冒険者に誘われてここまで来た。どうやらその冒険者もミロネス塩湖の景色をおすすめしているようだ。確かに自分が拠点としている街であれほどの景色が見られるのなら、一度は行って見てみることをおすすめするだろうな。

「手前のところから見る景色だけでも十分にすごいけれど、少し奥にある小さな湖もすごかったよ。ただ、そっちは結構遠いうえに泳ぐと肌のベタつきがヤバいからそれほどおすすめはできないがな」

 例の小さな湖は遠くて迷う可能性があるうえに、一度あそこで泳ぐと水でしっかりと洗い落とさなければならない。普通の人は俺のように大きな収納用の魔道具なんて持っていないだろうから、自分で水を持っていく必要性がある。

 三人分の身体の塩分を洗い流す量の水を持ち運ぶのは結構な労力だろう。それに飲み水や料理をするための水も別で持っていかないといけない。改めてこのバックパックもあって良かったよ。

 あの謎の結晶については話さないようにしておいた。どうやらあの結晶のことはそこまで多くの人が知っているというわけではないらしい。確かにとても綺麗な光景だったが、あれだけの労力を使ってまで行くかは少し微妙だからな。

 俺はああいった景色を見ることが好きだからいいが、そうでない人もいる。それに帰りの方が目印になるミロネス山がないぶん、道に迷う可能性は上がってしまいそうだ。

「あと、もしかしたら知り合いの冒険者から聞いているかもしれないが、ミロネス塩湖へ行く日についてもおすすめしたい日がある。普段の景色もすばらしいけれど、ある特定の条件の日に行くとさらにすばらしい景色が見られるんだ。その条件は……」