「うう……女神たる妾が穢されたのじゃ……」
「大袈裟なやつだな。味は満足していたのに」
「味の問題ではないのじゃ!」
睾丸ならそこまでゲテモノってわけじゃないんだけれどなあ。それにヴァインボアの睾丸は滋養に良い高級食材だ。
とはいえ、さすがに俺もこの世界では有名なオークのイチモツとかは止めておいたぞ。そっちは精力増強の効果もあるから、年はわからないが少女姿の女神に食べさせたらセクハラになってしまいそうだ。おっさんはコンプライアンスには敏感なのである。
ちなみに馬や牛のイチモツは元の世界でも食べられていたぞ。
「ほら、食後の果物もあるからこれを食べて元気を出せ」
「……今度も変な果物ではないのか?」
やれやれ。すっかり信用を失ってしまったようだ。まあ今更か。
それにこっちの世界だと悪臭が酷いドリアンを超えるような果物や動いて噛みついてくる果物なんかも存在するからな……。
「こいつはルガルの実だ。いろんな場所で売っているからさすがに知っているだろ?」
「うむっ、確かにこれなら安心じゃ。甘くておいしいのう」
そう言いながらルガルの実に噛りつく女神。
甘い果物を食べて多少機嫌が治ったようだ。相変わらずちょろい。
俺もこの世界に転生してきて知ったのだが、女神といっても全知全能というわけではないらしい。会社と同じで一番偉いのは社長かもしれないが、社内すべてを把握できないのと一緒だ。
「しかし辺鄙な村までわざわざ歩いていく必要はないと思うのじゃがのう。妾の授けたスキルを使って大金を稼いで、馬でも買えば良いのではないのか?」
「この世界に転生させてくれて便利なスキルをくれたのは感謝しているが、俺の自由に過ごしていいんだろう? 俺はこの世界をのんびりと旅することができればそれでいいんだよ」
俺はこの異世界に転生させてもらったわけだが、勇者になれとか何か使命があるわけではない。まあそんな役割だったら、こんなおっさんではなくもっと若いやつを選んでいるだろうな。女神曰く、地球とこの異世界でランダムに選ばれた死者を交換留学みたいな感じで一人ずつ転生させたらしい。
ありがたいことにすぐ死なないようなスキルというものまでもらった。こちらの世界は割と物騒だから非常に助かる。
「ふむ。ガクトがそう言うのなら別に構わぬがな。この調子でいろんな食材や料理を広げて欲しいのじゃ。……さっきの睾丸料理は広めなくてもよいぞ」
「いや、あれは俺の世界の料理というわけじゃないけれどな。まあ了解したよ」
使命ではないが、せっかく異世界から来たということで、可能なら俺の世界の料理の知識を広げてほしいと頼まれた。俺としても異世界のいろんな場所を旅したかったし、料理を作るのも得意だから引き受けた。
まさか死んだあとも旅ができるとは思わなかったので、この女神には感謝をしている。
「うむ。それではまた頼むのじゃ」
女神がそう言うと、真っ白な空間から元いた場所へと戻る。いつの間にか日が暮れており、目の前の鍋は空っぽになっている。あの空間に移動していても時間はそのまま経過する。
「さて、片付けをしてさっさと寝るか」
こんな草原で娯楽もないし、明かりをつけていたら虫や魔物が集まってくるから日が暮れたらすぐに寝て明日に備えた方がいい。その分朝は日が昇ったらすぐに出発するつもりだ。
一人で旅をするのも好きなのだが、たまに誰かと話したくなる時もある。こうして女神の息抜きとしてご飯を一緒に食べるのも悪くないので、またいい食材が手に入ったら誘うとしよう。
「おっと、忘れずにメモを取っておかないとな」
バックパックからメモ帳を取り出して、今回の鍋のレシピを記入しておく。レシピだけでなく、珍しい食材やすばらしい景色を見つけた時はその場所をメモしている。
この異世界には精密な地図がないので、どこに何があるかを記録しておくことは大事だ。それに食べたものを記載しておけば、改めて見直した時により鮮明にその味を思い出すことができるからな。
さて、明日中にはウェルダ村まで到着する。新しい村や街を訪れるのはとても楽しみだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「見えてきたな。あれがウェルダ村か」
ビルグの街を出発してから2日目、ようやく村が見えてきた。木の柵に囲われた村で、それほど大きくはないが、のどかで良さそうな村だ。
まだ日暮れまで少あるし、超健康スキルを持っているとはいえ俺の足でこれくらいなら普通の人でも2日あれば夜までには到着できるくらいの距離か。
「こんにちは~」
「こんにちは。あら、お客さんなんて珍しいわね」
村の入り口には見張りもいない。たぶんそれくらい平和な村なのだろう。
いきなり村に入るのではなく、入り口手前で村の中にいる40代くらいの女性を見つけて声を掛ける。さすがにこの格好で盗賊と間違えられることはないと思うが、この異世界ではそういった配慮は大事だ。
「旅をしているのですが、一晩か二晩泊めていただくことはできますか?」
「あらあら、こんな辺鄙な村へようこそ。もちろん大丈夫よ。ウェルダ村へようこそ」
「……ありがとうございます」
あまりにも警戒心がなく俺を迎い入れる女性。
むしろこっちの方がなにか罠でもあるのではと疑ってしまいそうだ。まあ、これまでは盗賊とは無縁だったのだろう。それに俺に限って言えば、仮に村の人たちが襲ってきたとしても問題ない。
さて、この村の名物料理とやらが楽しみだ。
