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 午後からは謁見となり、僕も貴族当主として謁見に参加した。
 謁見の間に移動すると、既に多くの貴族や関係者が集まっていた。

「あのケン君も、いよいよ成人になるのか。今年の結婚式は、本当に楽しみだ」
「まさにそうですな。娘も成人になるなんてと思うと、月日が経つのは早いと実感しますな」

 エレンお祖父様とビーズリーさんは、ニコニコしながら僕の肩を叩いていた。
 他にも、多くの貴族が僕の成人を祝ってくれた。
 やはり僕のことを小さい頃から知っている貴族が多く、昔はあんなに小さかったのにと話をしていた。

「「「「「うぐぐ……」」」」」

 そんな僕の事を、遠巻きで恨めしそうに見ているだけで声をかけない貴族がいた。
 勿論貴族主義の貴族で、僕から積極的に声をかける事はなかった。
 というか、声をかけるだけでもリスクしか感じない。
 因みに、結婚式の招待状は既に発送済みで、僕を睨んでいる貴族には招待状を送らなかった。
 これは、王太后様や王妃様からの指示だ。
 その代わり、軍の食堂のおばちゃんやお世話になっているシスターさんには招待状を送った。
 僕としても、知り合いに結婚式を祝って欲しいと思っていたのだった。

「静粛に、まもなく陛下が入場されます」

 係の人の合図に、僕達は一斉に臣下の礼を取った。
 程なくして陛下をはじめとする王族が入場し、今年は双子ちゃんだけでなくビアンカちゃんも王妃様に手を引かれながら入場してきた。

「皆の者、面を上げよ」

 陛下の声で、僕達は顔を上げた。
 陛下は、集まった貴族を見回してから話し始めた。

「皆と共に、新年を迎えられる事を嬉しく思う。昨年は王都での奉仕活動中に破壊行為があったが、王国は決してテロに屈する事はない。今年も、強靭な国家作りに邁進する」
「「「「「はっ」」」」」

 過激派からのテロ行為は、やはり大きな影響を与えた。
 だが、結果的に全て防ぐ事ができた。
 勿論、これからも対応を進めると周知した。
 その後も、陛下は予定されていた内容を淡々と説明していた。
 すると、ここで予想外の事が起きたのだ。

「それでは、褒賞関連に移るとする。アスター男爵は前へ」
「はっ、はい!」

 まさか僕が呼ばれるとは思わなかったので、ちょっとびっくりしながら絨毯の切れ目に移動して膝を床につけた。

「アスター男爵は、幼い頃国境で帝国の侵攻を食い止めたが、その後も複数に渡って帝国からの侵攻を食い止めた。更に、数多くの犯罪組織壊滅に貢献し、特に昨年は過激派の拠点制圧に多大な貢献をした。その功績を讃え、法衣男爵から法衣子爵へと陞爵する。また、婚約者のクリスへも、別途勲章を授けるものとする」
「あ、ありがとうございます」

 突然の陞爵に、僕はかなり戸惑った。
 そういえば、昨年も子爵がとかを陛下がどこかで言っていた様な気がした。
 ところが、多くの貴族が拍手を送る中、先ほど僕を遠巻きから睨みつけていた貴族が大きい体を揺らしながら前に出てきた。

「畏れながら、陛下に申し上げます。確かに、アスター男爵はとても大きな功績を残した。この事に私は異存はありません。しかしながら、アスター男爵の血の繋がった兄は叛逆兵として国から処分されたばかりです。些か陞爵するには時期尚早かと」

 ある意味、この質問は予想されていた。
 実家の処分に関しては、各貴族に周知されている。
 だからこそ、僕の事にケチをつける貴族がいると思われた。
 すると、陛下はこんな事を話した。

「確かに、アスター男爵の血の繋がった兄は本当に碌でもない事をした。国境で帝国からの魔法攻撃を撃退中の弟に向かって、愚かにもナイフを投げつけるという事をな。そして、指示を受けたアスター男爵の婚約者が兄を制圧したのだ」
「えっ?」

 僕に物申した貴族主義の者は、まさか兄が叛逆を働いた相手が僕だと知らなかったみたいだ。
 この事実に、多くの貴族からも戸惑いの声が上がった。

「そして、ギャイン騎士爵家はお家取り潰しとなり、アスター男爵の兄は獄死した。本来なら大きな功績を挙げたアスター男爵を直ぐに陞爵させたがったが、余も実家の事を考慮し待つことにしたのだ」
「うぐっ……し、失礼いたしました」

 王家も僕の実家の件で配慮していたと知り、僕に物申した貴族もこれ以上意見を言うことはできず元の位置に下がった。
 そして、陛下は改めて僕に話し始めた。

「では、改めてアスター男爵を子爵へと陞爵する」
「ありがとうございます」

 こうして多くの貴族が拍手を送る中、僕は男爵から子爵へと陞爵したのだった。

 カキカキカキ、カキカキカキ。

「「「できたー!」」」
「ウォン!」

 謁見も無事に終わり、僕は何故か衣裳部屋へと案内された。
 ニコニコ顔の王太后様、王妃様、メアリー様と、ユキちゃんの似顔絵を一生懸命描いている双子ちゃんとビアンカちゃんも一緒だった。
 なお、イリスちゃんはスヤスヤとお昼寝中だ。
 うん、なんで僕は衣装部屋で王家の女性陣に囲まれているのでしょうか。

「ふふ、勿論ケン君に陞爵祝いで新しい貴族服を作ってあげようと思ったのよ。ケン君はこの後もとても忙しく動くし、今のうちにって思ってね」
「この後、結婚式で着る服の採寸をするみたいね。ケン君のところの御用商人は王家と同じだし、二回計らなくても大丈夫な様にと思ったのよ」

 王太后様と王妃様から、もっともらしい事を言われてしまった。
 僕が成人になったとはいえ、特に王太后様は僕に何かをしてあげたいみたいだ。
 うん、これは断れる雰囲気ではないね。

 ガチャ。

「失礼します……」
「ふふふ、私もとっても楽しみだわ」

 すると、衣装部屋に軍の施設にいるはずのクリスとニコニコ顔のシーリアさんが入ってきた。
 この様子だと、クリスは何も知らなくてシーリアさんは全て知っているみたいだ。
 こうして、僕とクリスはそれぞれ体の採寸を計りつつ着せ替え人形となってしまった。
 午後の仕事もヘロヘロな状態で何とか頑張り、夕方からの夜会も根性で乗り切った。
 とはいえ、子爵陞爵のお祝いをする人も多く、僕とクリスは屋敷に戻るとぐったりとしてしまったのだった。