走り出した香澄だったが、いくらメダルを取ったスポーツ選手だろうが、追いつけないような差がすでに開いていた。普通なら間に合うはずもない。
ただそれは、普通ならの話。普通ではないからこそ、香澄は祓い屋をしているのだ。
(直線的にをそのまま進んでますね。なら、走るほうが早い)
香澄は霊力で自分の脚力を強化。一気に加速しつつ、車へとひたすらに向かっていく。
新幹線並み、とはいかないものの、自動車に追いつくには充分すぎるスピードで走りながら、どうやって退治するかを考える。
(……上手くやるとは言ったものの、上手くやるって何でしょうね。まぁ、なるようにしかなりません。死んだらそこまで。桂様のお手を煩わせずに済んでラッキーくらいで頑張りましょう)
車に追いついた香澄はとりあえず跳躍し、車の上に乗る。妖怪はいきなり現れた香澄に気づき、ギョッと目を見開く。
一瞬、妖怪の速度が落ち、車と接触しそうになるがすぐに持ち直し速度を上げていく。どうやら逃げるようだった。
(賢い選択ですね。貴方では私には勝てないでしょうから。逃げて、潜伏して、ほとぼりが冷めたらまた同じことをすればいい。正しいです)
確かに最善手だと香澄は頷く。もちろんそれができればの話ではある。
香澄は車の上で可能な限り助走をつけて飛ぶ。転がってダメージを殺すと復帰に時間がかかるので、両足でコンクリートの上に着地する。霊力で強化していても痛みは感じるが、なんとか耐えて妖怪を追いかけた。
ぐんぐんとスピードを上げて、何とか見失わないように追走する。しかし、香澄の方を見もせずに、逃亡に全力をつくされる状況が続けばそのうち撒かれてしまう。
(こういう時に、紫風のような術を使えると楽なんですけどね)
出来ないことを考えても仕方ない。手っ取り早い手段が使えないのなら、他の手を使うだけだ。
香澄は途中で別の道に入る。妖怪はその姿を見ておらず、振り返っ時に香澄はすでにいない。
「撒いたか。しつこい人間だったんだぞ」
怒り気味の声は闇に溶けたか、と思われたがそうでなかった。
それを聞く存在が二つあったからだ。
一つはいつの間にかビルの屋上へと移動していた桂。その手はいつでも術を行使できるようにしてあった。
そしてもう一つ。振り返っていた妖怪と背後から静かに、それでいて素早い動きで闇から現れる何か。
ほぼほぼ闇と同一化しており、妖怪はそれに気づくのに一瞬遅れてしまう。
その一瞬があれば、彼女にとっては充分だった。
首ではなく、一本しかない足に光の一閃。と同時に赤い飛沫が舞う。
「うぎゃあぁぁ!!」
体を支えられなくなった妖怪は、赤い水たまりができたコンクリートの上に崩れ落ちる。
ドチャ、ビチャ、と気味の悪い音と痛みによる悲鳴。不協和音に耳を防ぐことはなく、香澄は妖怪に近づき、しゃがんで目を合わせた。
「こんにちは」
「お、おまえ……し、つこ……いんだぞ……!」
痛みのせいか上手く喋れない妖怪。香澄は構うことなく「提案なのですが」と話し始める。
「自首しませんか。自首して罪を償うと約束すれば、貴方をこれ以上攻撃しません。それなりに被害が出ているので罪状は重くなってしまうでしょうが、祓い屋に殺されるよりはマシなのではないですか」
「……わ、かっ……た……つぐな、うから……たす……け……」
「そうですか」
立ち上がって、刀を鞘にしまう香澄、を視界に入れた瞬間。妖怪は力を振り絞り、片腕で体を支えながらもう片方の手で香澄の頭を狙う。
完全な奇襲。油断を誘い、完璧なタイミングで攻撃を仕掛けた。妖怪は苦しみながらも勝ちを確信し、ニヤリと笑みを浮かべる。
(誰が、人間風情への罪を償うか。そもそも人間をおちょくるのの何が悪い。下等で弱い。愚かで進歩のない。そんな生物を遊ぶことへの罪があるものか。俺は一度も、自分で攻撃をしたことなどない。怪我をした、死んだ。それはそいつらの責任だ。俺に一切の非はない。……例え祓い屋に従わず、この怪我のせいで死ぬのだとしても、こいつも一緒に地獄に落とせるのなら後悔などない!!)
