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 こうして学園の授業が始まり、僕とクリスは週一回講義を行った。
 幸いに学園生からも僕とクリスの講義はとても好評で、教師陣もよくやっていると褒めてくれた。
 そんな中、今日は普通に王城の執務室で働いていた。

「二人とも学園生と一つしか年が違わないが、経験値が圧倒的に違う。ケンの言う通り、ただ知識を詰め込めば良いという訳ではない。経験や考える事は、何よりも大切なことだ」

 僕とクリスの学園での様子を聞き、陛下も満足そうに答えていた。
 初回オリエンテーションで説明したことがとても好評らしく、陛下は官僚にも教えてやりたいとまで言ってくれた。
 本当にありがたい事だ。

「もっとも、軍の幹部に言わせるとこのくらいはやって当然だと言っていた。軍は実力も必要だが、常に絶え間ない変化に対応しなければならない。ケンとクリスは、軍での経験も間違いなく生きているだろう」

 ここで言う軍の幹部は、絶対にヘルナンデス様とルーカス様の気がしてならない。
 特に、ルーカス様はビーズリーさんを通じて僕達がどんな授業をしているのか逐一情報を聞く事ができるだろう。
 まだ授業が始まって一ヶ月なのだから、キチンとした評価はこれからだろう。
 さて、僕は普通に書類整理っと……

 カキカキ、ペラペラ。
 カキカキ、ペラペラ。 

 あれ?
 この書類は何だろうか。
 一見すると普通の書類に見えるけど、どうも気になるところがあるよ。

「あの、すみません。確か、この貴族領地って昨年も同じ天災に伴う工事申請が来ていたと思います」
「えっと、ちょっと待っていてね。あー、確かに昨年も一昨年も同じ工事申請が来ているわね……」

 職員に書類を確認してもらったけど、確かに同じ内容の申請が三年連続で提出されていた。
 過去の申請を見ても、殆ど中身が同じだ。
 たまたま前に申請例のサンプルとして見せてもらったので、何となく記憶に残っていたんだよね。
 アーサー様も僕達のところに来て、書類を手にして過去の申請と見比べていた。

「補助金の不正受給と断定するには時期尚早だが、現地状況の確認をする必要がある。確か、この領地の近くには軍の駐屯地があったはずだ。調査指示を出す」

 アーサー様が直ぐに方針を決め、陛下もアーサー様の方針にゴーサインを出した。
 軍に指示が行き、今日中に調査隊が現地に向かうという。
 ということで、この書類に関しては保留の箱に入れてっと。

 カキカキ、ペラペラ。
 カキカキ、ペラペラ。

 あっ、この書類はどうしよう……
 僕は、手にした書類を隣の人に渡した。

「すみません、この書類は僕じゃ処理できないので代わりにお願いします」
「どれどれ? ああ、申請者がケン君の学園の備品申請ですね。代わりにやっておきますよ」

 職員は、ニコリとしながら書類を受け取った。
 学園は執務室直属だから、今後もこういう申請書類がありそうだ。

「別に、ちゃんとした書類ならケンがそのまま処理して構わんぞ。というか、チョークに黒板消しくらいなら、普通の消耗品申請だろうが」

 陛下は、職員から書類を受け取りながら苦笑していた。
 いやいや、そこは別の職員がキチンと処理しないと駄目ですよ。
 不正防止は、キチンとやらないと駄目なんですから。

「ケン様は、本当にしっかりとしていらっしゃる。他の部署も、ケン様を見習って欲しいものです」

 たまたま執務室に来ていたのは、監査担当の職員だった。
 実は、定期監査である部署で実在する別人の名前を使った架空取引が発覚したのだ。
 臨時監査が大々的に行われ、スラちゃん達も手分けして監査を手伝っていた。
 その結果、更に多くの不正が明るみに出た。

「しかし、かなりの金額が使われているな」
「まさか、監査担当の職員まで丸め込まれていたとは。本当に申し訳ありません」

 監査担当にも、贈収賄攻勢でバレないようにしていたという。
 典型的な駄目なパターンだ。
 たまたまいつもの監査担当が病欠で、代わりの者が定期監査をして発覚したという。
 その監査担当は、シロちゃんが治療してそのまま軍へと連行された。
 しかも架空取引をしていたのはその部署のトップなので、誰も気が付かなかったという。
 その部署のトップは重犯罪者として拘束され、屋敷や関係先にはクリス達が家宅捜索を行った。
 リーフちゃんも一緒にいて、証拠品は残らず見つけたという。
 もはや、言い逃れは不可能なレベルだ。
 この話は、偉い人達にお任せだ。

「ケンは、申請書の担当だ。先に昼食にするといい」
「ほほう、また何かを見つけたと聞きましたぞ。流石ケン様ですな」

 あの、陛下だけでなく監査担当の職員まで何を言っているんですか。
 しかし、アーサー様や他の職員まで僕にニッコリとしているのだ。
 僕は、思わずがっくりとしてしまったのだった。

「「「「じー」」」」

 流石にみんなが働いている上に打ち合わせまで行われているので、僕は執務室から王家の食堂へ移動した。
 ちょうど王家のちびっ子とジョセフちゃんも食事の時間で、僕の周りに集まってお弁当の中身を凝視していた。

「えーっと、カレー味のからあげ食べる?」
「「「「たべるー!」」」」

 何を凝視していたのか直ぐに分かったので、別の皿に分けてあげた。
 現世でもこの世界でも、子どもってカレー味が大好きだ。
 しかも、お弁当箱は魔法袋に入っていたので出来立てほやほやだ。

「「「「おいしー!」」」」
「ほらほら、ケン君のお弁当を食べないのよ」

 シーリアさんが咎めるのも気にせずに、ちびっ子達は美味しそうにカレー味のからあげを食べていた。
 もう、こればかりはしょうがないでしょう。

「「あぐあぐあぐ」」
「ほらほら、みんなもよく噛んで食べるのよ」
「「あぐあぐあぐ」」

 赤ちゃんメンバーは、美味しそうに離乳食を食べていた。
 食べるのが好きなので、メアリーさん曰く育児はとても楽だという。
 イリスちゃん達は時々僕のお弁当をジーっと見ているが、まだ固い物は食べられませんよ。

「しかし、ケン君も大変ね。またどこかに行くなんて」
「あの、シーリアさん、未だどこかに行くとは決まった訳では……」
「ケン君が見つけた申請書よ、絶対に何かあるわ」

 シーリアさん、そんな不吉な事を言わないで下さい。
 ちびっ子達、すごーいって言っているけど凄いことじゃないからね。
 僕は、思わずがくりとしながら食べ終えた弁当箱を魔法袋にしまって執務室へと戻ったのだった。
 すると、陛下からとんでもない情報がもたらされた。

「おお、ケン戻ったか。ちょうど通信用魔導具に連絡を入れようとしたところだ。軍の調査の結果、対象地域で豪雨による河川氾濫と土砂崩れの跡が確認された。主要街道沿いのため、国費で復旧工事を行う事となった」

 予想以上に大惨事な話を聞き、僕はかなりビックリしてしまった。
 僕も席について、もう少し詳しい話を聞く事にした。