校門前に停めてあった黒くて高級そうな、大きい車に僕たちは乗った。普段プリレボが登下校する時に乗っている車。
運転席にはプリレボマネージャーであるイケメンなお兄さん、河合さんがいる。その隣の助手席にはそたくん。真ん中の席には僕とみずっきくん。そして後ろの席にはれんくんとしーおんくんが座った。最前列ではふたりが何か仕事の話をしているようだけど、他のメンバーは外を眺めたりスマホを見たりしていて無言だった。
この静かな密室空間は、絶好な質問チャンスのタイムかな。
「朝、みんな一緒に登校しているけれど、家は近いの?」
僕はぽんやり外を眺めていたみずっきくんに、えいっと話しかけてみた。僕が通っている中学は試験に受かった人たちが通える学校で、遠い人は1時間ぐらいかな?詳しく分からないけれど、あちこちから通ってきている。
「僕たちは、一緒に住んでいるよ」
「……えっ、一緒に住んでるの?」
まさか一緒に住んでいると思わなかったから驚いて、声が裏返ってしまった。
「そうだよ、昨年から一緒に住んでいるんだ」
「わっ、プリレボのメンバーが四人一緒に暮らしているの?」
「うん!」
みずっきくんは僕の大げさな反応が面白かったのか、ふふっと笑った。
頭の中にほわんと、四人一緒にご飯を食べている風景が浮かび上がる。とても豪華で贅沢な風景。
みずっきくんと話をしていると、とても自然がいっぱいある大きな公園に着いた。車から降りるとみんなで全体を眺める。
「ここは、湖や花畑もある。さて、どこで撮ろうか……」
四人が話し合っているのをチラ見しながら僕は学校から借りていたカメラを出す。
「今日はこれでお互いを撮り合おう」と言いながらそたくんはスマホを人数分鞄からだした。
「れんはレッド、しーおんはパープル、みずっきはブルー。自分は、イエロー」
そたくんはそれぞれのカラーの、キラキラがたくさんついてる王子のような撮影用のスマホを配っていた。プリレボが撮り合いっこするのか……まだ撮影していないのに、キラキラした素敵な映像が頭の中に浮かび上がる。僕はその風景を完璧に撮り、永久保存版にもするんだ!と気合いを入れながら持ってきた三脚の上にカメラを乗せた。
「そして、いつきんはグリーンね!」
「えっ、僕の分もある……」
自分はカメラでみんなが撮りあいっこしているのを映すだけだと思っていたのに。
「せっかくだからいつきんも一緒に映る方に参加しようよ」
「えっ、でも……」
僕はスマホを受け取ると、チラリと持ってきたカメラに視線を向けた。カメラを見つめているとそたくんが僕のメガネに触れた。
「メガネ外しても、大丈夫?」
「あっ、はい。ぼやけるけれど見えます」
いきなりメガネを外されて僕は驚く。
「髪の毛と、ちょっとメイクもしていいかな?」
そたくんのお願いに断れるはずもなく、僕は流されるように頷いた。
「しーおん、軽くいつきんのヘアメイクお願いしてもいい?」
「いいよ~」
しーおんくんが僕の髪の毛にふわっと触れた。いつも適当に仕上げている僕の髪の毛を丁寧に整えてくれた。そして目元に線を引いたりして、軽くメイクまでしてくれた。
しーおんくんは人の髪の毛を整えたり、お化粧をしたりするのが得意で好き。やってくれている間もふわりとした雰囲気で、彼が何を考えているのか完全には分からなかったけれど、楽しそうだなってのは、なんとなく伝わってきていた。
「いつきんは、撮るのと映るのを両方やればいいと思う。ここの公園は貸切だから、人も景色も、好きなようにいつきんが持ってきたカメラで動画を撮っても大丈夫だよ!」
そたくんの言葉に僕が反応する前に、しーおんくんが僕を撮りだした。みんなもそれぞれのタイミングで撮り始める。やっぱりプリレボの全体図もおさめたいな。僕はまず、全体が映るように三脚で固定したカメラの録画ボタンを押した。
夢のような風景だ。他のメンバーはお互いを撮りあっている。僕はカメラから離れてスマホの方の録画ボタンを押した。
