【7月24日発売!】毒父に物資扱いで戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートでなんでも癒しちゃいます

「そうそう、このお兄ちゃんはライアンの大好きな絵本の主人公なのよ」
「おおー!」

 談笑タイムになると、皇妃様がニコニコしながらとんでもない事を言ってきた。
 まさか、帝国にも僕を題材にした絵本があるなんて……
 ライアンちゃんのニコニコな笑顔の前に、僕は笑顔のまま固まってしまった。

「【蒼の治癒師】様の物語は、帝国でも大人気ですわ。王国兵も帝国兵も関係なく治療し、多くの人を救いました。その高貴な精神は、称えられるものですわ」

 皇妃様まで、僕をニコニコしながら見ていたのです。
 あの、帝国兵の負傷者の多くは、僕が放った魔法で怪我をした人なんですけど……

「それでも、誰一人とも帝国兵を殺してはいないわ。大きな魔力があるのに、本当に凄いことなのよ」

 今度はビクトリア皇女様が話したけど、帝国兵の魔法兵は攻撃型が主流らしい。
 だから、人を殺す事に躊躇しないという。
 それでは、ただのならず者にかわりはない。
 魔法使いはその魔力を使って人を守るのが使命だと、僕はそう思っていた。

 コンコン。

「入るぞ」

 談笑を始めて十分程で、皇帝陛下が応接室に入ってきた。
 僕達も立って出迎えたが、皇帝陛下の後をアクアちゃん達がついているのが面白かった。

「皆、座ってくれ。先程は帝国の失態を見せて本当に申し訳なかった」

 皇帝陛下も、謁見の間で起きた件で謝罪をした。
 そして、話は今後の事となった。

「王国からの手土産については、晩餐会で展示をする事にする。帝国で取れない宝石なので、一目見て王国産だと分かるだろう」

 本来なら到着の謁見で渡すはずだったお土産などは、晩餐会で対応することになった。
 この辺りは、臨機応変に対応すれば大丈夫。
 ヘルナンデス様も、それで問題ないと言っていた。

「出迎え場所を強引に変更しようとした馬鹿者、並びに謁見の間で騒いだ馬鹿者は全員牢屋に入れて屋敷を捜索中だ。元々虚栄心が強く、欲にまみれた使えない者たちだ。いなくても、何も影響はない」

 皇帝陛下は、少しため息混じりに話してくれた。
 皇帝陛下の命令を堂々と破ったのだから、厳罰は必至だ。
 更に、毒ナイフの件もあるからどれだけの罰になるのだろうか。
 いずれにせよ、後は皇帝陛下と帝国軍にお任せだ。

「【蒼の治癒師】が連れているスライムは、本当に優秀だ。元々怪しいと思っていた貴族の罪状を調べあげた。併せてレーベンスに対応させている」

 アクアちゃん達は、そんな事をしていたの?
 本人達は、やりきったという表情だ。
 帝国軍は大忙しだけど、レーベンス様などはやる気満々らしい。
 元々私腹を肥やしていた可能性が高い貴族で、軍もターゲットにしていたという。

「歓迎の晩餐会では、敢えて余の隣にいてもらう。上位貴族などは挨拶に来るが、下位貴族は挨拶に来ない。その辺は安心するように」

 豪華な貴族服を着た貴族が大騒ぎした時も、慌てることなく対応した貴族だという。
 それなら、僕達も安心だと思った。

「あと、戦争終結時のゴタゴタで強制当主交代になった者が多数いる。先程動揺していたのも、まだ経験が浅い中から来るものだ。こういうのは、場数を踏まないとならない」

 経験が浅い貴族でも、中には堂々としている人もいるそうです。
 この辺りは、頑張って慣れましょうとしかいえなかった。

「さて、話はこのくらいにしておこう。客室に案内する、暫くゆっくりするように」

 応接室での話もこれで終わり、僕達も少しホッとした。

「またねー」

 スラちゃんも、ぴょーんと僕のところに戻ってきた。
 ライアンちゃんにフリフリと触手を振ったが、とても仲良くなっていた。
 僕達は、使用人に案内されながら客室へと向かった。

 ガチャ。

「皆様、こちらになります」
「わあー!」

 お城の中でも格式高い客室らしく、中は豪華な作りとなっていた。
 皇帝陛下が、僕達をもてなすという意志の表れでもあった。
 ヘルナンデス様、ルーカス様、僕とクリスに別れ、更にアクアちゃんとリーフちゃん、シロちゃんはヘルナンデス様とルーカス様の護衛についた。

「はふぅ、疲れた……」

 クリスは、部屋に入るなりソファーにぐたーっと横になった。
 ずーっと緊張していたのもあり、かなりヘロヘロだ。

「少し休んでていいよ。一時間くらいは、ゆっくりできるはずだよ」
「そうするー」

 スラちゃんがアイテムボックスから取り出した飲み物を口にしながら、クリスはソファーにもたれかかった。
 着替えの時間もあるから三十分後には動き出さないといけないけど、僕も少し休もう。
 靴を脱いで、ベッドに寝転んだ。
 やっぱり、僕も緊張していたからちょっと疲れていた。

「そういえば、クリスは一人でドレスの着付けができるの?」
「無理! ケンとスラちゃんにお願いする」

 クリス、そういうのは早めに言ってよ。
 僕と枕元にいるスラちゃんは、思わず苦笑してしまった。
 僕は普通に式典用の服を着ればいいだけだし、髪の毛のセットも不要だ。
 だけど、クリスの場合は綺麗に髪の毛を櫛で梳かないといけない。

「クリス、やっぱり二十分後には着替え始めるよ」
「えー!?」

 クリスがぐたーっとしながら文句を言うが、早めに準備をしないとならない。
 念のために、時計型魔導具のタイマーを仕掛けて、再びベッドに横になったのだった。