【7月24日発売!】毒父に物資扱いで戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートでなんでも癒しちゃいます

 シュイン、もわーん。

「えーっと、右斜め前の建物の陰に誰かいます」
「直ぐに確認します」

 治療を行いつつ、僕は定期的に周囲を探索魔法で確認していた。
 昨日のピエール様とビクトリア様の結婚式での襲撃を受け、大教会周辺は軍により厳重警戒されている。
 それでも、時々悪意のある者を見つける事があった。
 並んでいる人の中にも悪意のある人がいるが、残念ながら人が多くて細かいところまでは把握できなかった。
 リーフちゃん、アクアちゃん、シロちゃんも周囲を気にしてくれているが、自分の仕事があるので直ぐには動けない。
 クリスは皇妃様とライアンちゃんの護衛も兼ねているので、治療から離れる事はできなかった。
 そんな中、待望の助っ人が現れた。

「ライアン、頑張ってやっているみたいね」
「あっ、ビクトリアお姉ちゃん!」

 ビクトリア様が、スラちゃんを抱っこしながら騎士服姿で大教会にやってきたのだ。
 どうやら、会談は無事に終わったみたいだ。

「お兄様は、ニース将軍達ともう少し話すそうよ。でも、基本的な事は終わったわ。スラちゃんの知識量には、全員が驚かされたわ」

 ビクトリア様に褒められて、スラちゃんはちょっと照れたポーズをした。
 詳しい話は聞かなかったが、スラちゃんなら凄いことを提案してくれそうだ。
 ビクトリア様は炊き出しを配る役割についてくれ、スラちゃんは馬に乗って列に並ぶ犯罪者を捕まえ始めた。

 シュッ、バシッ!

「うおっ! なんだ?」

 スラちゃんが列に並んでいる犯罪者を残らず捕まえ始めたので、一気に状況が動き始めた。
 スラちゃんが捕まえるのは重犯罪者だけなのだが、そこそこの数が捕まった。
 捕まった犯罪者は次々と軍の施設へと送られ、そこで厳しい尋問を受けた。
 尋問から得られた情報を元に、軍が犯罪者の拠点を潰し始めた。

「そのくらい忙しい分には何も問題ないわ。治安が良くなり、万々歳よ」

 軍が忙しく動き始めても、ビクトリア様は全然気にしなかった。
 レーベンス様が軍の施設に移動し、良い機会だから徹底的にやるようにと軍に指示が出ているという。

「ぐっ、くそ!」
「死ねー!」

 ダッ。

「甘いわよ!」
「やあ!」

 バシッ、ドカッ。

 時々ナイフを手にした犯罪者が破れかぶれで突っ込んでくるが、ビクトリア様とクリスにより簡単に防がれた。
 帝国兵も活躍し、僕も時々雷属性のバレットで突っ込んでくる犯罪者をノックアウトした。
 どうやら、スラちゃんが次々と列に並んでいる犯罪者を捕まえるので痺れを切らしたみたいだ。
 とはいえ、全て問題なく捕まえているので列に並んでいる普通の人は別段取り乱す事はない。

「この程度の事なら、以前の方が治安は悪かったのだよ」
「今は治安も良くなったし、こうして何かあっても直ぐに対応してくれるぞ」

 町の人が口々にそんなことを言ったが、旧皇太后が権力を握っていた時は相当治安が良くなかったんだ。
 子どもも普通に楽しそうに走り回っているし、停戦後に治安はかなり良くなったんだと実感した。

「くそー! 死ねー!」

 シュイーン、ドーン!

「このくらい、なんてことないですよ」

 シュイン、バシュ。

「そ、そんな。俺の渾身のファイアーボールが……」

 奉仕活動中で一番の攻撃は、自称天才魔法使いによる渾身の一撃だった。
 僕の小さなウォーターバレットで迎撃したが、多分マルちゃんやスイちゃんでも簡単に迎撃できたはずだ。
 マルちゃんとスイちゃん自身もとても良く頑張り、スイちゃんは簡単な料理を作れるようになっていた。
 こうして、大教会での奉仕活動は大きなトラブルもなく無事に終了したのだった。

 ふりふり。

 すると、スラちゃんがビクトリア様と何やら筆談をしていた。
 何を話しているのかなと思ったら、ビクトリア様がとんでもないことを言ってきたのだ。

「ライアン、この後マルちゃんとスイちゃんは私とスラちゃんと共に犯罪組織壊滅作戦に行ってくる。帰ってきたら、存分に褒めてあげてね」
「おおー! マルちゃん、スイちゃん、頑張って!」

 マルちゃんとスイちゃんは、大興奮のライアンちゃんにふりふりと触手を振っていた。
 いやいや、流石にマルちゃんとスイちゃんには犯罪組織対応は早いのでは?
 でも、スラちゃん曰くちょうど良い機会だから学ばせるという。
 そして、マルちゃんとスイちゃんはスラちゃんが操る馬にぴょんと飛び乗り、ビクトリア様の乗る馬の後をついていったのだった。

「さあ、ライアンはいっぱい頑張ったのだから、お城に戻ってお昼寝しましょうね」
「はーい」

 皇妃様の声に、ライアンちゃんはちょっと眠たそうな返事をした。
 きっと、マルちゃんとスイちゃんを見送って緊張の糸が切れたのかもしれない。
 マルちゃんとスイちゃんの代わりに、ライアンちゃんの側にはシロちゃんがつくことになった。

「ベクター枢機卿様、色々とありがとうございました」
「礼を言うのはこちらの方じゃ。おかげで、とても良い奉仕活動が出来たのじゃ」

 皇妃様とベクター枢機卿が挨拶をし、僕達は馬車へと乗り込んだ。
 ライアンちゃんは出発する際に見送りの聖職者に手を振っていたが、程なくして皇妃様の膝枕ですやすやと眠り始めたのだった。