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 クリスは、まだ体調が本調子でないので軍の仕事も軽めにしている。
 その為、学園の教師も暫くお休みだ。
 セレナさんとユリアさんが臨時講師をしてくれる予定だが、予定を早めて対応してくれる事になった。

「セレナさん、ユリアさん、とても助かります。本当に申し訳ないです」
「いいのよ。クリスちゃんの体調が、何よりも優先よ」
「それに、私も貴重な経験を積むことができるわ」

 学園の職員室でセレナさんとユリアさんと会い、僕からもお礼を言った。
 セレナさんとユリアさんも忙しいのに、快く引き受けてくれた。
 すると、セレナさんの本音が漏れた。

「それに、査定にも大きく影響するしね」

 こういう経験を積むことで、昇進にも大きく影響するらしい。
 更に、人に教える事も経験できるので、指導者としても大きな意味を持つという。
 ユリアさんがちょっと陽気なセレナさんをジト目で見ているが、そのくらいは許容範囲だ。
 僕の授業の時に、一緒に自己紹介をする事になった。
 そのまま、二人には僕の授業を見学してもらう。

「知っている人もいるかもしれませんが、クリスの妊娠と体調不良のために今日から剣技授業に軍から新しい人が来てくれました。クリスは体調が良くなれば復帰をしますが、出産子育てがありますのでお二人にはその前に臨時教師として来てもらいます」

 僕の説明を聞き、特に生徒から動揺などはなかった。
 逆に、生徒から僕におめでとうと声をかけられた。

「軍より来たセレナです。宜しくお願いします」
「同じく、軍から来たユリアです。宜しくお願いします」
「「「「「宜しくお願いします」」」」」

 セレナさんとユリアさんは、軍人らしくビシッと挨拶をした。
 生徒もしっかりと挨拶をしているし、最初の印象はバッチリだ。

「それでは、今日の授業を始めます」
「「「「「はい!」」」」」

 今日は官僚試験の傾向と対策、そして意義を説明する。
 単に試験を課すのではなく、何故この分野を試験対象にするのかも説明する。
 解き方を覚えるだけではだめだとも付け加えた。
 生徒だけでなく、セレナさんとユリアさんも真剣にメモを取っていた。
 こうして、僕の授業は順調に終わったのだった。

「ケン君、本当に凄いわ……」
「生徒にも慕われているし、本当に先生なのね……」

 あれー?
 セレナさんとユリアさんは、僕の授業風景を見て何故か落ち込んじゃったよ。
 僕だって、最初の授業はキチンとできるかとても不安だった。
 それに、スラちゃんもいるから普段クリスがどんな授業をしているかも分かっている。
 念の為にメモで書き出してセレナさんとユリアさんに渡しているし、僕も授業の補佐をする予定だ。
 ということで、校庭に移動してさっそく授業を始める事に。
 僕も宮廷魔導師の服だから、一緒に動く事もできる。

「改めまして、セレナです。よろしくお願いします」
「ユリアです。よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」

 ユリアさんとセレナさんも、意を決して生徒の前に出た。
 真剣な表情で、まさに軍兵モードだ。

「それでは、準備運動をしてさっそく訓練に入ります。準備運動できる広さに広がって下さい」
「「「「「はい!」」」」」

 最初は、セレナさんが生徒を指導し始めた。
 生徒も、クリスの時から普通に準備運動をしているので問題なく行っていた。
 まだまだ寒い季節なので、準備運動はキッチリやらないといけない。
 僕もスラちゃん達も、一緒に準備運動を行った。

「それでは、最初に剣の素振りから始めます。素振りはあくまでも剣の基本動作ですので、繰り返し行って体にしみ込ませましょう」
「「「「「は、はい!」」」」」

 実際の指導に入ると、セレナさんもユリアさんも問題なく行っていた。
 たまたま生徒の中に一人いた魔法使いにも、ユリアさんが丁寧に教えていた。
 時々スラちゃんがセレナさんとユリアさんのサポートをしていたが、僕があれこれ手伝うことは殆どなかった。
 こうして、今日の剣技の授業は問題なく終了したのだった。

「セレナさん、ユリアさん、お疲れ様です。本当に凄かったですよ!」
「ケン君ありがとうね。何だか、無我夢中で行っていたわ」
「人に教えるのって、本当に難しいのね。でも、私にとってもいい経験になったわ」

 ちょっとお疲れなセレナさんとユリアさんに、僕だけでなくスラちゃん達もパチパチと拍手をしていた。
 十分できていたと思うし、これなら次回以降の授業もきっと大丈夫だ。

「軍の初任者研修も、このくらいの内容から始めていいかもね」
「そうね。論理的な説明ももう少しあってもいいかも」

 セレナさんとユリアさんは、お互いに授業と軍の訓練の改善点を話し合っていた。
 せっかくなので、後でスラちゃんに纏めて報告してもらおう。

「じゃあ、僕はギンちゃんと一緒に王城に向かいますね。色々して頂き本当にありがとうございました」
「ケン君、色々ありがとうね」
「お仕事頑張ってね」

 僕とギンちゃんは、セレナさんとユリアさんに手を振って待っていた馬車に乗り込んだ。
 スラちゃんは、この後セレナさんとユリアさんと一緒に軍の施設へと行くという。
 さてさて、午後も仕事があるし僕も頑張らないとね。