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 お昼ご飯を食べ終えると、列に並ぶ人も少なくなった。
 夕方になると、仕事を終えた人達が来るからまた忙しくなる。
 そんな中、僕とナッシュさんの通信用魔導具にある連絡が入った。
 スラちゃんの通信用魔導具にも、同じ連絡が入った。
 僕、スラちゃん、ナッシュさんは、コクリと頷いた。

 ザッザッザッ。

「「「「「な、何だ何だ?」」」」」

 スラム街の教会前に多数の軍の部隊が到着し、更に教会の聖騎士団までやってきた。
 物々しい雰囲気に、列に並んでいる人からどよめきが起きた。
 大丈夫、何もしていない人はスルーで良いですよ。
 ここに並んでいる人達は、スラちゃんチェックを通過した人達ですから。
 そして、部隊の偉い人が僕とナッシュさんの前にやってきた。

「部隊到着しました。只今より、作戦を実行します」
「よし。速やかに実行するように」
「はっ」

 ナッシュさんの指示を受け、部隊は直ぐに作戦の実行に入った。
 さて、僕も動かないと。

「みんな、お願いね」
「「「「ピィ!」」」」

 ピーちゃん達も、一斉にスラム街へと飛び立った。
 そして、ピーちゃん達がスラム街に飛び立って五分後、遂に作戦実行となった。

 シュイン、バリバリバリ!

「「「「「ウギャー!」」」」」

 スラム街のあちらこちらで雷撃の閃光が走り、同時に多くの叫び声が聞こえた。
 勿論、ピーちゃん達とミカンちゃんの雷魔法だ。
 雷撃の閃光が消えると同時に、一気に軍が犯罪組織のアジトに突入した。
 午前中のスラちゃん達の潜入で、魔法を放っていいのかどうかを確認していたのだ。
 万が一、爆発型の魔導具なんてあったら大変だ。
 幸いにして危険なものはなかったので、一気に制圧する事にしたのだ。

「「「「「あばばばば……」」」」」
「おい、担架をもっと持ってこい!」
「さっさと運ぶぞ!」

 兵が犯罪者を担架に乗せる手間はあるけど、その犯罪者が全く動けないので安全そのものだ。
 複数個所から犯罪者が運ばれて行き、護送用の馬車に次々と運び込まれた。
 ここまでは通常の犯罪組織の制圧なのだが、今日の目的は犯罪組織の制圧だけではない。

「「「「「うわーん!」」」」」
「もう大丈夫よ。安心して」

 女性兵が、犯罪組織の拠点から多数の子どもを保護してきた。
 どの子も、痩せこけていてボロボロの格好だ。
 保護した子どもは次々と馬車に乗せられて、大教会へと向かった。
 実は、今日の作戦その一はこの子ども達の救出作戦だった。
 そして、僕、スラちゃん、ナッシュさんの通信用魔導具にある連絡が入った。
 僕達は顔を見合わせるとコクリと頷き、そして聖騎士と共に教会の中に入った。

 ギギギ……

「これは皆さまお揃いで。いったいどうされたかな?」

 教会の中には、朝挨拶をした年配の聖職者がいた。
 しかし年配の聖職者の手には旅用のバッグが握られており、更に裏口の扉に手をかけていた。
 ひと目見て、教会から逃走しようとしていたと分かる。
 ナッシュさんは、厳しい表情のまま年配の聖職者に声をかけた。

「おや、裏口の扉に手をかけてどうしたのですか? まあ、教会の周囲を兵が囲んでいるので、逃走は不可能ですけどね」
「ぐっ、くそ!」

 年配の聖職者は、逃げられないと悟ったのからしくないセリフを吐き捨てた。
 そして、僕達はゆっくりと年配の聖職者に近づいた。
 ナッシュさんは、厳しい表情で衝撃的な事実を言ったのだ。

「まさか、聖職者とあろうものが子どもを食い物にしていたとはな。子どもを保護したとして教会から補助金を受け取り、実際には犯罪組織に子どもを売り渡した。その犯罪者組織からも、金を受け取っていたとはな」
「なっ!?」

 年配の聖職者は何でその情報を知っているのかと驚愕の表情をしていたが、これは捕まえた犯罪者の供述などから情報を得ていた。
 スラちゃん達も偵察を手伝い、証拠を集めていた。
 教会の不祥事としては、ここ数年でも最大規模だろう。

「ああ、協力していた聖職者は全て捕まえたぞ。聖職者というよりかは、金の亡者だな」
「うるさい! どうせいずれ死ぬガキなんだ。有効活用しただけ、ありがたいと思った方がいい!」

 ナッシュさんが事実を続けると、遂に年配の聖職者は醜い本性を現した。
 身勝手な言い訳に、僕も聖騎士も思わず表情を歪めた。
 まるで、贅沢派の貴族みたいな言い訳だ。

 シュッ、バシッ!

「あっ!?」

 ここで、怒れるスラちゃんが身体能力強化魔法を使って聖職者が手にしていた旅用のバッグを奪い取った。
 スラちゃんは僕達のところにバッグを持ってきて、聖騎士がバッグの中身をひっくり返した。

 ジャラジャラジャラ。

「これは凄いな、旅用の荷物ではなく金品宝石だらけだ。いったい、どれだけの金品を貯め込んだのか?」
「ちっ、くそ!」

 ここまで証拠が出れば、もう聖職者は逃れられない。
 そして、トドメにこの人の登場だ。

 ギギギ……

「よもや貴様だったとはな。教会に入った頃はお互い切磋琢磨していたが、問題を起こしてスラム街の教会に派遣された。しかし、とうとう改心はしなかったか……」
「さ、サイオン!?」

 サイオン枢機卿様が、悲しみの表情で教会に入ってきた。
 余程予想外だったのか、年配の聖職者はまさに驚愕の声を上げた。
 そして、サイオン枢機卿様は縄を手にしていた。

「昔のよしみだ。最後は儂が拘束してやる」
「はは、ははは……」

 サイオン枢機卿様は、もう壊れかけている年配の聖職者を縄で拘束した。
 拘束された年配の聖職者は、聖騎士によって連行された。

「この度は、教会の恥部を見せ本当に申し訳ない。また、協力して頂き感謝申し上げる」

 サイオン枢機卿様は、僕達に深々と頭を下げた。
 今回の事件対応は、実は陛下から直接指示が出た。
 スラちゃん達の偵察能力も必要だったし、ナッシュさんが選ばれたのも僕やスラちゃん達と親しい幹部だからだ。

「サイオン枢機卿様、以前僕がこの教会で奉仕活動をした時にも事件は起きていたのでしょうか?」
「いや、ケン君が奉仕活動をした時は奴がこの教会に赴任した直後じゃ。奴は当分ケン君の奉仕活動はないと悟り、今回の犯行に出たみたいじゃな」

 サイオン枢機卿様も、落胆した表情だった。
 僕も、まさかこんな事件が起きているとは思わなかった。
 後の対応は、軍と教会が合同で行うことになる。
 押収した金品などは、保護された子ども達のために使われるそうだ。
 スラちゃん達は教会の中を調べるそうなので、僕は奉仕活動へと戻った。
 はあ、なんともやるせない気持ちだ。