「大袈裟なやつだな。味は満足していたのに」
「味の問題ではないのじゃ!」
睾丸ならそこまでゲテモノってわけじゃないんだけれどなあ。それにヴァインボアの睾丸は滋養に良い高級食材だ。
とはいえ、さすがに俺もこの世界では有名なオークのイチモツとかは止めておいたぞ。そっちは精力増強の効果もあるから、年はわからないが少女姿の女神に食べさせたらセクハラになってしまいそうだ。おっさんはコンプライアンスには敏感なのである。
ちなみに馬や牛のイチモツは元の世界でも食べられていたぞ。
「ほら、食後の果物もあるからこれを食べて元気を出せ」
「……今度も変な果物ではないのか?」
やれやれ。すっかり信用を失ってしまったようだ。まあ今更か。
それにこっちの世界だと悪臭が酷いドリアンを超えるような果物や動いて噛みついてくる果物なんかも存在するからな……。
「こいつはルガルの実だ。いろんな場所で売っているからさすがに知っているだろ?」
「うむっ、確かにこれなら安心じゃ。甘くておいしいのう」
そう言いながらルガルの実に噛りつく女神。
甘い果物を食べて多少機嫌が治ったようだ。相変わらずちょろい。
俺もこの世界に転生してきて知ったのだが、女神といっても全知全能というわけではないらしい。会社と同じで一番偉いのは社長かもしれないが、社内すべてを把握できないのと一緒だ。
「しかし辺鄙な村までわざわざ歩いていく必要はないと思うのじゃがのう。妾の授けたスキルを使って大金を稼いで、馬でも買えば良いのではないのか?」
「この世界に転生させてくれて便利なスキルをくれたのは感謝しているが、俺の自由に過ごしていいんだろう? 俺はこの世界をのんびりと旅することができればそれでいいんだよ」
俺はこの異世界に転生させてもらったわけだが、勇者になれとか何か使命があるわけではない。まあそんな役割だったら、こんなおっさんではなくもっと若いやつを選んでいるだろうな。女神曰く、地球とこの異世界でランダムに選ばれた死者を交換留学みたいな感じで一人ずつ転生させたらしい。
ありがたいことにすぐ死なないようなスキルというものまでもらった。こちらの世界は割と物騒だから非常に助かる。
「ふむ。ガクトがそう言うのなら別に構わぬがな。この調子でいろんな食材や料理を広げて欲しいのじゃ。……さっきの睾丸料理は広めなくてもよいぞ」
「いや、あれは俺の世界の料理というわけじゃないけれどな。まあ了解したよ」
使命ではないが、せっかく異世界から来たということで、可能なら俺の世界の料理の知識を広げてほしいと頼まれた。俺としても異世界のいろんな場所を旅したかったし、料理を作るのも得意だから引き受けた。
まさか死んだあとも旅ができるとは思わなかったので、この女神には感謝をしている。
「うむ。それではまた頼むのじゃ」
女神がそう言うと、真っ白な空間から元いた場所へと戻る。いつの間にか日が暮れており、目の前の鍋は空っぽになっている。あの空間に移動していても時間はそのまま経過する。
「さて、片付けをしてさっさと寝るか」
こんな草原で娯楽もないし、明かりをつけていたら虫や魔物が集まってくるから日が暮れたらすぐに寝て明日に備えた方がいい。その分朝は日が昇ったらすぐに出発するつもりだ。
一人で旅をするのも好きなのだが、たまに誰かと話したくなる時もある。こうして女神の息抜きとしてご飯を一緒に食べるのも悪くないので、またいい食材が手に入ったら誘うとしよう。
「おっと、忘れずにメモを取っておかないとな」
バックパックからメモ帳を取り出して、今回の鍋のレシピを記入しておく。レシピだけでなく、珍しい食材やすばらしい景色を見つけた時はその場所をメモしている。
この異世界には精密な地図がないので、どこに何があるかを記録しておくことは大事だ。それに食べたものを記載しておけば、改めて見直した時により鮮明にその味を思い出すことができるからな。
さて、明日中にはウェルダ村まで到着する。新しい村や街を訪れるのはとても楽しみだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「見えてきたな。あれがウェルダ村か」
ビルグの街を出発してから2日目、ようやく村が見えてきた。木の柵に囲われた村で、それほど大きくはないが、のどかで良さそうな村だ。
まだ日暮れまで少あるし、超健康スキルを持っているとはいえ俺の足でこれくらいなら普通の人でも2日あれば夜までには到着できるくらいの距離か。
「こんにちは~」
「こんにちは。あら、お客さんなんて珍しいわね」
村の入り口には見張りもいない。たぶんそれくらい平和な村なのだろう。
いきなり村に入るのではなく、入り口手前で村の中にいる40代くらいの女性を見つけて声を掛ける。さすがにこの格好で盗賊と間違えられることはないと思うが、この異世界ではそういった配慮は大事だ。
「旅をしているのですが、一晩か二晩泊めていただくことはできますか?」
「あらあら、こんな辺鄙な村へようこそ。もちろん大丈夫よ。ウェルダ村へようこそ」
「……ありがとうございます」
あまりにも警戒心がなく俺を迎い入れる女性。
むしろこっちの方がなにか罠でもあるのではと疑ってしまいそうだ。まあ、これまでは盗賊とは無縁だったのだろう。それに俺に限って言えば、仮に村の人たちが襲ってきたとしても問題ない。
さて、この村の名物料理とやらが楽しみだ。


