翌朝、僕とナッシュさん、それにスラちゃん達は、馬車に乗って辺境伯家から国境へと向かった。
帝国からの使節団が到着するにはまだ早いが、早めに向かっても何も問題はない。
「到着したらピーター様に挨拶をして、帝国の陣地にも挨拶に行きます。こんな感じでスケジュールはいいですか?」
「問題ないだろう。まあ、あいつの事だから上手くやるはずさ」
馬車の中で、僕はナッシュさんとあれこれ話をした。
ナッシュさんもピーター様の事を知っているから、素行はともかくとして手腕は認めていた。
そして、スラちゃんとピーちゃん達は、まだピーター様に会ったことがないギンちゃんにあれこれ教えていた。
ギンちゃんはそんな凄い人なのに変態なのって疑問に思っていたが、ピーター様は本当に凄いんですよ。
ギンちゃんも、会えば分かりますよ。
こうして、馬車内はいつの間にかピーター様の話題一色になっていた。
賑やかに話をしていたら、僕達を乗せた馬車はあっという間に国境に到着した。
「皆さま、お待ちしておりました。司令官室へご案内します」
ちょうど昨年採用の兵が研修で国境に来ており、勉強も兼ねて僕達の出迎えをした。
ヘルナンデス様の息子さんもいたけど、真面目に仕事をしていた。
僕もひと安心しながら、兵の案内を受けながら司令官室へと向かった。
コンコン。
「失礼します。アスター伯爵様御一行が到着いたしました」
「入りたまえ」
ドア越しのこの声を聞くだけで、ピーター様だと直ぐに分かりますね。
身だしなみを軽く整えて、僕達は司令官室へと入った。
「「失礼します」」
「二人とも、よく来た。座るよう……」
ピーター様は、僕達を出迎えるなり思わず固まっていた。
というか、僕の肩に乗っているギンちゃんに目が釘付けだ。
「ケンよ、そのスライムは新しいものか?」
「ギンちゃんです。前からいるのですけど、今回一緒に連れてきました。謁見時に恨みを持った貴族が執務室に突撃した時に、食い止めて拘束したスライムです」
「その件は私も聞いているが、てっきりスラちゃんがやったのかと思ったぞ」
ピーター様は、俄然ギンちゃんに興味を持った様だ。
そして、何を血迷ったのかギンちゃんはピーター様の手の上にぴょんと飛び乗ったのだ。
ギンちゃんは触手をふりふりしてピーター様に挨拶をしていたが、余裕そうな態度もここまでだった。
スリスリスリ。
「おお、何とも面白い感触だ。金属っぽい見た目なのにスライムなのか」
何と、ピーター様はギンちゃんに頬ずりを始めたのだ。
確か、前にスラちゃんも味わったというあれだ。
ギンちゃんは助けてという表情で僕を見たが、残念ながら僕ではピーター様を止められない。
「あいつ、昔から変わらないな……」
ナッシュさんも、どこか遠い目でピーター様の事を見ていた。
どうやら、新兵の頃からあんな癖があったらしい。
その間も、ギンちゃんは断末魔の悲鳴をあげているような、そんな表情だった。
「ピーター様、そこまでです」
すぱーん!
「あたっ!?」
ここで、待ってましたと言わんばかりにニーナさんが巨大なハリセンでピーター様の頭を遠慮なくぶっ叩いた。
うーん、このやり取りも相変わらずだ。
そして、ギンちゃんは一目散に僕の服の胸ポケットに避難した。
きっとギンちゃんは、今頃こんなはずではなかったと号泣しているはずだ。
「二人のやり取りも相変わらずだな。ははは……」
頭を押さえているピーター様とハリセンを手にしているニーナさんの事を、ナッシュさんは遠い目で見ていた。
とはいえ、巻き込まれるのが嫌なのでナッシュさんも特にツッコむ事はしなかった。
その間に僕達はソファーに座り、ニーナさんが何事もなかったかのようにお茶を出してくれた。
あー、お茶がとても美味しい……
「ナッシュ、なに和んでいるんだ?」
ピーター様は、何故か僕ではなくナッシュさんに話しかけた。
でも、ナッシュさんの視界の中にピーター様はいなかった。
「うめー、やっぱりニーナのお茶は格別だ」
「ナッシュ様、恐縮です」
「おい、二人とも私を無視するな!」
ナッシュさんとニーナさんは、慣れているのかピーター様を無視していた。
うん、僕も気にしないようにしよう。
「全く、酷いものだ。ああ、帝国の陣地に挨拶に行く件なら既に話をつけている。ケンなら大歓迎だと、帝国側も言っていた」
ピーター様は、頭をさすりながら自席についた。
流石、変態だけど仕事は超一流だ。
馬車内からあれこれすると伝えただけなのにね。
「帝国の使節団の出迎えには、私も同席する。流石に帝国の使節団にあんな事はしない」
「当然です。王国の国境警備司令官が変態だと知られたらたまったものではありません」
「ニーナ、もっとオブラートに包んで発言せよ」
婚約者同士の残念な会話に、僕とナッシュさんはカラ笑いするしかなかった。
話自体はこれで終わったのだが、ギンちゃんはずっと僕の胸ポケットの中でブルブルと震えていたのだった。
