おっさんバックパッカーは異世界へ行っても自由気ままに旅をする。

「やはりこの辺りであれだけのブラウンウルフの群れと遭遇するのは運が悪かったみたいだ。もしかすると冒険者ギルドに討伐依頼が出されるかもしれないらしい」

 護衛の男性いわく、あの魔物はブラウンウルフというらしい。俺もオオカミ型の魔物に遭遇したことはあるが、その時は色が灰色だったし、大きさが一回り小さかった。

 商人や駆け出し冒険者では厳しそうな相手だったし、そういった魔物には街から冒険者ギルドへ討伐依頼が出されることも多い。

 俺もまともに戦ったら勝てない相手だろう。まあ、俺は迷わず転移スキルを使って逃げるがな。

「へへっ、そしたら俺たちがその依頼を受けてやるぜ!」

「ああ、Dランク相当のブランウルフなら数が多くてもなんとかなりそうだ」

「こら、油断は禁物だっていつも言っているでしょ」

「ふふっ、仲がよろしくて羨ましいですね」

 馬車の中でも思っていたが、随分と仲の良い三人組だ。きっと冒険者パーティを組んでからそこそこ長く、いろんなことを乗り越えてきたに違いない。こういった若者たちが頑張っているのはおっさんとしても応援してやりたいところだ。

 ちなみに今日のこの場は俺と御者と護衛の人で三分の一ずつ払うことになった。2人とも俺が払わなくてもいいと言ってくれたが、こういうのは気持ちの問題なので、快く出させてもらった。

「むっ、この野菜は初めて食べたが、なかなかいけるな」

 こっちの白い葉物の野菜は茹でて塩をかけただけのようだが、柔らかくて甘みがあってなかなかいける。確かさっき市場で買った野菜の中に似たようなものがあったが、こんな味になるのか。

「……う~ん、ぶっちゃけガクトさんが野営で作ってくれた飯の方がうまい気もするな」

「あっ、俺もそう思った」

 先ほどまで酒をうまそうに飲んでいた2人がそんな嬉しいことを言ってくれる。

「そういってくれると作ったかいがあるな。まあ、野営をしている時に食べる飯はうまいのと、香辛料を使っているからそう感じるんだろう」

「う~ん、それもあるけれど、調理方法もこの国だとあんまり見かけない料理だったわね」

「俺の故郷の料理だからな。気に入ったなら是非作ってみてくれ」

 途中からはパーティの料理担当であるこの女の子も料理を手伝ってくれたので、レシピはすでに伝えてある。野営にも向いている料理を作ったので、ぜひ試してみてほしいところだ。

「今回はガクトさんのおかげで野営なのにうまい飯にありつけたし、ヴァルドさんたちが加勢してくれたおかげでだれも怪我をしないですんだ。とても感謝している」

「ええ、本当に皆様のおかげで助かりました。改めてこの出会いに乾杯させてください!」

「ああ、そうだな。こんな縁も滅多にないことだろう。ヴァルド、音頭を頼むよ」

「おう! 今日この時この出会いに乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 たまたま同じ乗合馬車に乗り合わせただけだが、しばらく行動を共にして同じ釜の飯を食べた仲だ。これも何かの縁として大切にしていきたい。

 もちろん彼らとはもう二度と会うことがないかもしれない。だが、一期一会という言葉もあるように、一度限りの出会いや機会、あるいはその瞬間を大切にしよう。

 出会いと別れは旅をしていれば多く経験することになるが、それぞれの出会いを心に刻み、また会えることを祈るとしようじゃないか。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「いざ出発!」

 そして翌日になってミロネスの街から出発する。

 昨日はみんなと一緒にかなり遅くまで飲んでいたが、超健康スキルのおかげで二日酔いにはならずにすんだ。前世でなら翌日まで引きずる程度には飲んだのだが、ほろ良い気分までで済むこのスキルは地味に助かっている。

 良い出会いもあったことだし、この先の目的地まで順調に進めることを祈るとしよう。

「さて、ここからは歩きで1日ほどといったところか」

 今回の目的地はミロネスの街から少しだけ離れたところにある。そこまでは馬車などは出ていないので、徒歩で進むとしよう。

 ここ一週間はずっと馬車の中で過ごしていたから身体がなまっているだろうな。スキルがあるとはいえ、身体はしっかりと動かすとしよう。

 それにしても、昨日までは大人数で過ごしていたから、一気に寂しくなってしまったものだ。一人旅も悪くないんだが、たまには大勢で行動するのも悪くない。そうだな、今晩はまた女神と一緒に晩ご飯を食べるとするか。