手から伝わる肉を潰す感触。骨を砕く心地のよい音。それらを期待していた妖怪。
しかしそれは叶わなかった。その攻撃は鞘に収められている刀で防がれたからだ。
「……なっ!」
「最後にいいことを教えてあげます。貴方の取った選択は、私が二番目に多く見てきた選択です。とてもつまらない。貴方と同じです」
「おれ……が、つま……らない……だ、と……」
「えぇ、自分で人間を害すのではなく、間接的な手段を取る。言い逃れができるよう。自分に罪はないというような手段。罪を背負う覚悟もない、つまらない妖怪。ほら、貴方とそっくりです」
「き、さまぁ……!! よ、うかいに……ありも、しない、罪を……せおわ、せている……のは、お、まえらだと……言う、のに」
「少なくとも、貴方はあおり運転のような手段を用い、悪意を持って人に迷惑をかけた。この行為は罪です。そんな貴方にありもしない罪を背負わせていると、祓い屋を糾弾する資格はありません。……苦しめすぎましたね。安らかに眠ってください。どうか貴方の罪が地獄で贖われますように」
それだけを言い、首を刀で両断する。ころりと転がる頭がこれ以上、何かを言うことはなかった。
香澄は刀についた血を拭い、ビルの上を見上げる。ちょうど桂が上から降りてくるところだった。降りてくるというよりは、振ってくるという方が正しい光景だったが。
流石に香澄もあの高さから落ちればただでは済まない。妖怪と対峙していた時とは違い、心配そうな色が瞳に滲むが、すぐに杞憂だったと知ることになる。
地面に近づいた辺りで減速し、衝撃もなく着地。車の上から着地し、傷みに耐えていた香澄とは大違いだった。
「どうやったんですか」
「なに、周りの重力を術で弄っただけだ。大したことではない」
人間からすれば大したことだ。術に秀でた紫風にもできないだろう。本人に言えば「やろうとしたことがねぇよ」と突っ込まれそうだ。その言い方をする時は、大概やろうとすればできるのだが。
若き術のエキスパート紫風は置いておくとして。香澄にとっては、天上の御使い如き凄技だった。
「……術の指導ってしてくれますか」
「人間と妖怪では要領が違う。人間に師事したほうが良い。……気になっていたんだか、お前は術を使えないのか?」
「やはり気づかれますよね」
香澄は自分の手をじっと見つつ、縦に首を振る。
「お前が、俺に寄越されたのはそのせいか」
「正確に言えば少し違います。私もまともに術が扱えませんが、姉もそうです」
「それは……」
桂が言いたことはわかる。祓い屋が家を継ぐ条件の一つに、家に伝わる術が扱える事、というのがある。
香澄も、姉の手毬も術を使えないのなら、どちらも後継者として相応しくないのではないのか。術を使える後継を残せないと不味いのではないのか。
桂は心配をしてくれているのだ。真面目で優しい妖怪。この妖怪は……いや、あの家で香澄が出会った妖怪は、今まで見てきた妖怪たちとは全然違っていた。
だから、話しても大丈夫と確信していたからこそ、香澄は倉橋家の抱える問題の一つの話を始めたのだった。
「姉は、強くありません。素質としては並み。同じ術が使えない、しかし片方はそれでも強い。周りが後継に望むのはどちらか。現当主は簡単に想像ついたんです。そして後継に望まれる人物と、後継にしたい人物は別だった。私が貴方のところに来たのは、それだけが理由です」
「お前が術を扱えない理由はなんだ。霊力の量が理由ではないだろ」
「……分かりません。昔は使えたんですけどね」
昔と同じように簡単な結界術を使ってみようとするが、やはり何もできない。子供の頃は自分を守る結界くらいは作れた。なのに今は壁の一つ作り出せない。
