
「春馬くん! やっば〜、めっちゃ久しぶり!」
「あー! 久美ちゃんやん! 元気してた?」
「してたしてた♡ ってかまた戻ってきてよ〜、みんな寂しがってんねんからぁ」
華やかな雰囲気の女の子に、笑顔を向ける南。ここは大阪ミナミの眠らない町。
「ほんまに、辞めたのもったいないよ。今でも伝説やで? 『口説き落としの南』って!」
「やめぇや……黒歴史やん、そんなん」
ふと、交差点の向こうでその光景を見ていた梅谷は、ピタリと足を止めた。
(……なんや、あの女)
キラキラしてて、軽くて、馴れ馴れしい。南が、あんなふうに誰かと笑い合うのを見たのは初めてだった。心の奥が、ざらっとした。このモヤモヤの正体に気付く前に、梅谷はその場から立ち去り、足早に帰路についた。
一方その夜の南の携帯には、珍しく梅谷から連絡が入る。
【……今日、誰とおったん】
少し間があいて、返ってきたメッセージ。
【え、何? 見てたん? まさか、ストーカー?】
【誰がストーカーや!】
すぐさま返信し、指が止まる。けれど、その後の言葉は抑えられなかった。
【……なんで、あいつと笑っとったん?】
既読がついても、すぐには返ってこない。やってもうた。言うつもりなんか、なかったのに。知らん女と話してるぐらい、どうでもいいはずやのに。
(なんで、こんなにざわざわすんねん)
【……ええ〜なんやその言い方……もしかして、梅谷、俺のこと好きなん?】
「……っ!」
スマホの画面を見た梅谷の手が、ビクッと震えた。
【アホかボケッ!!!】
ソッコーで送りつけたスタンプは、キレた猫がシャーッてしてるやつだった。南は、そのまま返信を返さなかった。けれどスマホを置いたあと、ふと天井を見上げて、ぽつりと呟いた。
「……好き、なわけないか」
笑いながら言ったはずのセリフが、やけに喉にひっかかっていた。
To be continued
