【7月24日発売!】毒父に物資扱いで戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートでなんでも癒しちゃいます

 皇帝一家との昼食後、僕達は帝国の閣僚や官僚と会談を行う事になっていた。
 スラちゃん達も一緒に参加予定なのだが、シロちゃんだけ僕達と別行動に。

「マルちゃんと一緒に頑張るんだ!」

 皇妃様とライアンちゃんが、元々予定していた軍の治療施設への慰問に向かう。
 ライアンちゃんは友達になったばっかりのマルちゃんと治療する気満々で、シロちゃんがマルちゃんに色々教える事になった。
 マルちゃんが安全に魔法を使うためにも、ここはシロちゃんに先生役を頑張って欲しい。
 慰問に行く面々を見送った後、僕達は大きな会議室へと案内された。

「申し訳ないが、余は仕事がある。後ほど合流する」

 皇帝陛下は自分の仕事があるため、自身の執務室へと向かった。
 僕達は、案内役の官僚に案内され席に着いた。
 すると、ヘルナンデス様がとんでもない事を言ってきたのだ。

「私も補足をするが、基本的にケン君が話をするように。アーサーの補佐をしているのだから、ある程度は問題ないだろう」

 いやいやいや、僕は官僚になってまだ一年ちょいですよ?
 しかも、普段は学園や軍の施設に行ったりもしていますよ。
 だから、ルーカス様、クリス、スラちゃんも、適任だとウンウンと頷かないで下さい。

「【蒼の治癒師】は、武芸だけでなく知識にも優れていると聞く。王国の官僚試験を、史上最年少で合格したとも聞いている」

 白髪頭で仙人みたいな白い髭を生やした帝国宰相も、ニコニコしながらそんな事を言ってきた。
 帝国側も、僕に熱い視線を送っていた。

「とはいえ、いきなり【蒼の治癒師】に意見を聞くのは難しいじゃろう。ならば、普段学園でどんな事を教えているのか聞かせてもらおうではないか」

 ここで、帝国宰相が僕に助け舟を出してくれた。
 普段学園生に教えていることなら、僕でも話が出来る。
 それに、帝国も学園を運営する予定だから、王国でどんな事を教えているのか気になるのだろう。

「専門的な知識については、アカデミー出身の先生が教えてくれます。ですので、僕は学園生に自分の経験などを伝え、更に国を良くするためにはどうすればいいのかも考えてもらっています。軍や教会、更に王城に施設見学も行き、様々な人から話を聞いて考えてもらうようにしています」
「成程、ケン先生は学園生に自分の力で考える様にしているのか。詰め込み型の教育で足りないところを、見事に補完しているのだな」

 僕の話を聞き、帝国宰相や他の人達は感心した様な反応を示した。
 帝国の偉い人達が集まっているのだから、僕の考え位は直ぐに理解するはずだ。

「幾ら儂達が【蒼の治癒師】の考え方や思いを理解しても、現場の教師が理解しないと意味がない。そこが、帝国の学園で問題となっている。ビクトリア皇女様ならきっと【蒼の治癒師】の考えを理解できると思うが、いつまでもビクトリア皇女様に負担をかける訳にはいかない」

 僕が六歳から今までの十年間で体験した事は、かなり濃密な事だ。
 国境での体験もそうだし、人命救助や奉仕活動など様々な経験をした。
 帝国側は、政変のゴタゴタもあってか僕みたいな色々な経験をした人材が限られているという。
 ビクトリア皇女様も、結婚して子どもが生まれたら子育てに専念するだろう。

「自身の利益よりも如何に国を良くするために動くのかも、これまた中々難しいことだ。というのも、今までは自己の利益ばかりを追求する者があまりにも多かった。若い者に、少しずつ教えていくしかないじゃろう」

 帝国宰相は、腕を組んで考え込んでしまった。
 他の帝国幹部も、どうすればいいのか悩んでいるみたいだ。
 すると、ヘルナンデス様がこんな事を言ってきた。

「昨年末学園を卒業したものは、【蒼の治癒師の教え子】と言われている。やはり、誰かに何かを教わったというのはとても大きい。帝国の学園を卒業したものも、きっと【ビクトリア皇女様の教え子】と言われるでしょう。そして、真面目なものは教師の顔に泥を塗る様な事はしない。そういうものが、少しずつでも増えるだけでも影響力は増すでしょう」

 僕の教え子まで大層な二つ名で呼ばれているが、本人達は嬉しいと共に気が引き締まると言っていた。
 僕も学園の卒業生はできるだけサポートしたいと思っているし、きっとビクトリア皇女様も同じ思いだと思っている。

「また、残念ながら王国でも自己の利益ばかりを追求する馬鹿者が複数いた。結果的に各種の罪状で捕まったが、他にいる可能性も否定できない。そこで、今年より王城に勤めている者を対象に定期的に研修を課すことにした。研修をサボったものは昇進できないなど、一定のペナルティも課す」

 研修は、一般職員と幹部職員に分けて行う事になっていた。
 しかも、両方の研修で陛下が話をする事になっている。
 陛下も貴族主義勢力の自分勝手な行動に辟易しており、研修もかなりやる気になっていた。
 勿論、研修を行う部署の拡充も図っている。
 ヘルナンデス様の王国の対応の説明に、帝国幹部は真剣に耳を傾けていたのだった。