【7月24日発売!】毒父に物資扱いで戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートでなんでも癒しちゃいます

 コンコン。

「入りたまえ」
「失礼します。帝国軍が到着しました」
「そうか、報告ご苦労」

 司令官室に入ってきた兵の報告を聞き、ピーター様は短く返事をした。
 同時に、僕達もソファーから立ち上がった。

「ケンもクリスも、ここから相手にするのは帝国だ。王国の代表として、恥のない態度をする様に」
「「はい!」」

 直ぐ様、ヘルナンデス様が僕とクリスに注意をした。
 スラちゃんも、了解とクリスの腕の中で震えていた。
 アクアちゃん達は迎えの馬車の前で待っているそうで、僕達もそのまま前線基地の外に向かった。
 すると、予想外のトラブルが起きていたのです。

「がっ、くそ。なんだこれは!?」

 出迎えの馬車の前で、一人の帝国兵がアクアちゃんによって拘束されていたのです。
 拘束された帝国兵は地面に転がりながら悪態をついているが、アクアちゃんは勝手に拘束などしない。
 すると、シロちゃんが僕のところに急いでやってきた。

 ふりふり。

「えっ、拘束したのは過激派?」
「ぐっ……」

 僕の話を聞いた途端、拘束されている帝国兵は苦々しい表情をしたのです。
 わざわざ鑑定魔法など使わなくてもバレバレの反応だったが、ヘルナンデス様の指示もあり拘束されている帝国兵を鑑定することに。

 シュイン、もわーん。

「えっと、やはり過激派って出ていました。元皇太后派とも出ています」
「ちっ、まさかこんなのが紛れ込んでいたとは……」

 帝国軍幹部らしい大柄なスキンヘッドの男性は、僕の話を聞くなり思わず舌打ちをした。
 帝国軍にとっても、完全に予想外の事態なのだろう。
 その間にスラちゃん達が手分けして帝国軍の確認をしていたが、問題があるのは拘束された帝国兵のみだった。

「コイツを武装解除して牢屋にぶち込め! 徹底的に取り調べを行うのだ!」
「「「「「はっ」」」」」
「くそっ!」

 スキンヘッドの帝国兵幹部の命を受け、帝国兵は暴れようとする拘束された帝国兵を連行した。
 ようやく静けさを取り戻したところで、帝国軍幹部はヘルナンデス様に深々と頭を下げた。

「ニース将軍、この度はうちの馬鹿が本当に申し訳ない」
「サザン少将も、いきなりで大変だな。対応は、帝国軍に一任する」

 どうやら、ヘルナンデス様の知り合いの帝国軍幹部がこのスキンヘッドの人物みたいだ。
 ヘルナンデス様も、相手を気遣う余裕すらあった。
 すると、ヘルナンデス様はサザン様に僕達を紹介した。

「甥のルーカス、それと【蒼の治癒師】のケンと妻のクリスだ。凄腕のスライム達の友達でもある」
「おお、国境での戦闘で戦果を挙げたものですな。【蒼の治癒師】により、多くの兵の命が助かったと聞いている」

 サザン様は、少し表情を崩して僕達と握手した。
 この場の空気を変えたいのもあるのかもしれない。
 僕達も、そのまま普通に対応した。

「時間が押し迫っていますので、馬車に乗って麓の町に向かいます」
「そうしてくれ」

 サザン様の提案に、ヘルナンデス様が短く答えた。
 僕達も、出発準備はいつでも大丈夫だ。

「では、行ってくる」
「はっ、お気をつけて」

 ヘルナンデス様に、ピーター様が敬礼しながら返事をした。
 僕達も、出発の挨拶をして馬車に乗り込んだ。

「皆さまには、大変ご迷惑をかけた。あの若者は、名門貴族出身の軍人です。実家が皇太后に与みしていなかったので今回の出迎えに選ばれたのですが、個人的に繋がっていた模様です」
「難しい案件だ。家や本人の主義主張が違う事は多々ある。まさに、今回の件はそうだろう。人の心の中を知るのは、ケンやスラちゃんでない限り不可能だ」

 サザン様の謝罪に対し、ヘルナンデス様も神妙な表情で答えていた。
 スラちゃん達はスライム的な勘で相手の悪意に気がつくが、僕は魔法を使わないと分からない。
 そういう意味でも、今回はチビスライム達のファインプレーだ。

「サザン少将、申し訳ないが我々に悪意を持って近づくものは取り押さえさせてもらう」
「ニース将軍、そこはやって頂いて構わない。残念ながら、帝国にはまだ元皇太后派の残党がいる。可能な限り警備は厳重にするが、我々だけでは対処が難しい時もあるだろう」

 サザン様の許可もあるだろうけど、恐らくレーベンス様も僕達に悪意のあるものを捕まえる事を許可するだろう。
 僕達は、無事に王国に帰らないとならない。
 そのためには、強く出る時もあるはずだ。
 そして、馬車内でお喋りをすること一時間、目的地の麓にある帝国軍の基地に到着した。

「出迎えは最小限にしています。もし、悪意のあるものがいたら、取り押さえてもらって構いません」

 サザン様の言葉を聞き、基地にいる兵が少しざわめいた。
 とはいえ、僕達も無理に捕まえようとはしない。
 それに、今は魔導船に関係しているものが問題なければ大丈夫だ。
 念のために、魔導船に乗船する関係者も挨拶を兼ねて僕達の前に並んだ。
 すると、ここでスラちゃん達が動いた。

 シュイン、バシッ。

「あっ……」
「「「「「えっ!?」」」」」

 スラちゃんが、船内の料理人と思わしき乗船するものを拘束魔法で拘束したのだ。
 料理人はしまったという表情で、他の兵とは反応が明らかに違った。

「ケン君、直ぐに鑑定してくれ」
「は、はい!」

 シュイン、もわーん。

 僕は、急いで拘束されている料理人を鑑定した。
 すると、これまた驚きの事実が判明した。

「あっ、この人は軍人だけど犯罪組織の構成員でもあります!」
「「「「「はあ!?」」」」」

 僕の鑑定結果を聞いた帝国兵が驚愕の表情を見せたが、スラちゃん達の鑑定結果でも同様だ。
 当の拘束された料理人は、何も言い返せずに視線を逸らしていた。

「コイツを武装解除して牢屋にぶち込め!」
「「「「「はっ」」」」」

 サザン様の指示を受け、帝国兵が料理人を連行していった。
 直ぐ様、魔導船内の確認も行われる事になり、スラちゃん達も帝国兵の後をついて行った。

「スラちゃん達が行ったのなら、数分で確認は終わるだろう」
「こうして見ると、本当に凄いスライムだ……」

 驚きの表情のサザン様とは違い、ヘルナンデス様だけでなくルーカス様もドヤ顔だ。
 実際に船内の確認は五分で終わり、幸いにして何も不審な者は出てこなかった。
 だが、捕まった料理人の服から怪しいものが見つかったという。
 細かいことは帝国軍に任せ、僕達はそのまま魔導船に乗船して帝都へと向かったのだった。