
「なぁ、これ……ほんまに、デートなんか?」
「せやで。付き合って初めてのちゃんとしたデートってやつや」
南は満面の笑みで言うが、横にいる梅谷はどこか落ち着かない様子だった。
「……高校の同級生と道頓堀デート。こんな未来、誰が想像してたんやろな」
「それ言うたら、ホテルで朝迎えたあの日が一番予想外やろ」
「アホか、黙れ」
いつもの軽口を交わしながら、ふたりは道頓堀を歩く。人波の中を肩が触れるか触れないかの距離で並びながら、映画館へと向かった。
******
観たのは、意外にもSF寄りのアクション映画。
「いやぁ〜、あの宇宙船のシーンやばなかった? 爆発音が腹に響いたもん」
「……まさかお前と映画の趣味合うとは思わんかったわ。普通におもろかった」
ふたりしてポップコーン片手に盛り上がるその光景は、誰が見ても立派なカップルだった。映画館を出たあとは、川沿いを少し歩いて小腹が空いたので、たこ焼き屋へ。
「お、このたこ焼き屋、よう行くねん。うまいで」
南が指さしたのは、道頓堀川沿いに並ぶ屋台の一つ。店頭には、赤髪の青年が腕を組んで立っていた。その青年と目が合った瞬間、彼の眉がピクリと動く。
「……お前、また来たんか。ホスト崩れ」
南は吹き出しながら笑う。
「相変わらずやな〜。顔見たらちょっとは愛想ちょうだいや、瑛士くん」
「愛想は売りもんちゃう。ソースは?」
「濃いめで!」
南がこっそり耳元で囁く。
「ここのたこ焼き、人はツンケンやけど味はうまいんやで」
梅谷は無言でたこ焼きを受け取りながら、「そんなん知らんわ」とでも言いたげな顔をした。ソースとかつおぶしの香り、熱々のたこ焼きをほおばりながら、ふたりは並んでベンチに座った。心地よい風と、じんわり熱いソースの味。そして、そわそわと胸の奥で高鳴る何か。
「なぁ、悠音」
「……んー?」
「今日って……泊まってくん、やんな?」
「……知らん。お前んち、遠いし」
「けーへんの? 部屋、ちゃんと片づけといたし」
「……ああ、もう、言うなや。こっちが意識するやろ」
「ほな、意識させとく」
南の笑顔は、どこまでも無邪気で、どこまでも確信犯だった。梅谷は赤くなった顔を隠すように、たこ焼きの舟に視線を落とす。この夜が、ただのデートじゃ終わらないことを、ふたりとも、もうわかっていた。
To be continued

