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「こちらになります」
「うむ」

 程なくしてグラウンドに到着し、僕達は用意された席に座った。
 スラちゃん達も、ぴょーんと机の上に飛び乗った。
 軍の幹部も席に着くが、先程の不正帝国兵捕縛の件もあり周囲はかなり厳重警戒となった。

「皇帝陛下に、敬礼!」

 ザッ。

 一斉に帝国兵が敬礼をし、僕達も立って敬礼をした。
 敬礼の仕方は、王国軍と大して変わりはなさそうだ。
 その後は、隊列行進や装備点検などを披露していた。
 キビキビとした動きで、良く訓練されているのが分かる。
 軍人のヘルナンデス様、ルーカス様、クリスも、帝国兵の動きに感心していた。

「残念ながら、王国との戦争中は基本的な事もできなかった。兵は消耗品だという、誤った考えを持つものが沢山いた。その様な考えは改めないとならない」

 皇帝陛下は、帝国兵の動きを見ながらそんな事を呟いた。
 確かに帝国兵の捕虜にはまともな訓練を受けていない人が多かったし、よくこの状況で戦えたと思った。
 王国軍は兵に対する対応も手厚いし、訓練もしっかりとやる。
 その分脱落者もいるが、それだけ王国軍が真面目に訓練している証拠だ。

「諸君らの働きにより、帝国の治安維持がなされている。帝国には、まだ未開発の土地も多い。帝国がより発展するためには、諸君らの更なる働きが必要だ」
「「「「「はっ」」」」」

 最後に皇帝陛下が訓示をし、最初の訓練見学は終了した。
 事前に帝国の事を色々調べたのだけど、帝国には開発可能な土地が沢山あるという。
 しかし、最低限の食料確保などができると、王国への侵略を始めた。
 手軽に開発済みの土地を得ようとしたという。
 ところが、連戦連敗で国内経済も悪化した。
 安易な考えでは物事はうまくいかないという、最たる例だ。

「続いて、訓練場にご案内いたします」

 さて、ここからが本番だ。
 僕に魔法勝負を挑もうとするニックという魔法兵がいるらしいが、いったいどんな人だろう。
 スラちゃんチェックで悪人とは判断されなかったし、純粋に魔法勝負をしたいのでしょう。
 ちょっとワクワクしながら、僕はみんなの後をついていった。

「こちらが、訓練場になります」
「わあ、とっても広い訓練場ですね。王国の軍の施設よりも大きいです」
「ありがとうございます。ここでは、剣や魔法訓練以外にも隊列訓練などを行います。その為、広めに確保しています」

 案内役の幹部兵が、僕の話を聞き思わずニコリとした。
 もしかしたら、帝国軍が王国軍よりも優れている場所があると思っているのかもしれない。

「集合!」
「「「「「はっ」」」」」

 訓練を指揮している隊長の号令で、訓練を行っている帝国兵が集合した。
 帝国兵が一同に集まり、四列縦隊で並んだ。

「皇帝陛下、並びに王国使者に敬礼!」

 ザッ。

 一斉に帝国兵がビシッと敬礼をし、僕達も敬礼した。
 スラちゃん達も敬礼していて、ちょっとほっこりしていた。

「これから、諸君らの訓練を見学する。訓練中の失敗は、大いに結構だ。失敗を重ねてこそ、成功の確率が上がる。様々な想定がされるが、本番で失敗することは命に関わる。常に真剣に訓練を行うように」
「「「「「はっ」」」」」

 皇帝陛下の訓示に、帝国兵は大きな返事をした。
 練習中だからこそ、失敗もできる。
 失敗を許容する環境は、レベルアップにはとてもいいと思った。

「王国の【蒼の治癒師】に挑もうとする勇気あるものがいるようだが、先ずは通常の訓練をしっかりとする様に。その上で、どうするか判断する」
「「「「「はっ!」」」」」

 おお、やる気のある声を上げる帝国兵がいるね。
 それに、皇帝陛下も上手い具合に帝国兵のやる気を出させていた。
 最初に、剣技訓練の様子を見学する事に。

「「「「「せい、やあ!」」」」」
「相手を想像して剣を振るう様に。国民の命が背中にあると思え!」

 訓練官の激が飛ぶ中、帝国兵は真剣に剣を振るっていた。
 相手を仮想して戦うのはとても良いことだし、王国軍も是非参考にすると良いと思った。
 現に、ヘルナンデス様、ルーカス様、クリスは、真剣な表情でメモを取っていた。
 スラちゃん達も、通信用魔導具を使ってあれこれメモをしていた。
 その時、一人の兵が他の兵に付き添われて壁際に移動した。
 どうやら膝を痛めてしまったみたいで、苦痛に顔が歪んでいた。

 ぴょんぴょん。

「「「えっ?」」」

 すると、シロちゃんが負傷兵の側に跳ねて移動した。
 目の前に突然スライムが現れ、付き添いの兵も思わずキョトンとしていた。

 シュイン、ぴかー。

「なっ、これは回復魔法? 膝が痛くないぞ!?」

 シロちゃんの素早い治療に、負傷兵は何が何だか分かっていないですね。
 シロちゃんはというと、治療が上手くいって満足したのか僕の所にぴょんぴょんと跳ねながら戻ってきた。

「怪我をしたまま訓練をすると、余計に悪化しちゃいますから」
「流石、素早い対応だ」

 僕がニンマリしながら皇帝陛下に話をすると、皇帝陛下も満足そうに頷いた。
 帝国軍には治療兵が少ないらしいので、こうして治療をする事はとても大切だ。
 その後も剣技訓練は順調に進み、ツーマンセル訓練などの実践形式も行われた。
 とても良い訓練内容に、皇帝陛下もとても満足そうにしていたのだった。