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 謁見の後は、普通に執務室で仕事をしていた。
 夜会にはアイちゃん達も参加予定で、軍の仕事終わりにクリスが迎えに行く予定となっていた。

「各部署も、新年になって色々と新たな施策を打ち出していますね」
「その施策の邪魔をしていた者が、様々な理由でごっそりといなくなったのもある。今の貴族や職員は、優先度は自己の利益ではなく国民への施策だと理解している」

 アーサー様も、各部署のやる気を高く評価していた。
 貴族主義勢力ももはや自分勝手な行動はできないだろうし、更に隅に追いやられるはずだ。
 そこで自分達の考えを改める事が出来ればいいが、直ぐには難しいだろう。
 さて、今日の仕事もこれで終わりだ。
 僕は、うーんと背筋を伸ばした。

「ケンは、先に夜会会場に向かうといい。私も、後ほど向かう」

 同じく仕事を終えたアーサー様も、着替えをしてから夜会に向かうそうだ。
 僕は着替えをしないから、今日も一緒のギンちゃんと共に会場となる大部屋へと向かった。
 すると、一足に大部屋に来ていたこの人が僕を出迎えてくれた。

「ルートちゃん、こんばんは」
「ケンお兄ちゃん、こんばんは!」

 今日も元気いっぱいなルートちゃんが、ニコニコしながら挨拶をした。
 そして、いつも以上にニコニコなのにはこういう理由もあった。

「あのね、お祖父様が凄いって褒められたんだよ!」

 ノーム男爵家に陞爵したのもあり、ルートちゃんはエレンお祖父様か謁見で褒められたと聞いたのだろう。
 実際に、エレンお祖父様が陛下から評価されたのは間違いない。
 すると、ルートちゃんと一緒にいたフリージアお祖母様が、ルートちゃんにこういったのだ。

「ルート、ケン君も陛下に褒められたのよ」
「おー、すごーい!」

 ルートちゃんは、ちょっと興奮気味に僕にパチパチと拍手した。
 フリージアお祖母様も、ノーム男爵家の事とアスター伯爵家の事でニコニコとしていた。

「ケン君には前にも言ったけど、やはり男爵家になると正式な貴族になったのだと実感するわ。ゴライオンも真面目に仕事をしているし、ルートも幼いなりに勉強を頑張っているわ」

 準男爵家と男爵家の差はとても大きいと、フリージアお祖母様は改めて語った。
 夜会も、余程の事がない限り男爵家以上の参加が基本となる。
 ノーム男爵家の場合は、準男爵家の頃から僕の関係者として出ていたけど。
 もっとも、僕も未成年当主ってのもあった。
 エレンお祖父様はもうそろそろ仕事が終わるはずだから、ミュウさん達と共にやってくるはずだ。

「「「こんばんはー!」」」
「こんばんは!」

 先に、アイちゃん達がクリスと共に夜会会場に姿を見せた。
 仲の良い子ども同士、元気いっぱいに挨拶をした。
 更にアリアちゃん達も姿を見せ、みんなで仲良くお喋りしていた。

「おお、もう楽しそうな声が聞こえるのう」

 エレンお祖父様も会場に姿を見せ、楽しそうな子ども達に目を細めていた。
 すると、ルートちゃんがエレンお祖父様のところに走ってきたのだ。

「お祖父様、おめでとー!」
「うむ、ありがとう」

 エレンお祖父様は、ニコニコしながらお祝いをしたルートちゃんの頭を優しく撫でていた。
 アイちゃん達もお祝いの言葉を言い、みんなとてもにこやかだ。
 財務部局で仲良しなキングレオなども、エレンお祖父様を祝福した。
 そして、エレンお祖父様と顔見知りの貴族も多くお祝いにやってきた。

「ケンの場合、もう陞爵するって殆ど分かっていたもんね」

 僕よりも圧倒的にエレンお祖父様へ挨拶する人が多く、クリスも思わず苦笑していた。
 とはいえ、僕もこの後はエレンお祖父様と一緒にいる予定だ。

「グルル……」
「何で、私達を睨むのですの?」
「これでは、またお子様に近づけませんわ」

 多くの人の関心がエレンお祖父様に向いているのを、貴族主義勢力の貴族令嬢は好機と見ていた。
 そこはトラちゃんがしっかりとアリアちゃん達を護衛しているし、簡単に接触はできない。
 というか、そろそろ何で自分達がアリアちゃん達に接する事ができないのか分析をした方が良いと思いますよ。
 そう思っていたら、何と二人の貴族令嬢が実力行使に出たのだ。

 ダッ。

「「アリア様、ブライト様、私達とお話……」」
「「「「「いや!」」」」」
「「「「「ガルル!」」」」」

 トラちゃん達を前に何とか話そうとしたのだが、下心満載な笑みに気づいたアリアちゃん達によって言い終わる前に完全拒否された。
 更に、キングレオ達も集まって襲いかからんと言わんばかりに吠えていた。
 そして、トドメにこの人達の登場だ。

「あなた達は、以前より孫やひ孫達に接しようとするだけで何も奉仕活動で手伝っていませんね。子どもは、意外と周囲をよく見ています。あなた達の下心は、とっくに見透かされています」
「普通に手伝いをしていれば、子ども達からあなた達に近寄った可能性もありました。ですが、あなた達の行動は全てお見通しです。今後、奉仕活動に参加されなくて宜しいですわ」
「「ぐっ……」」

 怒り心頭の王太后様と王妃様からも事実上の拒絶され、貴族令嬢は脱兎の如く逃げ出した。
 エレンお祖父様に挨拶していた貴族も、逃げ出した貴族令嬢に厳しい視線を向けていた。
 これで次の奉仕活動に二人が参加したら、ある意味神経が図太いのかもしれない。

「せっかくの良い雰囲気が台無しだわ。次の奉仕活動では、他の怪しい動きをする貴族令嬢もチェックしないといけないわね……」
「「「「「うっ……」」」」」

 軍人でもあるシーリアさんは、遠巻きにアリアちゃん達を眺めていた貴族令嬢達に厳しい視線を送った。
 その瞬間、シーリアさんにギロリと睨まれた貴族令嬢達は一斉に視線を逸らした。
 あの人達も、奉仕活動に参加しても何も手伝いをしない。

「奉仕活動の本質を、間違えて捉えているのだろう。もっとも、余達の普通はあの貴族令嬢には異なっているのだろう」

 いつの間にか現れた陛下にも、貴族主義勢力の貴族令嬢はあり得ないと言われてしまった。
 あの貴族令嬢は、贅沢をする事や権力を得ることが当たり前だと教えられている。
 だが、元オオクズ子爵家の嫡男夫人の様に、貴族主義勢力であってもキチンとした考えを持つ人はいる。
 結局は、本人の資質の問題なのかなと思ってしまったのだった。