
ある日の夕方。仕事終わりの不動産屋の事務所でスマホが鳴る。画面には「南 春馬」。
「……なんやねん、今さら」
電話に出ると、元気すぎる声が響く。
「梅谷! 今日ちょっと時間ない?」
「は? なんでやねん」
「ええやん、ちょっとだけ、な?」
「なんやねん、急に」
「いや、お願いがあって……」
「お願い?」
「それは会ってから話すから! ほな7時に難波の駅前集合な!」
……ガチャ。一方的に電話は切れた。
「……何勝手に決めとんねん」
行くとは言ってないから行く必要はない……が、南の方から連絡がくるなんて思いもしなかった。だからぶつぶつ言いながらも、時間にはちゃんと現れる梅谷。心のどこかで何かを少しだけ期待していたのかもしれない……。
しかし、待ち合わせ場所に現れた南は、見知らぬ女の子を連れていた。
「おー、梅谷〜! こっちこっち〜!」
「……なんで女連れてんねん」
「ああ、この子、あきなっていうねん。ホスト時代のお客さんやってんけど、今はまぁ、友達や」
「ども〜、はじめまして〜。南くんから話聞いてます〜!」
「……はぁ」
「なぁ、実はあきなが引っ越し考えててなー。ええ物件ないか、ちょっと相談のってやってくれへん?」
「そんなんメールでええやんけ」
「まぁまぁ。お礼にご飯奢るから、な?」
梅谷が睨み返すと、南はふっと笑った。
「そんな怒らんとってや~。それに、お前やったら安心して任せられるやん?」
「……」
不覚にも心が、きゅ、と鳴った。
(そんなん言われたら、断られへんやん……)
「……はぁ。飲むだけやで。ちゃっちゃと終わらせるぞ」
「わかってるって〜」
そんなこんなで、3人は居酒屋へ。酒と食が進むと、案外あきなは話しやすいタイプの女の子で、南とは冗談を言い合いながら笑い合っている。ただ、それがなぜか、ひどく遠く感じる。
「梅谷くんってさ、南くんの……彼氏さんなん?」
「は!?」
「いやいや、ちゃうって。アイツはな〜、もうちょっとややこしい立ち位置やねん」
「ややこしいてなんやねん」
「ほら、怒った〜」
「怒ってへん」
(……なんやねん、ややこしいって)
笑い声の中、ひとり梅谷の胸だけが静かにざわついていた。
To be continued
