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 程なくして、皇帝陛下が閣僚を引き連れながら大部屋に姿を現した。
 僕達も、頭を下げて皇帝陛下一行を出迎えた。

「皆のもの、待たせた。間もなく、王国の使者への歓迎を兼ねた晩餐会を始める。それまで、しばし歓談をしているように」

 皇帝陛下の言葉に、大部屋に集まっていた貴族は改めて一礼した。
 そして、皇帝陛下は僕達に向き直って話し始めた。

「ジュノー公爵もいるのはちょうど良い。奸臣に対する対応で、中々忙しかったぞ」
「例の貴族の件ですな。今まで強気できていましたが、遂に馬脚を現しましたな」

 皇帝陛下と話すジュノー公爵は、表情が少し険しくなった。
 間違いなく、チビスライム達が鑑定魔法で見つけ出した不正をしている貴族なのだろう。
 ビクトリア皇女様曰く、帝国には鑑定魔法を使える魔法兵が少ないという。
 スラちゃんやチビスライム達がいるから、一網打尽にしたのだろう。

「色々任せて済まなかったな」
「いえ、陛下には大切な仕事がありますから」
「お前だからこそ、任せられるのだ」

 そして、皇帝陛下は皇妃様と堂々とイチャイチャし始めた。
 ビクトリア皇女様や閣僚は慣れているのか苦笑しているのだが、僕達は思わず目が点だ。

「その、兄上と義姉上は幼馴染というのもあってとても仲が良く……」
「ラブラブだよー!」

 苦笑しながら説明したビクトリア皇女様に対し、ライアンちゃんは満面の笑みで教えてくれた。
 他の貴族も全く気にしていない事から、どうやら皇帝陛下と皇妃様の仲が良いのは周知の事実みたいだ。

「それでは、これより歓迎の晩餐会を始める」

 皇帝陛下は、あっという間に気を取り直して開会を宣言した。
 そして、飲み物が給仕担当の使用人により各人に配られた。

「先程の到着時の謁見では、王国からの使者に醜態を晒した事になった。関係者を捕縛し、現在厳しく取り調べている。諸君らも、ゆめゆめそうならないように」
「「「「「はっ」」」」」

 おお、皇帝陛下が最初にこの場にいる貴族に釘を差した。
 とはいえ、話の内容としては普通だし、不正をしなければいい。
 謁見の間で捕まった者は、平気で不正をしていたはずだ。

「それでは、王国からの使節団との友好が、今後の王国と帝国とのより良い懸け橋になる事を願う。それでは、乾杯をする。乾杯!」
「「「「「乾杯」」」」」

 皇帝陛下の乾杯の発声で、歓迎の晩餐会は始まった。
 僕は、他の人と同じくグラスを掲げた後、ライアンちゃんとにこやかにグラスをあわせた。
 楽団の演奏が始まり、にこやかに談笑が始まった。
 僕も、ビクトリア皇女様と婚約者のピエール様と色々話し始めた。

「ケンは、クリスと本当に仲が良いわね」
「僕はクリスと幼い時に出会って、同じ魔法使いという事で共に切磋琢磨していました。そういうのもあるのかもしれません」
「お互いに、目指す先があったのね。とてもいいことだわ」

 ビクトリア皇女様は、僕の話を聞いて思わずニコリとしていた。
 もう、僕とクリスは十年以上の付き合いだもんね。

「では、そろそろ挨拶をするぞ」
「「はい!」」

 ヘルナンデス様に促され、僕とクリスはビクトリア皇女様との話を中断した。
 ルーカス様と共に、皇帝陛下の前に進み出た。

「皇帝陛下、私どものためにこの様な素晴らしい晩餐会を開催して頂き感謝申し上げます」
「うむ。貴殿らと良い縁を結べるよう、この会が成功に終わる事を期待する」

 ヘルナンデス様が代表して挨拶をし、これで僕達の挨拶は完了した。
 そして、ここからは僕達が帝国の貴族から挨拶を受ける事になる。
 帝国軍の近衛騎士が僕達の護衛につき、更にスラちゃん達も僕達を守るぞと張り切っていた。

「いやあ、やはりあのスライム達は優秀だ。お陰でこれからもっと忙しくなりそうだ。しかし、そんなスライムと友好関係にあるのは流石といえよう」

 最初に、レーベンス様が挨拶してきた。
 物凄くニコニコとしているが、今まで中々尻尾を出さなかった貴族を捕まえることができて余程嬉しいのだろう。
 他の軍人貴族や閣僚なども、ニコニコ顔で僕達に挨拶をしていた。

「かの有名な【蒼の治癒師】様に会うことができ、とても光栄です」
「あ、ありがとうございます……」

 しかし、他の貴族の多くは、僕に会えて嬉しいと満面の笑みを浮かべていた。
 正直ここまで僕の二つ名が帝国内に広まっていると改めて知り、僕も微妙な反応となってしまった。
 一緒にいた貴族令嬢などは、僕を見るなりキラキラした瞳を向けていた。
 こうして何とか挨拶対応を終えたのだが、更に大変な状況が待っていた。

 カキカキカキ。

「まあ、ケン様はクリス様の命の恩人なのですのね。まるで、ケン様は白馬の王子様ですわ」
「捕虜になった帝国兵を一人も殺さず、更に全員治療するなんて。だから、兄もとても元気になっていたのですわね」
「すごーい!」

 何と、スラちゃんが筆談で僕の逸話のあれこれを説明していたのです。
 多くの貴族令嬢、ライアンちゃんは、スラちゃんが説明する内容に感激していた。
 更に、クリスも加わってあれこれ説明していた。
 うん、スライムが筆談しているという事実は完全にスルーされている。
 嗚呼、僕の秘密が勝手にバラされていくよ……

「僅か六歳で停戦会議に参加していた時には、流石の私も驚いた。しかし、六歳には思えない聡明さに再び驚いたのも確かだ」
「ルーベンス大将がそこまで言うなんて。ケン殿は本当に凄いのだな」
「き、恐縮です……」

 僕はというと、レーベンス様に捕まって昔の事を他の貴族に教えられていた。
 うう、事実だから僕も否定できない……
 しかも、トラブルが起きている訳でもないので、皇帝陛下のところにいるヘルナンデス様とルーカス様もニコニコしているだけで助けてはくれなかった。
 こうして、歓迎の晩餐会は何とか終わった。
 殆どの人は終始和やかな雰囲気だったが、僕は精神的に疲労してしまった。
 そして、僕の色々な話が多くの帝国貴族に広まる事となったのだった。