前世王子アイドルグループ~僕たちは君の一番星になりたい☆。.:*・゜

 僕たちは歌い終わると舞台からはけた。和服を脱ぎ、アンコール用の衣装に急いで着替える。今から着る衣装は、プリレボがデビューした時に着ていた、金色王子の衣装だ。

 僕が画面越しのそたくんと目が合い、ドキリと強く胸の鼓動が鳴った小学四年生の時の記憶。あの時は、今日のようになるなんて予想を全くしていなかったな。

 今のこの状況は、奇跡――。

「アンコール!」
「アンコール!」
「アンコール!」

 会場全体は今、ひとつになっていた。

 和装に合わせていたロングの部分ウィッグをスタッフさんに外してもらっている間に、また別のスタッフさんに和服を脱ぐのを手伝ってもらう。そして新たに着た衣装のボタンを自分でとめようとした。

「あっ、どうしよう。震えてボタンがとめられない」
「落ち着いて、いつきん」

 僕が慌てていると、同じく慌てて着替えていたみずっきくんがなだめてくれた。

 焦っていると僕の前に、すでに着替え終わっていたれんくんが立った。れんくんは、僕が上手くとめられないでいた胸元のボタンを無言で優しくとめてくれた。

「ありがとう、れんくん!」

 ギリギリ準備は間に合い、僕たちは走ってステージの上へ。

「みんな、アンコール、ありがとう~!!!!」

「わぁー」っと、再び会場は盛り上がる。

 とうとう、このアンコールの時間が終われば、本当にこのライブの終わりが来てしまう。

 僕は、この素晴らしすぎる景色をずっと覚えていたくて、じっと客席を見つめて目に焼き付けた。

「今から歌う曲は青春がいっぱい詰まった曲、『星になると誓った、僕のアオハル時代』です! れんが作詞作曲した曲だよ。歌の方は最新アルバム『Prince Star』にも入っていたのだけど、映像はまだ公式からは公開されていなくて。でも、配信リクエストをたくさん、もう本当にたくさんいただいたため、なんと、こちらも本日、このライブが終わった瞬間から、正式にミュージックビデオとなり、ネット配信も始まります!」

 そたくんが報告すると、「わぁ!!」っと観客席は盛り上がった。

「映像を学校で制作して、学校だけで放送していたのだけど、こちらも拡散してくれて……この曲もありがたいことに広まり方がすごかったよね! ありがとうございます! ところで、れんはさ、どんな気持ちでこの歌を作ったの?」

 そたくんが歌の紹介をしつつ、れんくんに話を振った。

「この歌は、小学生の時、いつものようにメンバーたちとレッスンしていた日の休憩時間に、青い空と太陽を窓から眺めていたらふと思いついた歌で。ずっと、どんなに売れて忙しくなっても今の初心の気持ちは忘れたくないなって、当時の気持ちを残しておきたくて……」

「すごい、れんくん! れんくんは当時そんなこと思ってたの? 僕はその時、まだダンスや歌の練習が苦手すぎる時で、早く練習時間が終わらないかな?って思ってたよ! いや、今はもちろん上手になりたい気持ちが溢れているけどね」
「みずっきん、れんが普段言わない気持ちを話しているから静かに!」
「は~い……!」

 そたくんが「しーっ」と、口元に人差し指を立てると、れんくんは続きを話し始めた。

「映像は部活動で撮影して、葉月たちが編集したんだけど。撮影現場でこの歌がすごく似合うって直感で思った。完成したのを初めて観た時は、予想以上によく仕上がってて、宝物だと思える映像がまたひとつ増えて、嬉しかった」

 れんくんがそんなことを思っていてくれたなんて! 頑張って編集して良かったよ~!

僕が編集した映像がMVになると聞いた時は、とても驚いた。僕は編集のプロではないし、上手ではないのに、僕の編集した映像で大丈夫なの?と。だけどそたくんは「プライベートな感じが出ていて、ファンは喜ぶと思う。それに、出来上がった作品は、作った人、つまり、いつきんがプリレボのメンバーひとりひとりの良いところを知り尽くしていて、愛を感じる映像だったから、自信を持って!」とも言ってくれた。

「あと、最後に。俺はみんなの会話に参加するのが得意ではなくて、今もアンコール前の会話に入れなかったけど、俺もずっとプリレボにいたくて存在していてほしくて……解散しないでほしいなって、思ってます」