帝国からの使節団が到着するにはまだ早いが、早めに向かっても何も問題はない。
「到着したらピーター様に挨拶をして、帝国の陣地にも挨拶に行きます。こんな感じでスケジュールはいいですか?」
「問題ないだろう。まあ、あいつの事だから上手くやるはずさ」
馬車の中で、僕はナッシュさんとあれこれ話をした。
ナッシュさんもピーター様の事を知っているから、素行はともかくとして手腕は認めていた。
そして、スラちゃんとピーちゃん達は、まだピーター様に会ったことがないギンちゃんにあれこれ教えていた。
ギンちゃんはそんな凄い人なのに変態なのって疑問に思っていたが、ピーター様は本当に凄いんですよ。
ギンちゃんも、会えば分かりますよ。
こうして、馬車内はいつの間にかピーター様の話題一色になっていた。
賑やかに話をしていたら、僕達を乗せた馬車はあっという間に国境に到着した。
「皆さま、お待ちしておりました。司令官室へご案内します」
ちょうど昨年採用の兵が研修で国境に来ており、勉強も兼ねて僕達の出迎えをした。
ヘルナンデス様の息子さんもいたけど、真面目に仕事をしていた。
僕もひと安心しながら、兵の案内を受けながら司令官室へと向かった。
コンコン。
「失礼します。アスター伯爵様御一行が到着いたしました」
「入りたまえ」
ドア越しのこの声を聞くだけで、ピーター様だと直ぐに分かりますね。
身だしなみを軽く整えて、僕達は司令官室へと入った。
「「失礼します」」
「二人とも、よく来た。座るよう……」
ピーター様は、僕達を出迎えるなり思わず固まっていた。
というか、僕の肩に乗っているギンちゃんに目が釘付けだ。
「ケンよ、そのスライムは新しいものか?」
「ギンちゃんです。前からいるのですけど、今回一緒に連れてきました。謁見時に恨みを持った貴族が執務室に突撃した時に、食い止めて拘束したスライムです」
「その件は私も聞いているが、てっきりスラちゃんがやったのかと思ったぞ」
ピーター様は、俄然ギンちゃんに興味を持った様だ。
そして、何を血迷ったのかギンちゃんはピーター様の手の上にぴょんと飛び乗ったのだ。
ギンちゃんは触手をふりふりしてピーター様に挨拶をしていたが、余裕そうな態度もここまでだった。
スリスリスリ。
「おお、何とも面白い感触だ。金属っぽい見た目なのにスライムなのか」
何と、ピーター様はギンちゃんに頬ずりを始めたのだ。
確か、前にスラちゃんも味わったというあれだ。
ギンちゃんは助けてという表情で僕を見たが、残念ながら僕ではピーター様を止められない。
「あいつ、昔から変わらないな……」
ナッシュさんも、どこか遠い目でピーター様の事を見ていた。
どうやら、新兵の頃からあんな癖があったらしい。
その間も、ギンちゃんは断末魔の悲鳴をあげているような、そんな表情だった。
「ピーター様、そこまでです」
すぱーん!
「あたっ!?」
ここで、待ってましたと言わんばかりにニーナさんが巨大なハリセンでピーター様の頭を遠慮なくぶっ叩いた。
うーん、このやり取りも相変わらずだ。
そして、ギンちゃんは一目散に僕の服の胸ポケットに避難した。
きっとギンちゃんは、今頃こんなはずではなかったと号泣しているはずだ。
「二人のやり取りも相変わらずだな。ははは……」
頭を押さえているピーター様とハリセンを手にしているニーナさんの事を、ナッシュさんは遠い目で見ていた。
とはいえ、巻き込まれるのが嫌なのでナッシュさんも特にツッコむ事はしなかった。
その間に僕達はソファーに座り、ニーナさんが何事もなかったかのようにお茶を出してくれた。
あー、お茶がとても美味しい……
「ナッシュ、なに和んでいるんだ?」
ピーター様は、何故か僕ではなくナッシュさんに話しかけた。
でも、ナッシュさんの視界の中にピーター様はいなかった。
「うめー、やっぱりニーナのお茶は格別だ」
「ナッシュ様、恐縮です」
「おい、二人とも私を無視するな!」
ナッシュさんとニーナさんは、慣れているのかピーター様を無視していた。
うん、僕も気にしないようにしよう。
「全く、酷いものだ。ああ、帝国の陣地に挨拶に行く件なら既に話をつけている。ケンなら大歓迎だと、帝国側も言っていた」
ピーター様は、頭をさすりながら自席についた。
流石、変態だけど仕事は超一流だ。
馬車内からあれこれすると伝えただけなのにね。
「帝国の使節団の出迎えには、私も同席する。流石に帝国の使節団にあんな事はしない」
「当然です。王国の国境警備司令官が変態だと知られたらたまったものではありません」
「ニーナ、もっとオブラートに包んで発言せよ」
婚約者同士の残念な会話に、僕とナッシュさんはカラ笑いするしかなかった。
話自体はこれで終わったのだが、ギンちゃんはずっと僕の胸ポケットの中でブルブルと震えていたのだった。