「今度、お前の体を調べてやる」
「体を……?」
「使えていたものが使えなくなったのなら、そこには必ず理由があるはずだ。絶対に分かるとは言えないが、もしかしたら原因が分かるかもしれない」
「本当ですか?」
「嘘をついてどうする」
桂の言う通り、嘘をつく理由などない。それにこの妖怪は、誰かを傷つける嘘は極力避けるだろう。
術が使えなくなった理由。それが知れるのなら、知りたい。今の香澄は倉橋家を出ているから、術が使えるようになったところで継承に問題はない。何があろうとも、家を継ぐのは手毬だ。
(そう、私が術を使えるようになっても、お姉様が家を継ぐのは確定しています。そうすれば伯父様も伯母様もお姉様もみんな幸せ。だから大丈夫です)
思い出すのは、幼い頃に自分に向けられていた姉の笑顔。伯父と伯母の笑顔は見たことがなかったので、想像もつかなかった。けれど、きっと今は倉橋家の人たちは幸せのはずだ。香澄が自分の事実を追いかけても問題はないだろう。
「じゃあお願いします」
言葉と同時に服を脱ぎ始めようとする香澄。
「おい! なんで服を脱ぐ!?」
「え、体を調べるのなら、衣服は邪魔かと……」
「服を脱ぐ必要はない! それと、ここでやるわけがないだろ!」
「そうなんですね」
香澄の本音としては、すぐにでも調べてほしかったが、準備とかもあるのかもしれない。お願いする立場なので、無理強いする気はなかった。
「とりあえず、今日はもう遅い。さっさと帰るぞ。明日も学校だろう」
「ですね。連絡だけして帰りましょう」
妖怪省に電話をし、依頼をこなしたことを話してから二人揃って帰路につく。
香澄の表情は、長年の疑問が晴れるかもしれない希望で明るく。対して桂の顔は疑問で曇っていた。
ただそれは、普通ならの話。普通ではないからこそ、香澄は祓い屋をしているのだ。
(直線的にをそのまま進んでますね。なら、走るほうが早い)
香澄は霊力で自分の脚力を強化。一気に加速しつつ、車へとひたすらに向かっていく。
新幹線並み、とはいかないものの、自動車に追いつくには充分すぎるスピードで走りながら、どうやって退治するかを考える。
(……上手くやるとは言ったものの、上手くやるって何でしょうね。まぁ、なるようにしかなりません。死んだらそこまで。桂様のお手を煩わせずに済んでラッキーくらいで頑張りましょう)
車に追いついた香澄はとりあえず跳躍し、車の上に乗る。妖怪はいきなり現れた香澄に気づき、ギョッと目を見開く。
一瞬、妖怪の速度が落ち、車と接触しそうになるがすぐに持ち直し速度を上げていく。どうやら逃げるようだった。
(賢い選択ですね。貴方では私には勝てないでしょうから。逃げて、潜伏して、ほとぼりが冷めたらまた同じことをすればいい。正しいです)
確かに最善手だと香澄は頷く。もちろんそれができればの話ではある。
香澄は車の上で可能な限り助走をつけて飛ぶ。転がってダメージを殺すと復帰に時間がかかるので、両足でコンクリートの上に着地する。霊力で強化していても痛みは感じるが、なんとか耐えて妖怪を追いかけた。
ぐんぐんとスピードを上げて、何とか見失わないように追走する。しかし、香澄の方を見もせずに、逃亡に全力をつくされる状況が続けばそのうち撒かれてしまう。
(こういう時に、紫風のような術を使えると楽なんですけどね)
出来ないことを考えても仕方ない。手っ取り早い手段が使えないのなら、他の手を使うだけだ。
香澄は途中で別の道に入る。妖怪はその姿を見ておらず、振り返っ時に香澄はすでにいない。
「撒いたか。しつこい人間だったんだぞ」
怒り気味の声は闇に溶けたか、と思われたがそうでなかった。
それを聞く存在が二つあったからだ。