最初は画面の中に映るメンバーと目が合うだけですごく緊張して、青い空やキラキラ輝く湖などの風景だけを撮っていたけれど。演技とは思えないぐらいに楽しそうに撮っている四人を見ていたら、僕も自然と気持ちが盛り上がり、憧れの四人を気がつけば夢中で撮っていた。 時間はあっという間に過ぎていき、辺りは薄暗くなっていた。撮影も一段落。そたくんは全員分のスマホを回収して「編集よろしくね」と、マネージャーに渡した。
――そっか、僕じゃないんだ。
そうだよね……これは放送部として撮ったものだと思っていたから僕が編集するのかな?って思っていた。だけど、プリレボのメンバーが映っているし、それが学校のみんなに公開されるのだから失敗はできない。それに、僕はたくさんのデータを取り込んで編集することはしたことがない。僕なんかが触るデータではない。そんなこと、考えれば当たり前のことなのに、考えていると少し落ち込んできた。
「みんなお疲れ様!」
そたくんがそう言ったあと、続けて僕を見て首をかしげた。
「いつきん、どうしたの?」
「いや、別に。何もない、です……」
そたくんは全体をしっかり見ていて、誰かの些細な変化も見逃さない。僕は笑顔を無理して作った。
車に乗り、最初に僕の家へ向かった。
やっぱり今日撮った動画を編集してみたい。
挑戦してみたい。
そして使わなかったシーンも永久保存版にしたい。ずっと車の中でもやもやとそんなことを考えていた。
そして何も言えないまま僕の家に着いた。車のドアが開き、僕は車から降りる。
今ならまだ間に合うかな……。
勇気を出してお願いしてみようかな。
「あの……」
全員の視線が僕に集まる。全員の視線をいっきに浴びると、なんていうか、縮こまって押しつぶされるような感じになる。まして場違いな発言をしようとしているし。
「いつきくん、深刻な顔して大丈夫?」と、みずっきくんにそう聞かれるほどに顔がひきつっていた。手も震えた。でも、伝えないと後悔しそうだから、伝えたい。
「あの……今日撮った動画……編集したい、です!」
運転席にはプリレボマネージャーであるイケメンなお兄さん、河合さんがいる。その隣の助手席にはそたくん。真ん中の席には僕とみずっきくん。そして後ろの席にはれんくんとしーおんくんが座った。最前列ではふたりが何か仕事の話をしているようだけど、他のメンバーは外を眺めたりスマホを見たりしていて無言だった。
この静かな密室空間は、絶好な質問チャンスのタイムかな。
「朝、みんな一緒に登校しているけれど、家は近いの?」
僕はぽんやり外を眺めていたみずっきくんに、えいっと話しかけてみた。僕が通っている中学は試験に受かった人たちが通える学校で、遠い人は1時間ぐらいかな?詳しく分からないけれど、あちこちから通ってきている。
「僕たちは、一緒に住んでいるよ」
「……えっ、一緒に住んでるの?」
まさか一緒に住んでいると思わなかったから驚いて、声が裏返ってしまった。
「そうだよ、昨年から一緒に住んでいるんだ」
「わっ、プリレボのメンバーが四人一緒に暮らしているの?」
「うん!」
みずっきくんは僕の大げさな反応が面白かったのか、ふふっと笑った。
頭の中にほわんと、四人一緒にご飯を食べている風景が浮かび上がる。とても豪華で贅沢な風景。
みずっきくんと話をしていると、とても自然がいっぱいある大きな公園に着いた。車から降りるとみんなで全体を眺める。
「ここは、湖や花畑もある。さて、どこで撮ろうか……」
四人が話し合っているのをチラ見しながら僕は学校から借りていたカメラを出す。
「今日はこれでお互いを撮り合おう」と言いながらそたくんはスマホを人数分鞄からだした。
「れんはレッド、しーおんはパープル、みずっきはブルー。自分は、イエロー」
そたくんはそれぞれのカラーの、キラキラがたくさんついてる王子のような撮影用のスマホを配っていた。プリレボが撮り合いっこするのか……まだ撮影していないのに、キラキラした素敵な映像が頭の中に浮かび上がる。僕はその風景を完璧に撮り、永久保存版にもするんだ!と気合いを入れながら持ってきた三脚の上にカメラを乗せた。
