
金曜の夜、もう終電もとうに過ぎた頃。
「なぁ〜〜悠音、泊めてくれへん?」
酔っぱらった南が、梅谷の家の前でフラつきながら立っていた。
「……は?なんでここ知ってんねん」
「えへへ、昔お前に年賀状出したやろ〜覚えててん」
「お前、気持ち悪いぐらい記憶力ええな……ホテル行け」
「金、ない」
「はぁ……マジで、もう……」
梅谷は深いため息をつきながらドアを開けた。
「……しゃあないな。一晩だけやぞ」
「まじで! ありがとう、梅谷!」
しかし部屋に入ってすぐ、南はソファに倒れこみ、あっという間に寝落ちした。ほんまに人んち来て寝るだけってどうなん……と呆れながらも、梅谷は毛布をかけ、ベッドへ戻った。
◇◇◇◇◇翌朝◇◇◇◇◇
「……んん……」
うっすらと目を開けた南は、自分がベッドの中にいることに気づいた。
「……あれ? ソファで寝てた、はずやけど……」
目を向けた先、隣にはまだ寝息を立てている梅谷。布団の端を抱え込むように寝ていて、前髪がふわりと額にかかっていた。
「……あ、れ……?」
南の胸が、ドクン、と跳ねた。
(え、……なんか、こいつ……)
めっちゃ綺麗な顔してるやん……そういや、学生の頃。
『梅谷って、襲われたらしいで』
『でも殴り返して逆に泣かせたんやってw』
『女みたいやけど、ほんまは怖いんちゃうん?』
『せやけど、あの顔やったら襲われてもわからんでもないわw』
……あのときの噂話がなんとなく頭をよぎった。
「……んなアホな。なんで、そんなこと今思い出すんや」
そのとき、梅谷がふと身じろぎした。
「……ん……」
まぶたを開けて、隣に南がいるのを見た瞬間、ピクリと反応する。
「……南、なにお前、起きてたん……」
「おう、おはよ」
「……最悪な目覚めや」
「一緒に寝てもうて?」
「……勝手にベッド入ってきたのお前やからな」
「え、俺? マジ? 全然覚えてへん」
「ほんま、ガサツにもほどがあるわ」
むくれた顔で梅谷が体を起こすと、Tシャツの肩がずり落ちそうになって、慌てて引っ張り直した。
「で? 朝飯……どうすんの」
「え? 作ってくれるん?」
「はぁ? 誰が」
「いやいや、今のは作ってくれる流れやん?」
「だからって朝飯まで出す義理は……」
言いかけて、梅谷は小さくため息をついた。
「もうええわ……しゃあないな。パンとか冷凍とかでええやろ」
「できれば米がええな」
「うっさい」
梅谷はぶつぶつ文句を言いながらも、冷凍ご飯をあたため、味噌汁を作り始めた。そして数十分後。そう言って梅谷が出してきたのは、味噌汁と卵焼き、鮭、そして白ごはん。
「……え、うま……」
「黙って食え」
冷たい言葉とは裏腹に、梅谷の表情はどこかやさしかった。
To be continued