一つはいつの間にかビルの屋上へと移動していた桂。その手はいつでも術を行使できるようにしてあった。
そしてもう一つ。振り返っていた妖怪と背後から静かに、それでいて素早い動きで闇から現れる何か。
ほぼほぼ闇と同一化しており、妖怪はそれに気づくのに一瞬遅れてしまう。
その一瞬があれば、彼女にとっては充分だった。
首ではなく、一本しかない足に光の一閃。と同時に赤い飛沫が舞う。
「うぎゃあぁぁ!!」
体を支えられなくなった妖怪は、赤い水たまりができたコンクリートの上に崩れ落ちる。
ドチャ、ビチャ、と気味の悪い音と痛みによる悲鳴。不協和音に耳を防ぐことはなく、香澄は妖怪に近づき、しゃがんで目を合わせた。
「こんにちは」
「お、おまえ……し、つこ……いんだぞ……!」
痛みのせいか上手く喋れない妖怪。香澄は構うことなく「提案なのですが」と話し始める。
「自首しませんか。自首して罪を償うと約束すれば、貴方をこれ以上攻撃しません。それなりに被害が出ているので罪状は重くなってしまうでしょうが、祓い屋に殺されるよりはマシなのではないですか」
「……わ、かっ……た……つぐな、うから……たす……け……」
「そうですか」
立ち上がって、刀を鞘にしまう香澄、を視界に入れた瞬間。妖怪は力を振り絞り、片腕で体を支えながらもう片方の手で香澄の頭を狙う。
完全な奇襲。油断を誘い、完璧なタイミングで攻撃を仕掛けた。妖怪は苦しみながらも勝ちを確信し、ニヤリと笑みを浮かべる。
(誰が、人間風情への罪を償うか。そもそも人間をおちょくるのの何が悪い。下等で弱い。愚かで進歩のない。そんな生物を遊ぶことへの罪があるものか。俺は一度も、自分で攻撃をしたことなどない。怪我をした、死んだ。それはそいつらの責任だ。俺に一切の非はない。……例え祓い屋に従わず、この怪我のせいで死ぬのだとしても、こいつも一緒に地獄に落とせるのなら後悔などない!!)
手から伝わる肉を潰す感触。骨を砕く心地のよい音。それらを期待していた妖怪。
しかしそれは叶わなかった。その攻撃は鞘に収められている刀で防がれたからだ。
「……なっ!」
「最後にいいことを教えてあげます。貴方の取った選択は、私が二番目に多く見てきた選択です。とてもつまらない。貴方と同じです」
「おれ……が、つま……らない……だ、と……」
「えぇ、自分で人間を害すのではなく、間接的な手段を取る。言い逃れができるよう。自分に罪はないというような手段。罪を背負う覚悟もない、つまらない妖怪。ほら、貴方とそっくりです」
「き、さまぁ……!! よ、うかいに……ありも、しない、罪を……せおわ、せている……のは、お、まえらだと……言う、のに」
「少なくとも、貴方はあおり運転のような手段を用い、悪意を持って人に迷惑をかけた。この行為は罪です。そんな貴方にありもしない罪を背負わせていると、祓い屋を糾弾する資格はありません。……苦しめすぎましたね。安らかに眠ってください。どうか貴方の罪が地獄で贖われますように」
それだけを言い、首を刀で両断する。ころりと転がる頭がこれ以上、何かを言うことはなかった。
香澄は刀についた血を拭い、ビルの上を見上げる。ちょうど桂が上から降りてくるところだった。降りてくるというよりは、振ってくるという方が正しい光景だったが。
流石に香澄もあの高さから落ちればただでは済まない。妖怪と対峙していた時とは違い、心配そうな色が瞳に滲むが、すぐに杞憂だったと知ることになる。
地面に近づいた辺りで減速し、衝撃もなく着地。車の上から着地し、傷みに耐えていた香澄とは大違いだった。
「どうやったんですか」
「なに、周りの重力を術で弄っただけだ。大したことではない」
