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「あっ、大きなお城が見えてきました!」
「帝国のお城だ。以前見た時と、特に変わらないな」

 予定通りの時刻にいよいよ帝国の帝都の町並みが見えてきて、僕は少し気持ちがワクワクしていた。
 スラちゃん達も窓に張り付いて空からみる帝都の町並みを見ており、ヘルナンデス様は思わず苦笑していた。
 ぱっと見は王都に似ているが、王都は丸型の城壁だったのに対して帝都は四角型の城壁だ。
 そして、中央に大きなお城がそびえ立っていた。

「間もなく着陸します。椅子に座るか、お近くの手すりに捕まって下さい」

 船内アナウンスがあり、僕達は改めて客室のソファーに座った。
 ゆっくりと着陸し、僕達は下船の準備を始めた。

「ではいくぞ。気を引き締めるように」
「「「はい」」」

 ヘルナンデス様が、僕達に声をかけた。
 国境で帝国兵が何かをしようとしたこともあり、全員周囲に気を付けた。
 念の為にと、探索魔法も使うようにと指示を受けた。

 シュイン、もわーん。

「う、うーん。魔導船の周囲は大丈夫なのですが、ぽつぽつと悪意のある反応があります」
「王国軍に対して悪意があるのか、はたまた帝国軍の現在の体制に対して不満を持っているのか。いずれにせよ、警戒しておくことはない」

 ヘルナンデス様は、このくらいは織り込み済みという反応だ。
 そして、周囲の警戒をしながら魔導船を降りると、見覚えのある人が僕達を出迎えてくれた。

「これはこれは、レーベンス大将自らお出迎えとは。光栄な事です」
「ニース将軍が来るのだから、最低でもそのくらいはしないといけない」

 レーベンス様とヘルナンデス様がガッチリと握手をしたが、僕達は既にルーベンス様が出迎えるのことは承知している。
 一種のパフォーマンス的なやり取りだが、こういうやり取りも時には必要だ。

「ケン君も、遂に結婚したか。【蒼の治癒師】様の結婚式は、王太子様の結婚式よりも凄かったと噂になっているぞ」
「ははは……」

 レーベンス様はルーカス様やクリスともガッチリと握手をしたが、僕と握手して軽く話をした時が一番ニコニコしていた。
 というか、僕とクリスの結婚式の事が帝国まで伝わっているとは。
 僕は、思わず苦笑するしかなかった。

「では、馬車に乗ってさっそくお城に向かう。皇帝陛下が、貴殿らの到着を待ちわびている」

 ルーベンス様に急かされながら、僕達は馬車に乗り込んだ。
 そして、大軍の護衛を受けながら時間にして十分間の馬車旅が始まった。

「ケン君、不審なものはいたか?」

 僕達を乗せた馬車が出発した瞬間、ルーベンス様がぶち込んできた。
 ニヤニヤしているけど、凄いことを聞いてくるなあ。
 すると、ヘルナンデス様が代わりに答えてくれた。

「王国への悪意かはたまた帝国軍への恨みなのか、何かしらの感情を持ったものが散見したのは確かだ。私も、悪意を感じている」
「やはりそうか。出発時の出来事も聞いている。未だに、旧皇太后派と呼ばれる過激派が存在しているのは確かだ。軍の体制や方針は、一年で大きく変わった。勿論、官僚の体制もだ。だが、急激な変化に不満を持つものは数多くいる」

 ヘルナンデス様の回答に、レーベンス様は溜息をつきながら答えた。
 王国も旧来から新しい体制へと移行しているが、それでも反発はあった。
 体制が変わった直後だから、帝国の場合は余計なのだろう。

「ケン君やスラちゃん達は、不審者がいたら遠慮なく捕まえていい。これは、皇帝陛下も言及している」

 いやいや、レーベンス様、僕は勝手に人を捕まえないですよ。
 だから、スラちゃん達も了解しましたとビシッと敬礼しないの。
 とはいえ、僕も大切な人を守らないといけないのは確かだ。

「ビクトリア皇女様も、ケン君とクリスに会いたがっていた。結婚式に招待したのは間違いないが、この両国の関係下で来ないのではと思っていた」
「僕も、ビクトリア皇女様の結婚式をとても楽しみにしていました。だから、絶対に参加したいと思っていました」
「ケン君は、昔から本当に優しい心を持っている。だからこそ、【蒼の治癒師】様は帝国でも人気なのだろう」

 ルーベンス様は、僕の話を聞きとてもニコニコしていました。
 僕がクリスと結婚したのもあって、余計に他人の結婚式を祝福したいと思った。

「ケン君は、既に学園でも教壇に立っているそうだな。帝国でも、今年からテストを始める事にした」
「生徒の皆さんは、とてもやる気があって僕も刺激になります。逆に、僕が教わる事も多いです」
「【蒼の治癒師】様の教え子が、王国を発展させていくと言われているらしいな。帝国も、その点においては負けてられない」

 レーベンス様曰く、なんとビクトリア皇女様も教壇に立つという。
 これは、ビクトリア皇女様たっての希望らしい。
 ビクトリア皇女様なら、きっと素晴らしい教師になれるはずだ。
 そんな事を話しながら、僕達を乗せた馬車はお城へと近づいていった。