【7月24日発売!】毒父に物資扱いで戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートでなんでも癒しちゃいます

 最後に、僕とニックという魔法兵との手合わせだ。
 先にニックが訓練場に上がり、今か今かと僕を待ち構えていた。
 僕も、クリスとスラちゃんとハイタッチしてから訓練場に向かった。

「お前が、例の【蒼の治癒師】だな。どれだけ強いか分からんが、所詮は治癒師って事だろうな」

 ニックは、僕にニヤリとしながら話しかけた。
 かなりの自信家だけど、あまり自信過剰だと足元をすくわれるから注意してね。
 僕も、いつでも動けるようにとニックと対峙するように構えた。

「前の二試合と同じく、一試合五分で行う。相手が待ったや戦闘不能になった時点で、対戦相手の勝ちとする」
「はい」
「おう」

 またまた試合の審判をする帝国軍幹部の説明に、僕とニックは直ぐに頷いた。
 魔法被弾の危険があるので、審判役の帝国軍幹部は僕とニックから離れた。
 僕とニックを見守る人達は、誰も言葉を発しないで固唾を飲んで開始を見守っていた。

「それでは、はじめ!」
「はあ!」

 シュイーン、ズドーーーン!
 シュイン、バシッ、バシッ、バシッ。

 ニックは、試合開始と同時に僕に向けてカノン系魔法を打ち込んできた。
 更に、複数のバレット系魔法も放った。
 中々器用な芸当をするね。

 ズドドドドーン、ドドーン!

「どうした? もう終わりか?」

 土煙が上がる中、ニックはニヤリとしながら余裕綽々な感じだ。
 勿論、僕がこの程度で倒れる訳がない。

 サァー。

 土煙が晴れると、そこには全く微動だにしていない僕の姿があった。
 勿論、攻撃を予測して展開した魔法障壁で防いだだけだ。

「ふっ、流石だな。では、これはどうだ!」

 シュイン、シュイン、シュイン。

 ニックは、右手を上に上げて魔力を一点に集めた。
 魔力玉の大きさは一メートル程で、魔力を更に込めていた。
 僕はというと、ニックが魔力を溜める様子をただ眺めていた。

「これで終わりだ!」

 ブオン!
 シューン、ズドーーーン!

 ニックの投げた魔力玉は、僕に直撃した。
 僕を中心に爆風が吹き、帝国兵の中には手で爆風を遮っているものもいた。
 ニックはニヤリとしながら僕のいる方を見ていたが、ヘルナンデス様、ルーカス様、クリス、スラちゃん達、更にはレーベンス様も微動だにしなかった。

「えっと、これで終わりですか?」
「なに!?」
「「「「「えっ!?」」」」」

 爆風と土煙が晴れて僕が平然としながら立っていると、ニックは信じられないという表情に変わった。
 余程、放った魔力玉の威力に自信があったのだろう。
 帝国兵も、驚愕の表情をしているものが多数だった。

「あれだけ長い時間魔力を溜めていたのですから、僕にも魔力を溜める時間はあります。何も、不思議な事ではないですよ?」
「ぐっ……」

 僕が簡単に種明かしをすると、ニックは悔しそうに歯ぎしりをした。
 それに、王国軍の魔法兵の方がずっと威力のある魔力玉を放てる。
 それでは、そろそろ反撃といきましょう。

 バシッ、ベシッ!

「ぐふっ、がはっ?」
「「「「「な、何だ何だ?」」」」」

 突然ニックが顔や腹部にダメージを受け、ニック自身も帝国兵も何が何だか分からないでいた。
 種明かしはとても簡単で、ビー玉サイズの魔力弾を目に見えない程の高速で飛ばしているだけだ。
 闇魔法の一種の幻影魔法で魔力弾をコーティングすれば本当に何も見えない魔力弾が放てるが、わざわざこの手合わせで披露する必要はない。

「魔力訓練はしっかりと行っているみたいですが、残念ながら実践訓練はまだまだみたいです。戦場では、相手に時間を与えてはいけません。先程の魔力玉が良い例です。それなら、最初のカノン系とバレット系魔法を組み合わせた魔法で相手の動きを封じる方が余程いいですよ」
「ごふっ……く、くそ……」

 僕は、攻撃をしつつ訓練と実戦の違いを話した。
 例えば相手が剣士の場合、自分が切られる時間を与えることにもなります。
 魔法の威力と制御は中々だけど、それで過信しては駄目ですよ。

 シュイン、バシッ、バシッ、バシッ!

「なっ、これは!?」

 更に、僕はニックに三重の拘束魔法を発動した。
 ニックはもがいて何とかしようとするが、拘束魔法から抜け出すことができない。

「全て属性が違う、三重の拘束魔法です。戦場で自分の身動きが取れない事は、即ち死に繋がります。この状態なら、先程の魔力玉も容易に当てる事ができますね」
「がっ、く、くそー!」

 ニックはなおも拘束魔法から逃れようとしているが、僕の拘束魔法は簡単には外れない。
 マジックブレイクなどの魔法を覚えていれば拘束魔法から逃れられるが、残念ながらニックは補助魔法は得意ではないようだ。
 では、これで終わりにしましょう。

 シュイン、シュイン、シュイン、シュイン。

「「「「「なっ!?」」」」」

 僕は、一瞬の内にバレット系魔力弾をニックの周りに百発程発動した。
 しかも、全属性の魔力弾だ。
 とんでもない数の魔力弾に囲まれ、ニックのみならず帝国兵は度肝を抜かれていた。

「今は時間をかけていませんが、相手に時間を与えるというのはこういう事です」
「く、くそ……」

 ニックは戦意喪失となり、ガックリと項垂れた。
 もう、これで決着ですね。

「ニック戦意喪失。勝者、ケン」
「「「「「うおー!」」」」」

 審判役の帝国軍幹部の勝利宣言を受け、僕はニックに向けた魔法を全て解除した。
 その瞬間、帝国兵から物凄い歓声が上がった。

 スタスタスタ。
 シュイン、ぴかー!

「偉そうな事を言ってすみません」
「いや、俺が天狗になっていただけだ。気にするな」

 僕は、ニックに回復魔法をかけて握手をした。
 ニックは、バツが悪いのかちょっとそっぽを向きながら返事をした。
 天狗になっていた事が分かれば、きっとニックも強くなるはずだ。
 僕は、ニックと別れてクリス達のいる方に向かった。

「まあ、順当だな」
「ショック療法には、良い戦い方だ」

 ヘルナンデス様とルーカス様も、普通に僕を出迎えてくれた。
 僕はクリスとスラちゃん達とハイタッチするが、こちらも特に普通の反応だ。

「奴は、腕があるのにちょっとのぼせ上がっていた。ケン君が手加減していたとはいえ、圧倒的な力差を見せたのは大きい。後は、本人の頑張り次第だ」

 レーベンス様も、満足そうに頷いた。
 そして、皇帝陛下が帝国兵に訓示した。

「王国軍の強さは、常に実戦を想定した戦い方にある。諸君は、まだ基礎訓練に励んでいる段階だ。しかし、実戦を想定した訓練を積めば、帝国軍も更に強くなるだろう。諸君のこれからの頑張りに期待する」
「「「「「はっ」」」」」

 帝国軍はまだ部隊再編中だし、兵も訓練中だ。
 言い換えれば伸び代があるという事にもなるし、これから更に頑張ってもらいましょう。