人間からすれば大したことだ。術に秀でた紫風にもできないだろう。本人に言えば「やろうとしたことがねぇよ」と突っ込まれそうだ。その言い方をする時は、大概やろうとすればできるのだが。
若き術のエキスパート紫風は置いておくとして。香澄にとっては、天上の御使い如き凄技だった。
「……術の指導ってしてくれますか」
「人間と妖怪では要領が違う。人間に師事したほうが良い。……気になっていたんだか、お前は術を使えないのか?」
「やはり気づかれますよね」
香澄は自分の手をじっと見つつ、縦に首を振る。
「お前が、俺に寄越されたのはそのせいか」
「正確に言えば少し違います。私もまともに術が扱えませんが、姉もそうです」
「それは……」
桂が言いたことはわかる。祓い屋が家を継ぐ条件の一つに、家に伝わる術が扱える事、というのがある。
香澄も、姉の手毬も術を使えないのなら、どちらも後継者として相応しくないのではないのか。術を使える後継を残せないと不味いのではないのか。
桂は心配をしてくれているのだ。真面目で優しい妖怪。この妖怪は……いや、あの家で香澄が出会った妖怪は、今まで見てきた妖怪たちとは全然違っていた。
だから、話しても大丈夫と確信していたからこそ、香澄は倉橋家の抱える問題の一つの話を始めたのだった。
「姉は、強くありません。素質としては並み。同じ術が使えない、しかし片方はそれでも強い。周りが後継に望むのはどちらか。現当主は簡単に想像ついたんです。そして後継に望まれる人物と、後継にしたい人物は別だった。私が貴方のところに来たのは、それだけが理由です」
「お前が術を扱えない理由はなんだ。霊力の量が理由ではないだろ」
「……分かりません。昔は使えたんですけどね」
昔と同じように簡単な結界術を使ってみようとするが、やはり何もできない。子供の頃は自分を守る結界くらいは作れた。なのに今は壁の一つ作り出せない。
「今度、お前の体を調べてやる」
「体を……?」
「使えていたものが使えなくなったのなら、そこには必ず理由があるはずだ。絶対に分かるとは言えないが、もしかしたら原因が分かるかもしれない」
「本当ですか?」
「嘘をついてどうする」
桂の言う通り、嘘をつく理由などない。それにこの妖怪は、誰かを傷つける嘘は極力避けるだろう。
術が使えなくなった理由。それが知れるのなら、知りたい。今の香澄は倉橋家を出ているから、術が使えるようになったところで継承に問題はない。何があろうとも、家を継ぐのは手毬だ。
(そう、私が術を使えるようになっても、お姉様が家を継ぐのは確定しています。そうすれば伯父様も伯母様もお姉様もみんな幸せ。だから大丈夫です)
思い出すのは、幼い頃に自分に向けられていた姉の笑顔。伯父と伯母の笑顔は見たことがなかったので、想像もつかなかった。けれど、きっと今は倉橋家の人たちは幸せのはずだ。香澄が自分の事実を追いかけても問題はないだろう。
「じゃあお願いします」
言葉と同時に服を脱ぎ始めようとする香澄。
「おい! なんで服を脱ぐ!?」
「え、体を調べるのなら、衣服は邪魔かと……」
「服を脱ぐ必要はない! それと、ここでやるわけがないだろ!」
「そうなんですね」
香澄の本音としては、すぐにでも調べてほしかったが、準備とかもあるのかもしれない。お願いする立場なので、無理強いする気はなかった。
「とりあえず、今日はもう遅い。さっさと帰るぞ。明日も学校だろう」
「ですね。連絡だけして帰りましょう」
妖怪省に電話をし、依頼をこなしたことを話してから二人揃って帰路につく。
香澄の表情は、長年の疑問が晴れるかもしれない希望で明るく。対して桂の顔は疑問で曇っていた。