「れんはいつもあんまり気持ちを話さないから、れんがプリレボに対してそんなことを思ってくれているなんて……今日のライブは、熱いね」

 そたくんは涙を流さないようにか、目頭を静かに押さえた。僕も泣くのを我慢した。

「この歌の映像は、いつきんの撮影デビューの時の映像だよね。いつきん、あの時の撮影どうだった?」

 みずっきくんが僕に聞いてきた。

「すごく緊張したし、僕なんかが映ってもいいのかな?ってしばらく思っていました……だけど、今こうして大好きなプリレボのメンバーと一緒にステージに立つことができているきっかけのひとつなので、映ってよかったなって。プリレボのメンバーになって、今、ステージの上で幸せな景色を知って……参加して本当によかったなって、心からそう思います」

 僕は目を潤ませながら、みんなに笑顔を見せた。他のメンバーが全員微笑んでくれた。

 会話が落ち着くとそれぞれの立ち位置へ。

「それでは次の曲は『星になると誓った、僕のアオハル時代』」

 会場全体が青春をイメージした、水色の光に包まれた。お客さんのペンライトの色はホワイト。舞台上では、キラキラと金のラメが上から舞い降りてくる光の演出。会場全体が、晴れた日の空みたいな風景。

 舞台真ん中にある一番大きなスクリーンには、あの日の、初めて僕が撮影に参加した時の映像が流れ始めた。

ステージの中心に、ピアノを弾くしーおんくんと、この歌のメイン担当であるスタンドマイクに手をかけたれんくんが。移動するステージには、ピンマイクをつけたそたくん、みずっきくん、そして僕。三人は僕のお披露目も兼ねて会場をぐるぐるする。そして、青春をイメージしたふわり系のダンスを踊りながら歌った。

 °・*:.。.☆

~♪

僕たちは並んで前に進んでいく
陽さえも僕たちについてきてくれる

僕たちアオハルを生きる
無敵な煌めく星たちさ~



……
……

これからも立ち止まらずに進むんだ
青い空を仰~ぎな~がらっ♪



「いよいよ、本当にこのライブの終わりの時間がやって来ました」
「もう終わりかぁ。もっとステージの上で、みんなの星でいたいよぉ」
「うん、分かる。僕も同じ気持ち」
「延長しちゃおうよ!」
「いや、電車やバスで帰る方々、これから予定ある方々の予定がくずれちゃうかもしれないし、延長はしないよ! 僕もずっとここでみんなと一緒にいたいけどね」
「そうだよね。みんなには、安全に、幸せな気持ちのままお家に帰ってほしいしね。また絶対ライブやろうね! みんな、また会おうね!! 約束だよ!!!」

 そたくんとみずっきくんの会話を聞いていると、僕も、もっと長い時間ステージの上にいたい気持ちに。

 だけど、時間は止まってくれない。

 早く時間が過ぎてほしいことはたくさんあった気がするけれど、こんなに過ぎてほしくないと感じることは初めて――。

 ライブ終わるの嫌だよぅ……だけど時間はやって来てしまった。

「それではラストの曲を紹介します。ラストは、僕たちのデビュー曲『まぶしすぎる星、キラキラ王子の好きはキミだけ』です」

 れんくんが歌の紹介をした。
 次が本当に今回のライブ最後の曲かぁ……。

「あの時よりも、僕たちは成長したよね~! 歌やダンスのレベルも上がったし、プリレボを輝く星だと思ってくれて応援してくれる大好きな人たちも増えたし。あと、衣装を作り直してくれるくらいに僕たちの身長が伸びたしね!」

「そうそう、そんな成長と共に、今回はいつきんも加わった新バージョンを初公開でお披露目するので、成長した僕たちを新鮮な気持ちで観ていただけたらいいなぁと、思います!」

 しーおんくんとそたくんの話が終わると、明かりが消えた。全員分のスタンドマイクがステージの上に五本並べられた。
 左から、れんくん、僕、そたくん、みずっきくん、しーおんくんの順で。

 そして僕たちは、片膝をつけた状態でしゃがむ。僕たち五人のカラーがレーザーとなってステージの上を忙しそうに走るように、あっちこっち移動した。

 それぞれのカラーの光でメンバーたちが一瞬照らされる。前奏が始まると僕たちは飛び跳ねながら立ち上がった。同時にメンバーのカラーは消え、明るいイエローの光とキラキラ、星をイメージした演出にステージ全体が包まれた。


~♪

いつもは隠しているけれどね
好き、好き、本当は好き!

「僕の『好き』は、姫だけのものだよ」

キラッキラッ
キラキラキラキラ~✮*。゚

……

~♪


ラストの歌が終わると、客席には僕たちが心を込めてメッセージを書いた銀色の長いテープが、数え切れないほど、たくさん舞い降りてきた。

 そしてステージの真ん中のスクリーンには

『生まれ変わっても、ずっと君たちの星でありたい』

という言葉が。