毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます

 帝国側からの連絡待ちの間、僕とスラちゃんはやる事が増えていた。

 シュイン、バシッ。

「そうそう、いい感じよ。この調子で、他の属性のバレット系魔法も覚えましょう。魔法はイメージが大切ですよ」

 毎朝の魔法訓練に、バレット系魔法の訓練が入った。
 ユリアさんの土魔法で作った土壁を狙うのだが、敢えて弱く放っていた。
 魔力制御の練習で、セレナさんとユリアさんも参加してローリー様に教えてもらっていた。
 特に僕とスラちゃんは魔力がとても強く、こういう魔力コントロールは必須らしい。
 帝国側の山に大穴を空けた事からも、魔力コントロールの必要性は実感していた。
 セレナさんとユリアさんも、初めて会った時と比較すると物凄く上達していた。
 魔力循環なども上手にできていて、ローリー様曰く初心者魔法兵卒業だという。

 カンカン、カンカン。

「えいえい、えい!」
「そうだ、思いっきり打ち込んでこい!」

 もう一つの訓練が、木剣を使っての剣技の訓練だった。
 オーフレア様曰く、僕は貴族の子弟だから剣技は絶対に必須だという。
 スラちゃんと一緒に素振りから始めて、今では兵と簡単な手合わせも行った。
 兵も僕に治療してもらった事もあってか、丁寧に剣技を教えてくれた。
 演舞などもあるそうだが、先ずは木剣の扱いに慣れることを目標とした。
 今日はオーフレア様が剣技の相手をしてくれたが、流石に冬になってきたのでオーフレア様も上着を着ていた。

「よっと、よっと……」
「そうそう、最初は歩くことから始めるのよ」

 最後に行ったのが、身体能力強化魔法の訓練だった。
 残念ながらセレナさんとユリアさんには身体能力強化魔法の適性が無いそうで、僕とスラちゃんがローリー様から教わっていた。
 一番初めに身体能力強化魔法を使って歩こうとしたら、反動で思いっきり転んじゃったっけ。
 こうして、普通に歩くだけでもかなり難しかった。
 どんな訓練でも、最初から直ぐにはできないよね。

「それでも、ケン君とスラちゃんはとても筋がいいですわよ。ドンドンと色々なことを吸収していって、教えている私たちもとても勉強になりますわ」
「魔法兵二人もいい感じだな。実戦経験も大きいし、俺たちが来る前にケン君がキチンと教え直したのもデカいぞ」

 ローリー様とオーフレア様に、何とか合格点を貰えた。
 こうして訓練がパワーアップできたのには、戦闘が一段落したのも関係していた。

 僕とスラちゃんの仕事は治療であって、攻撃することではなかった。
 なので、戦闘中は訓練も基本的なものを行って余計な消耗を避けていた。
 兵も訓練に重点をおいており、警備も抜かりなく行った。
 ゴードン様曰く、兵も戦闘を経験して目つきが変わったという。
 今は治療も日々の訓練で負傷した兵への治療しか行っておらず、他の魔法訓練に充てることができた。
 それはセレナさんとユリアさんも同様で、戦闘中は防御に専念していたので他の魔法は少しずつしか覚える暇がなかったのだ。

「うーん、疲れました……」
「ハハハ、だいぶ頑張っていたな。でも、小さいうちからこうして一流の教えを受けるのはとても良いことだ」

 昼食時に食堂でへんにゃりとしている僕とスラちゃんを、ルーカス様が笑いながら撫でてくれた。
 確かにオーフレア様とローリー様の教え方は、魔法の本に書いてあった以上のことだった。
 とても効率的に教えてくれ、僕もスラちゃんもかなりレベルアップした。
 すると、今度はルーカス様がこんなことを指示してきた。

「そうそう、帝国との停戦協定の日程が決まった。五日後に行う予定だ。場所は、帝国軍の陣地があったところだ。そこで、これからは午後時間がある時に礼儀作法の訓練を行うことにした」

 この瞬間、僕とスラちゃんは思わずフリーズしてしまった。
 現役王国第二王子殿下の礼儀作法の訓練なんて、絶対に厳しいものになるに違いなかった。
 食堂にいた他の兵も、僕とスラちゃんをとても気の毒そうに見ていた。
 というか、停戦協議が始まるところはスルーだった。
 というのも、兵は交代で麓の軍事基地で休むことができていた。
 残念ながら、僕とスラちゃんに交代という概念はなかった。

「そうだな、折角だから昼食を食べ終えたら司令官室で礼儀作法の訓練を行なおう。叔父上もいるし、一緒に教えてくれるだろう。ケン君は貴族の子弟だから、覚えていて損はない。ケン君なら、少しハードモードでも大丈夫だろう」

 しかも、ルーカス様の話でこの後の予定も決まってしまった。
 ヘルナンデス様もいるとなると、もう絶対に厳しい訓練になるのは間違いなかった。
 周りの兵は、ご愁傷様という視線を向けていたが誰も助けてはくれなかった。
 こうして、まさかの訓練が連続で続く事になり、僕とスラちゃんは更にガックリとしてしまったのだった。