「そして、いつきんはグリーンね!」
「えっ、僕の分もある……」
自分はカメラでみんなが撮りあいっこしているのを映すだけだと思っていたのに。
「せっかくだからいつきんも一緒に映る方に参加しようよ」
「えっ、でも……」
僕はスマホを受け取ると、チラリと持ってきたカメラに視線を向けた。カメラを見つめているとそたくんが僕のメガネに触れた。
「メガネ外しても、大丈夫?」
「あっ、はい。ぼやけるけれど見えます」
いきなりメガネを外されて僕は驚く。
「髪の毛と、ちょっとメイクもしていいかな?」
そたくんのお願いに断れるはずもなく、僕は流されるように頷いた。
「しーおん、軽くいつきんのヘアメイクお願いしてもいい?」
「いいよ~」
しーおんくんが僕の髪の毛にふわっと触れた。いつも適当に仕上げている僕の髪の毛を丁寧に整えてくれた。そして目元に線を引いたりして、軽くメイクまでしてくれた。
しーおんくんは人の髪の毛を整えたり、お化粧をしたりするのが得意で好き。やってくれている間もふわりとした雰囲気で、彼が何を考えているのか完全には分からなかったけれど、楽しそうだなってのは、なんとなく伝わってきていた。
「いつきんは、撮るのと映るのを両方やればいいと思う。ここの公園は貸切だから、人も景色も、好きなようにいつきんが持ってきたカメラで動画を撮っても大丈夫だよ!」
そたくんの言葉に僕が反応する前に、しーおんくんが僕を撮りだした。みんなもそれぞれのタイミングで撮り始める。やっぱりプリレボの全体図もおさめたいな。僕はまず、全体が映るように三脚で固定したカメラの録画ボタンを押した。
夢のような風景だ。他のメンバーはお互いを撮りあっている。僕はカメラから離れてスマホの方の録画ボタンを押した。
最初は画面の中に映るメンバーと目が合うだけですごく緊張して、青い空やキラキラ輝く湖などの風景だけを撮っていたけれど。演技とは思えないぐらいに楽しそうに撮っている四人を見ていたら、僕も自然と気持ちが盛り上がり、憧れの四人を気がつけば夢中で撮っていた。 時間はあっという間に過ぎていき、辺りは薄暗くなっていた。撮影も一段落。そたくんは全員分のスマホを回収して「編集よろしくね」と、マネージャーに渡した。
――そっか、僕じゃないんだ。
そうだよね……これは放送部として撮ったものだと思っていたから僕が編集するのかな?って思っていた。だけど、プリレボのメンバーが映っているし、それが学校のみんなに公開されるのだから失敗はできない。それに、僕はたくさんのデータを取り込んで編集することはしたことがない。僕なんかが触るデータではない。そんなこと、考えれば当たり前のことなのに、考えていると少し落ち込んできた。
「みんなお疲れ様!」
そたくんがそう言ったあと、続けて僕を見て首をかしげた。
「いつきん、どうしたの?」
「いや、別に。何もない、です……」
そたくんは全体をしっかり見ていて、誰かの些細な変化も見逃さない。僕は笑顔を無理して作った。
車に乗り、最初に僕の家へ向かった。
やっぱり今日撮った動画を編集してみたい。
挑戦してみたい。
そして使わなかったシーンも永久保存版にしたい。ずっと車の中でもやもやとそんなことを考えていた。
そして何も言えないまま僕の家に着いた。車のドアが開き、僕は車から降りる。
今ならまだ間に合うかな……。
勇気を出してお願いしてみようかな。
「あの……」
全員の視線が僕に集まる。全員の視線をいっきに浴びると、なんていうか、縮こまって押しつぶされるような感じになる。まして場違いな発言をしようとしているし。
「いつきくん、深刻な顔して大丈夫?」と、みずっきくんにそう聞かれるほどに顔がひきつっていた。手も震えた。でも、伝えないと後悔しそうだから、伝えたい。
「あの……今日撮った動画……編集したい、です!」



